「Obesity, dyslipidemia, and cardiovascular disease: A joint expert review from the Obesity Medicine Association and the National Lipid Association 2024」「肥満、脂質異常症、心血管疾患:肥満医学協会と全米脂質協会による専門家の共同レビュー2024」という論文が出ました。
それを読むと、何となくですが、専門家たちは、悪玉は中性脂肪増加、HDLの低下だということはわかっていながら、LDLコレステロールも悪であるとしなければならない立場にあるように見えます。
専門家たちはたくさんのお金をもらっているので、LDLコレステロールは悪玉であることを否定できないのでしょう。
肥満の増加と脂質異常症の臨床管理に関する10の要点メッセージの要約は次のようになっています。
肥満と脂質異常症
1)
The Obesity Medicine Association has defined obesity as a: “serious, chronic, progressive, relapsing, and treatable multi-factorial, neurobehavioral disease, wherein an increase in adiposity promotes adipose tissue dysfunction and abnormal fat mass physical forces, resulting in adverse metabolic, biomechanical, and psychosocial health consequences.”
1)
肥満医学協会は、肥満を次のように定義しています。「重篤、慢性、進行性、再発性、治療可能な多因子性の神経行動疾患で、肥満の増加が脂肪組織の機能不全と異常な脂肪量の物理的力を促進し、その結果、代謝的、生体力学的、心理社会的な健康上の悪影響が生じます。」
正しい食事をしなければ、慢性で進行性で再発性でしょうね。
2)
In white adipocytes, triglycerides make up over 90% of adipocyte volume.
2)
白色脂肪細胞では、中性脂肪が脂肪細胞の体積の90%以上を占めます。
3)
Adipose tissue represents the largest body reservoir for free cholesterol.
3)
脂肪組織は、体内の遊離コレステロールの最大の貯蔵庫です。
4)
Most of the lipids in adipose tissue are derived from interactions with circulating lipoproteins.
4)
脂肪組織内の脂質のほとんどは、循環リポタンパク質との相互作用に由来します。
5)
Among patients with increased adiposity, a commonly described lipid pattern is adiposopathic dyslipidemia (“atherogenic dyslipidemia”) that includes elevated blood triglyceride levels, reduced blood HDL-C levels, increased non-HDL-C, elevated apolipoprotein B, increased LDL particle number, and increased small dense LDL particles.
5)
脂肪蓄積が増加した患者の間で一般的に報告される脂質パターンは、血中中性脂肪濃度の上昇、血中HDL-Cレベルの低下、非HDL-Cの増加、アポリポタンパク質Bの上昇、LDL粒子数の増加、そして小さくて高密度のLDL粒子が増加しました。
さて、この5)では、脂肪が蓄積した人では、中性脂肪の上昇とHDLコレステロールの低下が一般的と書かれています。つまり、これは糖質過剰摂取、インスリン抵抗性で起きるパターンですね。非HDL-Cの増加もLDLコレステロールの増加もあるかもしれませんが、レムナントコレステロールの増加が大きく寄与するでしょう。最後の小さくて高密度のLDL粒子が増加、つまりsdLDLの増加ですね。
6)
The mild to modest increase in blood LDL-C levels in patients with obesity may not adequately characterize the increased ASCVD risk attributable to dyslipidemia.
6)
肥満患者における血中 LDL-C レベルの軽度から中程度の上昇は、脂質異常症に起因する ASCVD リスクの増加を適切に特徴付けるものではない可能性があります。
肥満ではアテローム性動脈硬化性心血管疾患のリスクが増加しますが、LDLコレステロールは軽度から中程度の上昇にすぎず、心血管疾患のリスク増加を特徴付けるものではないと書かれています。さらっと本当のことを書いてしまっているようですね。
7)
Among patients with increased adiposity, healthful nutrition and routine physical activity may help reduce body weight and improve lipid levels.
7)
肥満が増加した患者では、健康的な栄養と日常的な身体活動が体重を減らし、脂質レベルを改善するのに役立つ可能性があります。
体重が減ることは良いことですが、健康的な栄養という表現は非常に曖昧ですね。糖質制限とははっきりと言えないのでしょう。しかし、途中の文章では糖質の過剰摂取やケトン食についても触れていますので、糖質制限でLDLコレステロールが増加しないのであれば、もっと声を大きくできたのかもしれません。
8)
Among patients with increased adiposity, weight reduction of ≥ 5% may reduce blood triglyceride levels, with greater weight reduction further reducing blood triglyceride levels and increasing blood HDL-C levels; even greater weight reduction of >10–15% has the potential to reduce CVD risk.
8)
肥満が増加した患者では、5%以上の体重減少により血中中性脂肪レベルが低下する可能性があり、さらに体重を減らすと血中中性脂肪レベルがさらに低下し、血中HDL-Cレベルが増加します。 10 ~ 15% を超える大幅な軽量化は、心血管疾患リスクを軽減する可能性があります。
肥満は糖質過剰摂取で起きるので、糖質制限をすれば、体重が減り、中性脂肪が低下し、HDLコレステロールが増加します。インスリン分泌を減らす方法を教えずに、体重減少をしましょうと言っても無駄です。
9)
Among patients with increased adiposity, weight reduction typically results in only mild to modest reductions in blood LDL-C levels.
9)
肥満が増加した患者では、通常、体重を減らしても血中LDL-Cレベルは軽度から中程度しか低下しません。
もう、LDLコレステロールは主役ではないということを認めたということでしょう。
10)
Among patients with increased adiposity, treatment strategies to reduce CVD risk include evidenced-based therapies that concurrently facilitate weight reduction and atherogenic lipid lowering.
10)
肥満が増加した患者において、心血管疾患リスクを軽減するための治療戦略には、体重減少とアテローム発生脂質の低下を同時に促進する、科学的根拠に基づいた治療が含まれます。
もちろん、この最後のアテローム発生脂質の低下というところにLDLコレステロールを含んでいます。そうしないとスタチンが使えなくなりますから。
最初にも書きましたが、恐らく中性脂肪の増加、HDLコレステロールの低下が最も重要なことだと考えていると思います。まさに糖質過剰症候群で認められることであり、本来ならもっと糖質制限について言及すべきところでしょう。
そして、このレビューの中には、ウソも書かれていますが、当たり前かのように書いているので、何も考えない人は鵜呑みにするかもしれません。それについては次回以降で。
「Obesity, dyslipidemia, and cardiovascular disease: A joint expert review from the Obesity Medicine Association and the National Lipid Association 2024」
「肥満、脂質異常症、心血管疾患:肥満医学協会と全米脂質協会による専門家の共同レビュー2024」(原文はここ)
『トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ 』
ジェイソン・ファン/著
という本を読んでいて、
「インスリン分泌を減らす」
事の大切さが、改めてわかりました。