高血圧におけるHDLコレステロールとグリコカリックス

以前の記事「糖尿病とグリコカリックス」でも書いたように、グリコカリックスは血管のバリア機能としての働きがあり、高血糖にさらされるとそのバリアが薄くなり、バリア機能が低下してしまい、血管の問題が起きてくるのではと考えられます。

今回の新型コロナウイルスによって糖尿病や高血圧、心血管疾患など血管が関与する基礎疾患を持つ人の重症化リスクが高くなるのも、このグリコカリックスによる血管の保護が減少したことも大きな関連があると考えられます。

今回の研究では、この高血圧の人の血管のグリコカリックスの完全性とHDLコレステロール値の関連を調べています。50歳以上の高血圧治療を受けている120人を対象としました。HDLコレステロールを三分位に分けました。最も高いグループ(HDLコレステロール71~101mg/dL)、真ん中(47~70mg/dL以上)、最も下のグループ(23~46mg/dL)です。グリコカリックスは直径5〜9μmの舌下動脈微小血管の内腔壁の灌流境界領域(PBR 5-9)の測定を通じて評価します。PBRはグリコカリックスが減少すると内腔が広がるため、増加します。つまりPBRは多い方が健康な血管です。(図は原文より)

PBR 5-9は、最も低いHDLグループ1.23±0.1μm、中程度のHDLグループ1.22±0.1μm、最も高いHDLグループ1.17±0.1μmでした。つまり、高血圧の人ではHDLコレステロールが最も高いグループで最もグリコカリックスが多いことがわかります。

 

上の図はPBR 5-9とHDLの逆相関関係です。中程度の関連を示しています。また、非糖尿病の高血圧の人でもPBR 5-9とHDLの逆相関関係を示しているそうです。スタチン治療をされていない高血圧の人、制御された高血圧の人でも中程度の逆相関関係が認められました。

HDLコレステロールの上昇は心血管疾患のリスクに好ましい因子と考えられています。もちろん高すぎるHDLは有害であるかもしれないという研究も出ています。私の考えでは、糖質制限をしない状態でのHDLコレステロール値が非常に高値を示すことは非常に少なく、アルコールなどの影響が高いのではないかと思います。その影響で有害な影響が出ると考えています。

アルコールを飲まない状態で、糖質過剰摂取でHDLコレステロール値を71以上にすることは非常に難しいでしょう。逆に言えば簡単にHDLコレステロール値を71以上にする食事は糖質制限以外ないのではないでしょうか?「糖質過剰症候群」や以前記事「驚きの結果!糖質制限におけるHDLコレステロールと中性脂肪 みなさんの血液データから その2」に示したように、通常の日本人のHDLコレステロール値のピークは50台です。しかし、糖質制限の場合はピークが100以上です。一般的な基準値の40未満の人はゼロです。全員が60以上です。一般の日本人でHDLコレステロール値が100を超えるのはたった1.7%です。しかし、糖質制限では実に40%です。HDLコレステロール値が80を超えるのは一般の人では11.8%、糖質制限では80%なのです。

グリコカリックスを守るためには高血糖を避けることが重要だと思います。高血糖を避けると自然とHDLコレステロール値も上昇し、血管の健康も保てると思います。

新型コロナウイルスから自分を守るためにも、糖質制限ですね。

糖質過剰症候群

「HDL cholesterol levels and endothelial glycocalyx integrity in treated hypertensive patients」

「治療された高血圧患者におけるHDLコレステロール値と内皮グリコカリックスの完全性」(原文はここ

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