高齢者はもっとタンパク質を摂るべきかもしれない

日本の栄養摂取基準で高齢者ではタンパク質を0.85 g/kg 体重/日摂ることを最低の基準としています。推奨量は約1g/kg 体重/日です。海外でもおおよそ同じようなものですが、日本人の高齢者は特にタンパク摂取量が少ないように思えます。

患者さんによく食事の話を聞きますが、多くは「量があまり食べれない」「肉はあまり食べない」という答えが返ってきます。卵に関しても週に何回かしか食べない方もいます。いまだに病院で「卵は1日1個まで」という昭和の知識で指導している医師や栄養士もいるようです。そのことがしっかりと浸透してしまっていて、洗脳された頭を変化させるのは相当難しい話です。

また、野菜がヘルシーだという考えが定着しているのも問題です。野菜さえ食べていればいいわけではありません。患者さんの食事を聴くと、ごはんと野菜だけ、ときどき肉か魚、のような食事をしている人が結構います。つまり、人間にとって最も重要な栄養素である、タンパク質や脂質が十分に摂取できていないのです。

優先順位が全く違います。日本の主食という考えが間違っているのです。もっとも重要なタンパク質と脂質をまず十分量摂って、さらに野菜も十分摂って、それでもまだお腹に余裕がある方は少量の炭水化物を摂取するようにしなければなりません。そうしないと、筋肉がどんどん痩せてしまいます。

もちろん、タンパク質を摂りすぎることは中年以降問題になることはわかっていますが、今の日本人の高齢者はあまりにも少ないタンパク質しか摂っていません。ここでは推奨される最低限の2倍のタンパク質を摂ることにより、筋肉が増加することを示した研究をご紹介します。

高齢者も1日肉200g、魚1匹、卵3個を最低限摂りましょう。動物性のタンパク質は積極的に食べるべきです。

 

「The effects of dietary protein intake on appendicular lean mass and muscle function in elderly men: a 10-wk randomized controlled trial」

「高齢男性におけるタンパク質摂取が四肢の筋肉量と筋肉機能に及ぼす影響:10週間無作為化比較試験」(原文はここ

要約

背景:成人におけるタンパク質摂取量の推奨1日許容量(RDA)は、0.8g/kg 体重/日と広く普及している。高齢化は、特に筋肉量を維持するために、タンパク質要求を増加させる可能性がある。

目的:現在のRDAまたは2倍のRDA(2RDA)のタンパク質消費が、高齢者の骨格筋量および身体機能に影響を与えるかどうかを調べた。

デザイン:70歳以上の29人の男性、BMIは平均28.3だった。2つの群に分け、0.8g/kg /日(RDA)又は1.6g/kg /日(2RDA)のタンパク質を10週間提供した。

結果:両群とも中等度の負のエネルギーバランス(RDA:209±213kcal / 日、2RDA 145±214kcal / 日)が認められた。RDAと比較して、全身の除脂肪体重は2RDAで増加した(2RDA:1.49± 1.30kg、RDA:-0.55±1.49kg )。この差は、主に2RDA(+1.39±1.09kg)で見出された胴体の筋肉量の増加によって説明された。また、RDAでは2RDAと比較して四肢の筋肉量の減少(RDA:-0.64±0.91kg、2RDA:0.11± 0.57kg)を認めた。エネルギー不均衡を調整しても、これらの知見は変化しなかった。膝伸長ピークパワーもRDAで減少し、2RDAで増加した。(2RDA:26.6±47.7 W、RDA: -11.7±31.0 W)。

結論:現在のガイドラインと比較して、タンパク質の2RDAの食事の摂取は、高齢者の除脂肪体重(筋肉量)および脚力に有益な効果を有することが判明した。

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