DASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)というのをご存じですか?高血圧の予防、改善のためにアメリカで提唱された食事法です。ミネラル(カリウム・カルシウム・マグネシウム)や食物繊維を増やし、飽和脂肪酸やコレステロールを減らした食事をします。飽和脂肪酸を多く含む肉などは控えます。
塩分、飽和脂肪酸、コレステロールのすべてが悪玉だという仮説を信じているうえで成り立っている食事法です。糖質制限とは対極をなす食事法ですね。
このDASH食と糖質制限ではどっちが有効な食事法なのでしょうか?
今回の研究では、参加基準は、年齢21~70歳、過去12か月以内のHbA1cが5.7%以上、BMIが25~50、軽い身体活動が可能なこと、収縮期血圧(SBP)が130mmHg以上であることとしました。つまり、3つの疾患(高血圧、糖尿病前症または2型糖尿病、過体重または肥満)を抱える人が対象です。94人の参加者を4つのグループに分けました。糖質制限群とDASH食群に分け、さらに各食事群で追加サポートを受ける群と受けない群に分けました。
糖質制限は、糖質量を1日20~35gに減らし、尿試験紙検査で陽性と定義される栄養性ケトーシスの達成を目標としました。参加者には、少なくとも週に1回はケトン体検査を受けるよう推奨しました。
DASH食は、ナトリウム摂取量を1日2,300mg未満、脂質摂取量を1日エネルギーの20~30%に制限しました。参加者には、果物や野菜、赤身の肉や魚、全粒穀物、低脂肪乳製品を多様に摂取するよう推奨しました。
4か月でどうなったでしょうか?(表は原文より改変)
| 結果 | 糖質制限 | DASH | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| ベースライン | 4か月後 | 変化 | ベースライン | 4か月後 | 変化 | |
| 収縮期血圧、mmHg | 133.72 (1.73) | 123.95 (1.88) | −9.77 (1.66) | 132.84 (1.69) | 127.66 (1.80) | −5.18 (1.59) |
| HbA1c、% | 6.09 (0.07) | 5.74 (0.08) | −0.35 (0.07) | 6.10 (0.07) | 5.97 (0.07) | −0.14 (0.07) |
| 体重(ポンド) | 219.24 (5.39) | 200.10 (5.41) | −19.14 (1.73) | 236.43 (5.1) | 226.1 (5.2) | −10.34 (1.73) |
上の表は、血圧とHbA1c、体重の変化です。体重はポンドで示されています。1ポンドは約0.454kgです。収縮期血圧は糖質制限で9.7mmHg低下、DASH食で5.18mmHg低下でした。DASH食は高血圧を改善する食事なのに、糖質制限に負けてしまいました。
HbA1cは糖質制限で0.35低下、DASH食では0.14低下で、これまた糖質制限の勝ちです。
体重は糖質制限で約8.7kg減少、DASH食では4.7kg減少で、これまた糖質制限の勝ちです。
糖質制限の圧勝ですね。
次の表は、食事期間中に薬物を服用している参加者の薬物療法の変更についてです。
| 結果 | 人数(%) | |||
|---|---|---|---|---|
| 糖質制限 | 糖質制限+サポート | DASH | DASH+サポート | |
| 高血圧薬(n = 72) | ||||
| 中止または減少 | 5/16 (31.3) | 7/16 (43.8) | 3/23 (13.0) | 1/19 (5.3) |
| 変更なし | 8/16 (50.0) | 6/16 (37.5) | 15/23 (65.2) | 12/19 (63.2) |
| 増加 | 2/16 (12.5) | 1/16 (6.3) | 2/23 (8.7) | 該当なし |
| ない | 1/16 (6.3) | 2/16 (12.5) | 3/23 (13.0) | 6/19 (31.6) |
| 糖尿病薬(n = 24) | ||||
| 中止または減少 | 2/5 (40.0) | 3/4 (75.0) | 該当なし | 該当なし |
| 変更なし | 2/5 (40.0) | 該当なし | 8/10 (80.0) | 3/6 (50.0) |
| 増加 | 該当なし | 該当なし | 2/10 (20.0) | 該当なし |
| ない | 1/5 (20.0) | 1/4 (25.0) | 該当なし | 3/6 (50.0) |
数が少ないので、一人の変化が大きく影響してしまいますが、とりあえず見てみましょう。食事により高血圧の薬を中止または減量できたのが、糖質制限ではサポートプラスを合わせると37.5%、一方DASH食ではサポートプラスを合わせても9.5%しかありません。高血圧を改善するはずのDASH食は、効果があるようには見えませんね。
糖尿病薬を中止または減量できたのが、糖質制限ではサポートプラスを合わせると55.6%、一方DASH食ではサポートプラスを合わせてもゼロです。
これまた、糖質制限の圧勝です。当たり前です。高血圧も糖尿病も肥満もすべて糖質過剰摂取で起きるのですから、それを改善するのであれば、糖質制限が根本的な解決法です。脂質、飽和脂肪酸およびコレステロールは、高血圧も糖尿病も肥満もどれも原因とはなりません。
医療は効果のない食事を推奨するのが好きです。その方が患者は患者のままでいてくれますから。
さあ、あなたならどっちの食事を選びますか?
「Comparing Very Low-Carbohydrate vs DASH Diets for Overweight or Obese Adults With Hypertension and Prediabetes or Type 2 Diabetes: A Randomized Trial」
「高血圧および糖尿病前症または2型糖尿病を有する過体重または肥満の成人に対する超低炭水化物食とDASH食の比較:無作為化試験」(原文はここ)