糖質制限の効果は様々なものがありますが、睡眠に対する効果もよく言われていますね。寝つきが良くなった、睡眠の質が良くなったなど。逆に不眠は、糖質過剰摂取による脳の炎症が要因になっていると思っています。よく不眠症だとメタボリックシンドロームになりやすいとか、様々な疾患のリスクが上がると言われていますが、それはそもそも同じ原因、つまり糖質過剰摂取で起きているのではないかと思います。不眠も糖質過剰症候群の一つの症状にすぎないのではないかと考えます。
さらに不眠や中途覚醒などにより、朝のコルチゾールレベルが上昇し、交感神経系の活動が増加する方向に向かって交感神経と副交感神経のバランスが変化し、悪循環となると考えられます。(ここ参照)
因果関係を証明することは非常に難しいですが、恐らくは脳の炎症やインスリン抵抗性の増加が不眠の最も大きな原因でしょう。
糖質過剰摂取で起きる糖尿病では、視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸の活動亢進を示し、高コルチゾール血症となる可能性が高くなるでしょう。(ここ参照)高コルチゾール血症、コルチゾールの概日リズムの変化は不眠症をもたらすと考えられています。(ここ参照)超低カロリーケトン食は唾液中のコルチゾールを低下させます。(ここ参照)
オレキシンは睡眠と食欲に大きく関連しています。オレキシンが活性化すると覚醒します。またオレキシンには抗炎症作用もあります。(ここ参照)超低カロリーケトン食を摂取するとオレキシンは増加します。ただ、糖質制限ではオンとオフがちゃんと整うのではないかと思います。糖質過剰摂取では脳のインスリン抵抗性などにより、脳のブドウ糖代謝が大きく低下してしまっていて、脳のエネルギー不足はオレキシンの増加を招きます。そうすると覚醒状態になってしまうのです。それにより睡眠障害をもたらすのではないかと思います。つまり、本来のオレキシンの日内変動が狂ってしまっていると考えられます。(「糖質制限と睡眠」参照)
ある研究では睡眠の質はインスリン抵抗性と関連していました。(ここ参照、図はこの論文より)
Aは入眠までに30分以上かかったか30分以下か、Bはよく眠れない(浅い眠り)が頻繁かどうか、Cは日中の眠気が頻繁かどうかです。入眠に30分以上かかる、頻繁に眠れない、頻繁に日中に眠気のある人はより高いインスリン抵抗性(HOMA2-IR)を示していました。
他の研究では、インスリン抵抗性の指標としてTyGインデックスを使用して、睡眠との関連を調べています。(ここ参照、図はこの論文より)(TyGインデックスについては「中性脂肪値と血糖値だけで様々な疾患のリスクを評価できる」など参照)
上の図のTyGインデックスのカットオフ値は大きい方を用いてください。小さい方の値は無視します。Aの図は間違っていますが、TyGインデックスが8.08以下の人が白いバー、TyGインデックスが8.08を超える人が紺のバーです。睡眠の質がgoodかpoorかで分けています。睡眠の質が良い人の方がTyGインデックスが8.08以下の人が多く、58%です。一方睡眠の質が悪い人では、TyGインデックスが8.08を超える人が70%にもなります。
また、Bに示すように、睡眠の質が良い人に比べてインスリン抵抗性が高い(TyGインデックスが8.08を超える)有病率が1.44倍も高くなりました。
メタボとの関連も見てみましょう。
あるメタアナリシスでは、不眠症患者のメタボリックシンドロームにおける高血圧、高血糖、肥満を患うリスクは、不眠症でない人に比べてそれぞれ1.41倍、1.29倍、1.31倍でした。(ここ参照)
他の研究では、不眠症は高齢女性はメタボリックシンドロームの可能性が2.6倍も高くなっていました。(ここ参照)
また別の研究では、入眠困難があるとメタボの可能性が1.24倍、睡眠維持困難があると1.28倍でした。(ここ参照)
睡眠薬で不眠をごまかしていても、その根本原因の糖質過剰症候群は改善しません。そして、すぐに睡眠薬の依存症になってしまいます。(「ベンゾジアゼピン(眠剤や安定剤)は1か月で半数が依存になる」参照)そして長期的な様々な悪影響があります。(「睡眠薬や抗不安薬のベンゾジアゼピンによって起きる長期的な影響」参照)
以前の記事「糖質制限は睡眠の質を改善する」「糖質制限は睡眠を改善する」などで書いたように、糖質制限は睡眠を改善します。
眠れなければ、まずは糖質制限をしっかりしましょう。