若年発症2型糖尿病の妊娠はかなりリスクが高い

妊娠の前からの、若年発症の2型糖尿病の女性の妊娠、出産のリスクはかなり高いと考えられます。空腹時高血糖や血糖値スパイク、高インスリン血症という状態で妊娠するようには人間の体は初期設定されていません。そのため、妊娠時にはインスリン抵抗性が増加します。

今回の研究では、アメリカのTODAY Studyからのもので、10〜17歳2型糖尿病と診断された女性を対象としています。

最大15年間で、141人の女性が260人の妊娠を報告しました。妊娠時の平均年齢は21.5歳、BMI35.6、糖尿病期間8.1年でした。妊娠の35%が慢性高血圧を合併していました。妊娠前の腎症は女性の25%で観察されました。下の表はすべての妊娠開始時および妊娠中の特徴と妊娠結果(表は原文より改変)

妊娠開始時の特徴
 年齢(年) 21.5(3.16)
 糖尿病の期間(年) 8.1(3.20)
 BMI 35.6(7.16)
 HbA1c 8.7(2.78)
妊娠中の特徴 (%)
 妊娠中の薬
  妊婦用ビタミン剤 78.1
  メトホルミン 21.9
  インスリン 67.3
  スルホニル尿素 5.0
  その他の糖尿病治療薬 0.8
  スタチン 0.4
  ACE阻害薬 4.2
  その他の降圧薬 8.8
  アセチルサリチル酸 4.6
 母体の入院 27.7
 妊娠高血圧腎症(妊娠20週以上) 20.1
 妊娠高血圧(妊娠20週以上) 16.8
 微量アルブミン尿症(30mg/g≤UACR<300mg/ g) 7.7
 マクロアルブミン尿/タンパク尿(UACR≥300mg/ g) 5.0
 HbA 1c > 8.0% 31.9
 その他の合併症 4.6
妊娠の結果
 不明な結果 3.4
 中絶 4.8
 早産 (妊娠20週以上) 32.6
 正期産 (妊娠20週以上) 62.5
 流産または胎児死亡(死産) 25.3
  未知の流産 9.3
  胎児の死(死産) (妊娠20週以上) 4.3
  流産 12.3

母体の合併症は、妊娠中の女性の65%によって報告されました。流産または胎児死亡は25.3%で観察され、早産は妊娠20週以上の32.6%で観察されました。妊娠高血圧腎症が最も一般的な合併症であり、妊娠20週以上の20.1%で報告され、次に16.8%が高血圧でした。

7.8%がSGA(在胎不当過小児)で、26.8%がLGA(在胎不当過大児)でした。4,000g以上の巨人児は17.9%でした。

下の表は生まれた赤ちゃんの状態です。

早産 正期産 全体
新生児低血糖症 27(42.2) 25(22.1) 52(29.4)
界面活性剤または換気を必要とする呼吸困難 23(35.9) 10(8.9) 33(18.6)
新生児低カルシウム血症 4(6.3) 3(2.7) 7(4.0)
肩甲難産 3(4.7) 2(1.8) 5(2.8)
心臓の異常 12(18.8) 6(5.4) 18(10.2)
その他の先天性異常 10(15.6) 8(7.3) 18(10.3)

かなり高い割合で新生児に異常を伴っているのがわかると思います。

当然、問題は下の表のように妊娠中の血糖値コントロールが悪い(HbA1c8%以上)ほど、多くなります。

HbA1c≤8 %_ HbA 1c > 8%
母体
 入院 30.6 45.8
 妊娠高血圧腎症 14.1 32.2
 妊娠高血圧 23.3 33.3
 微量アルブミン尿症(30mg/g≤UACR<300mg/ g) 6.12 12.9
 マクロアルブミン尿/タンパク尿(UACR≥300mg/ g) 6.84 8.51
 その他の合併症 6.61 5.08
新生児
 SGA(<10パーセンタイル) 6.9 8.8
 LGA(> 90パーセンタイル) 25.0 33.3
 低血糖症 23.9 42.1
 界面活性剤または換気を必要とする呼吸困難 13.7 28.1
 低カルシウム血症 2.62.6 7.1
 肩甲難産 1.7 5.3
 心臓の異常 5.2 19.3
 その他の先天性異常 8.6 12.7

アメリカ全体の報告と比較すると下の表のように、今回の研究の報告は非常に様々な妊娠中の問題や新生児の問題の割合が高くなっています。

アメリカ全体 今回の研究
流産 19.7 25.3
死産 1 4.3
早産 9.5 32.6
SGA 1.5 7.8
LGA 9 26.8

その他新生児の異常に関しても、全体の割合はわかりませんが、恐らくかなりのリスク増加となっているでしょう。

もちろん、平均のBMIが35以上という、日本とは比較にならないほどの肥満の人たちの研究なので、そのまま日本人に当てはまらない可能性はあります。糖尿病ではなくても肥満だけでも様々な妊娠のリスクが増加します。

しかし、妊娠中の高血糖やインスリンの増加は、日本人であってもかなりのリスクとなるでしょう。糖質過剰摂取を回避することが重要でしょう。

 

「Pregnancy Outcomes in Young Women With Youth-Onset Type 2 Diabetes Followed in the TODAY Study」

「TODAY Studyで追跡された若年発症2型糖尿病の若い女性の妊娠転帰」(原文はここ

3 thoughts on “若年発症2型糖尿病の妊娠はかなりリスクが高い

  1. 清水先生
    テーマとは関係ない質問で申し訳ございません。
    https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/20942846
    とありますが、結局、HbA1Cは鉄欠乏性貧血があると、高値になるのでしょうか?
    http://www.seikatsu-kojo.jp/health/rinken/mchc
    平均赤血球血色素濃度が低いというのは、鉄欠乏性貧血なのでしょうか?
    先日2ヶ月ぶりに採血をしました。
    HbA1Cが5.3→6.0になっていました。平均赤血球血色素濃度は31.9でした。
    2ヶ月前よりもむしろ糖質量を減らし、ケトン食に近い食生活です。
    1食5gくらいの糖質摂取で20くらい上昇するのですが、自己測定からは想定外のHbA1Cでした。
    鉄欠乏性貧血が関係ないとしたら、この違いは検査機関の違いによるものでしょうか?

    1. appleさん、コメントありがとうございます。

      MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)の基準値は検査機関により異なりますが31~36程度です。
      ですから貧血の範疇には入りません。MCV低値の小球性であれば鉄欠乏の可能性は高いですが、
      ご心配なら鉄、TIBC、フェリチンなどを測定すればわかります。

      HbA1Cが5.3→6.0とのことですが、通常HbA1cは糖尿病の治療経過の指標として検査されるため、
      同一の機関で測定することが多いでしょう。しかし、別の機関で測定すれば、測定法が異なることがあります。

      HbA1Cと貧血については明日以降に記事にしたいと思います。

  2. いまだに「日本人は米をたくさん食べないと、立派な赤ちゃん産めないよ」等の
    無責任アドバイス(好意だけに厄介)、ありがちですね。

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