LDLコレステロールが低くVLDLコレステロールが高い方が心血管疾患のリスクが増加する

LDLコレステロールが低ければ低いほど良いと思っている人は後を絶ちません。洗脳が深く、コレステロールは悪としか思わないのでしょう。そのことが不必要な薬やサプリに簡単に誘導されることにつながります。

今回の研究では、40歳以上の心血管疾患のない39,098人を対象に、平均11.8年追跡しました。その間の経皮的冠動脈インターベンション、冠動脈バイパス手術、脳卒中、心筋梗塞などのアテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の発生率を分析しました。ASCVDのイベントは4,466件発生しました。

LDLコレステロール値が100mg/dL以上を高LDL-C、100未満を低LDL-Cとし、VLDL-Cが30mg/dL以上を高VLDL-C、30未満を低VLDL-Cとしました。(図は原文より)

上の図はLDL-CおよびVLDL-Cの高低による4つのグループ分けで、中性脂肪値を比較したものです。高LDL-C低VLDL-Cの人、低LDL-C低VLDL-Cの人では中性脂肪は100mg/dL前後と低めです。しかし、低LDL-C高VLDL-Cの人が最も中性脂肪が高くなりました。

VLDL-Cが低ければ中性脂肪は低いようですね。まあこれは当然で、LDLコレステロール値を推測するのに、Friedewald推定式を用いますが、空腹時では血清の中性脂肪のほとんどがVLDLに存在し、そのコレステロールと中性脂肪の比がほぼ1:5であるという仮定に基づいています。式は

LDL-C=総コレステロール-HDL-C-中性脂肪/5

であり、中性脂肪/5の部分がVLDL-Cと考えられます。

上の図はアテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の生存曲線です。LDL-CとVLDL-Cの高低で4つのグループに分けているのは同様です。では、最もASCVDで死亡率の高いのはどのグループでしょう。青い線、つまり低LDL-C高VLDL-Cの人です。最も生存率が高いのは赤い線、つまり高LDL-C低VLDL-Cの人です。

LDLコレステロールは心血管疾患にとって低い方が良いはずでは?

高LDL-C低VLDL-CではASCVD率は最も低く、1000人年あたり7.7でした。一方低LDL-C高VLDL-CではASCVD率が最も高く、1000人年あたり16.9と2倍以上でした。

イベント別に見てみると、冠動脈疾患は1000人年あたり、低LDL-C高VLDL-Cで8.5、高LDL-C低VLDL-Cで3.6、循環器疾患による死亡は1000人年あたり、低LDL-C高VLDL-Cで4.5、高LDL-C低VLDL-Cで1.8、脳卒中は1000人年あたり、低LDL-C高VLDL-Cで3.8、高LDL-C低VLDL-Cで2.3でした。

VLDLはLDLの約7倍の⼤量の脂質を輸送しています。しかし、動脈の内膜に侵入するにはVLDL、ましてカイロミクロンは大きすぎて侵入できないと思っている人がいるかもしれません。以前の記事「LDLコレステロールは本当に動脈の血管内腔から血管内皮を通って、アテローム性動脈硬化を起こすのか? その6」で書いたように、実際の大動脈から得られたプラークを分析すると、そこには平均してVLDL+IDLが3分の1以上を占めるようです。人によってはLDLよりもVLDL+IDLの方が多い人もいます。また、「その8」で書いたように、LDLよりもかなり大きく最低でも4倍、最高で20倍もの大きさのあるカイロミクロンでさえプラークで見つかっています。

スタチンなどの脂質低下療法は主にLDLコレステロールの減少を⽬的としているため、VLDL-Cおよびその他のレムナントなどのリポタンパク質は上昇したままとなります。下の図のように、脂質低下療法を受けていない人と⽐較して脂質低下療法を受けている人は、平均してLDL-Cが低く、VLDL-C および中性脂肪が⾼くなっていました。

また下の図のようにLDL-CとVLDL-Cの高低による4つのどのグループにおいても、脂質低下療法を受けていない人と⽐較して、受けている人は、1000人年あたりのASCVD率は高くなっていました。

脂質低下療法ではLDLコレステロールは低下し、食事を改善しないため中性脂肪は高いままで、VLDLは高くなってしまいます。脂質低下療法こそがASCVDのリスクを隠している可能性さえ考えられます。

LDLコレステロールなんか下げるよりも中性脂肪を下げる方が非常に重要です。血中の中性脂肪を下げる食事は脂質および飽和脂肪酸の少ない食事ではなく、糖質制限です。

心血管疾患は糖質過剰症候群です。

「Discordance Between Very Low-Density Lipoprotein Cholesterol and Low-Density Lipoprotein Cholesterol Increases Cardiovascular Disease Risk in a Geographically Defined Cohort」

「VLDLコレステロールとLDLコレステロールの不一致により、地理的に定義されたコホートにおける心血管疾患のリスクが増加する」(原文はここ

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