高齢者の多剤併用「ポリファーマシー」が問題になっています。高齢者に多く処方されている薬の中の1つに「眠剤(睡眠薬)」「安定剤(抗不安薬)」があります。また、比較的若い世代でも眠剤を常用している人も珍しくありません。

不眠の原因や睡眠を阻害する因子を取り除く努力もせずに薬で何とかしようとすれば、原因は除去できませんので、ずっと薬のお世話になることになってしまいます。

ちょっと前の記事(ここ参照)によると、厚労省の集計では、75歳以上に限ってみると、眠剤および安定剤(「催眠鎮静剤・抗不安剤」)は2003年は1カ月間に15億9561万円、2013年には25億円、その後は少し減ったものの、2018年は18億8994万円でした。

さらに、75歳以上の高齢者に使われているベンゾジアゼピン系薬剤の錠剤数を見てみると、安定剤の「デパス」は、2017年度は4億2157万錠です。すごい量ですね。

現在でも眠剤の主役はベンゾジアゼピン系の薬です。しかし、このベンゾジアゼピンは非常に依存性が高い薬です。逆に言えば眠剤や安定剤を処方すれば、その後ずっと患者さんは通ってくれる可能性が高くなります。

ベンゾジアゼピンはどれほどの期間で依存症となるでしょう。

この論文によると、1カ月以上の使用でほぼ半数が依存性になると書かれています。

運動失調のある人ではもちろんですが、慢性呼吸不全、睡眠時無呼吸症候群などの人でもベンゾジアゼピンを飲むべきではないでしょう。さらに、高齢者では、認知機能の低下、集中力や注意力の低下を起こしやすいので、運転をするのであれば、運転または薬の内服をやめるべきです。特に高齢者は他にも眠気を起こす薬を併用していることも珍しくありません。事故を起こしてからでは遅すぎます。

また、ベンゾジアゼピンには筋弛緩作用といって、筋肉を緩める作用があります。高齢者に処方して、夜間の覚醒時にトイレに行ったときなどに転倒の危険を増してしまう可能性があります。

ベンゾジアゼピンの治療⽤量で依存するようになった⼈は、通常、以下のいくつかの特徴を持っています

ベンゾジアゼピンを処⽅された「治療的」(通常は低⽤量)⽤量で数ヶ⽉または数年服⽤しています。
徐々に、通常の⽇常的な活動を⾏うためにベンゾジアゼピンを「必要とする」ようになります。
処⽅の当初の適応症が消えたにもかかわらず、ベンゾジアゼピンを服⽤し続けます。離脱症状のため、薬の使⽤をやめたり、減量したりするのが困難です。
短時間作⽤型ベンゾジアゼピンを服⽤している⼈は、服⽤の間に不安があるか、次の服⽤を切望します。定期的に医師に受診して、繰り返し処⽅箋を⼊⼿します。
次の処⽅箋がすぐに⼿に⼊らない場合、不安になります。薬を持ち歩き、ストレスが予想されるイベントの前、または慣れないベッドで夜を過ごす前に、追加の服⽤をする場合があります。
ベンゾジアゼピンを服⽤し続けているにもかかわらず、不安症状、パニック発作、広場恐怖症、不眠症、うつ病、または⾝体症状の増加が⾒られる場合があります。
ドクターショッピング、救急受診、処⽅箋の紛失が⼀般的に認められます。

実際に、複数の医療機関から眠剤を得ている人もいます。私自身は今は前医の処方を受け継がない限り、自ら新たな眠剤、安定剤を処方することはありません。そして、前医の処方を継続したとしても、できる限り減量や中止を勧めたり、試したりします。

日本では乱用は少ないでしょうが、依存はかなり多いと思います。非常に多くの人に眠剤が長期にわたって処方され続けています。安易に処方する医師も多いでしょう。

依存症になってしまうと、離脱が非常に難しくなることがあります。離脱症状は短時間作用性のベンゾジアゼピンで2~3日、長時間作用性では5~10日で発現してきます。

離脱症状は非常に多彩です。離脱の最も穏やかな形態は症状のリバウンドであり、睡眠障害に使⽤されるベンゾジアゼピンからの離脱で特に⼀般的です。つまり、ベンゾジアゼピンの離脱症状が睡眠障害なので、いつまでたってもやめられないと思ってしまいます。

離脱症状で最も一般的な症状は筋緊張、脱力、けいれん、痛み、発汗、震え、しびれ、不安、パニック、不穏、興奮、うつ、不眠、悪夢、食欲低下、頻脈、口渇、かすみ目、耳鳴り、傾眠、現実感消失、聴覚過敏、羞明などです。

薬に頼る前に、まずは睡眠の習慣、寝る前の行動や環境整備、昼寝をしない、食事の見直しなどを行うべきです。安易に長期にベンゾジアゼピンを使用してしまうと後で非常に困ることになる可能性があります。

私は不眠はありませんでしたが、糖質制限をするようになり、非常に睡眠の質が良くなりました。

 

「Treatment of Benzodiazepine Dependence」

「ベンゾジアゼピン依存症の治療」(原文はここ

One thought on “ベンゾジアゼピン(眠剤や安定剤)は1か月で半数が依存になる”
  1. 薬で手軽に症状軽減もひかれますが、
    あえてヨガ・ランニング・筋トレ、もちろん糖質制限(時々断食)など
    でストレスマネジメントに努めてます。

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