精神疾患の多くは糖質過剰症候群だと考えています。精神的健康と代謝的健康はつながっています。代謝を改善せずに、薬で何とかしようとすると、抜け出せなくなるかもしれません。
今回の研究では、ケトン食を統合失調症または双極性障害の人に4か月行って、その影響を評価しました。
ケトン食は炭水化物10%、タンパク質30%、脂質60%で、カロリーを計算するように指示されず、糖質の摂取量を1日あたり約20gに減らし、1日1カップの野菜、1日あたり2カップのサラダを食べること、グラス8杯の水を飲むことが奨励されました。少なくとも週に1回血中ケトン体測定器でモニタリングし、栄養的ケトーシスの割合に基づいて、遵守、半遵守、または非遵守に割り当てました。遵守者は測定回数の80~100% で血中ケトン体が0.5~5mM(日本の単位で500~5000μmoL/L)とし、50~79%で半遵守、50%未満の場合を非遵守と定義しました。
その結果、全体として、平均体重は10% 減少、腹囲は11 %減少し、収縮期血圧は6.4%低下、脂肪量指数は17%減少、BMIは10%減少しました。
また内臓脂肪は27%減少、hsCRPは23%減少、中性脂肪は20%の減少、LDLは21%増加、HDLは2.7%増加、sdLDLは1.3%減少でした。
HbA1cは3.6 %減少、HOMA-IRは17%減少でした。(図は原文より)
上の図は、肝心の精神疾患の評価の変化です。左がケトン食の遵守者、右が半遵守です。AはClinical Mood Monitoring Forms という評価ツールで、BはClinical Global Impressionというものです。細かい内容は割愛します。Clinical Mood Monitoring Formsで評価するとベースラインで回復期になかった人では、遵守者の50%は回復し、50%は回復中、つまり100%回復に向かっているか、回復したことになります。半遵守では40%が回復し、60%が回復中となりました。Clinical Mood Monitoring Formsの重症度評価としては、全体として平均31%の改善を示しました。
BのClinical Global ImpressionはベースラインでCGIが2を超えた人の中で、遵守者は91%CGIが1改善となり、半遵守では50%がCGIが1改善になり、全体としては79%がCGIが1改善する著明な改善となりました。
Clinical Mood Monitoring Formsによる測定で回復しなかった双極性障害患者は3人のみで1人は非遵守、2人は半遵守でした。
さらに、全体としてManchester Short Assessment of Quality of Life (MANSA)(マンチェスターの生活の質の簡易評価)によって測定された生活満足度は平均17 %の改善、Global Assessment of Functioning (GAF) (全体的な機能評価)は17%改善、Pittsburgh Sleep Quality Index (PSQI)(ピッツバーグ睡眠の質指数)は19%改善を認めました。統合失調症患者では、Brief Psychiatric Rating Scale(簡易精神医学評価スケール)が32%減少しました。
そして、参加者の生の声で、「ケトン食をして以来、これほど気分が良くなったことがありません。これまでのラモトリギンよりもはるかに効果がありました。」という声もありました。ラモトリギンは商品名ラミクタールという抗けいれん薬で、双極性障害の治療薬でもあります。下の図はこの薬の臨床試験の効果を示しています。(図はここより)
今回の研究であったCGIという評価でラモトリギンは52週、つまり1年間飲んで最終評価時で-0.8の低下にとどまっています。ケトン食で非常に多くの人が1改善しているのですから、薬による治療と食事改善どちらが良いかわかるでしょう。
体の健康も心の健康も食事が最も重要です。何か不調や症状を感じたら、まずは糖質制限、そうならないためにも糖質制限ですね。
「Ketogenic Diet Intervention on Metabolic and Psychiatric Health in Bipolar and Schizophrenia: A Pilot Trial」
「双極性障害および統合失調症における代謝および精神医学的健康に対するケトジェニックダイエット介入: パイロット試験」(原文はここ)
いつも興味深い研究を教えてくれてありがとうございます。大変面白いです。
「(薬依存から)抜け出せなくなる」
とは、
言い得て妙だと思いました。
違法も合法も、
薬物依存は自分が自分でなくなる
ようで怖いですね。
でもそれで利益を得る側は
リピーター確保できますね。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
私はできる限り、薬だけでなく、医療に依存しないように患者に対応するようにしています。
医療が治すのではなく、患者が治るのを医療が手助けしているにすぎませんから。
でも、それが患者に上手く伝わらないと、ただ他の医師に逃げるだけですが。