LDLコレステロールは本当に動脈の血管内腔から血管内皮を通って、アテローム性動脈硬化を起こすのか? その2

前回の記事で、これまで説明されてきたアテローム性動脈硬化症のできる過程に疑問を呈しました。疑問はまだまだあります。

通常、上記の図のように、sdLDL(小さな粒子の密度の高いLDL)は血管内皮細胞から入り込みそこで酸化されて、マクロファージに取り込まれ、泡沫細胞になり、そこでさらに炎症を起こし、平滑筋が遊走して、アテロームが発生する、といった説明がされます。sdLDLや酸化LDLは肝臓で除去されにくく、長い期間血流を漂うので、内皮細胞に入りやすいのと、小さいのですり抜けやすいなど、いろいろ言われています。

しかし、本当に内皮細胞にそのような隙間があるのでしょうか?酸化ストレスや炎症などで内皮細胞が傷害され、その「穴」から小さなLDLが入り込む、と言われることもありますが、本当でしょうか?「穴」があるとすると、小さなLDLが丁度すり抜けるだけの大きさで、大きなふわふわのLDLは通さない絶妙な大きさの「穴」ができるのでしょうか?LDL以外の血液の中のものは入り込まないのでしょうか?

「穴」ができたとしたら、それはすぐに修復されないのでしょうか?もし修復が遅れれば、傷口が大きくなり、血管が内部で裂ける状態、血管の解離というものが起き、動脈瘤などができないのでしょうか?血管内皮の傷害は高血圧も関連していると言われていますが、高血圧で傷害されるなら、余計に傷口が早くふさがらないと、本当に動脈瘤となってしまうような気がします。

アテローム性動脈硬化症でプラークができるのは、大体決まっています。多いのが心臓の冠状動脈,腹部大動脈,頸動脈、下肢の大腿動脈などです。逆に肺の血管、脳の動脈やその他比較的末梢の細い動脈は血管は硬くなったとしても、アテロームが発生するというのはあまり聞きません。(私が知らないだけかもしれません)

コレステロールを運ぶLDLの血中の濃度はどの血管でも同じはずです。LDLは同じように体中に漂っています。

なぜ、動脈の部位により違いがあるのでしょうか?太さの問題ではありません。心臓の冠動脈は細い動脈です。動脈全て同じようにアテロームができるとしたら、細い血管から詰まっていくはずです。血圧の問題であったとしても、末梢の方が圧は高くなるので、細い血管の方が血圧の傷害を受けやすくなると思うのですが実際は違います。冠動脈には血圧の低い方の拡張期に主に血液が流れます。血圧が関連しているのはおかしいですね?

脳の動脈なんてものすごく細いのに、アテロームは発生せず、脳梗塞は心臓などから飛んできた血栓が詰まって起こります。頸動脈にアテロームはできやすいのに、その分岐した細い動脈はアテロームができていません。

そして、静脈にはアテロームはありません。(「動脈硬化」なので、静脈にないのは当たり前?)小さいLDLは静脈にも同じように流れていますし、炎症などが関連するなら静脈の傷害が起きてもおかしくはありません。

正直疑問だらけです。恐らくその答えは医学の教科書には載っていません。(すべて読んだわけではないので、もしかしたら書いてあるものもあるかもしれません)

実際には、sdLDLを血管の内膜に引き込む別のメカニズムがないと説明がつきません。

前回の記事で書いたように、脂肪が最初に内膜の深い層で蓄積することも今までの考えでは説明できません。

わかったような記述がいろいろな文献や教科書にされていますが、これは仮説であり、本当のところはわかりませんし、前回の記事や上記のような疑問とは非常に矛盾した仮説なのです。

私も本当のところはわかりませんが、できる限り説明の付くメカニズムを考えていきたいと思います。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. 松田武英 より:

    2回目のコメントです。「LDLコレステロールは本当に動脈の血管内腔から血管内皮を通って、アテローム性動脈硬化を起こすのか? その2」を拝見しました。LDLの代謝について若干研究している者です。普通のLDLが直接細胞に入ることはできません。各細胞にはLDL受容体があり、アポB100を介してLDLを認識し取り込みます。しかし酸化されたLDL中のアポB100(酸化LDLともいう)があると、LDL受容体はLDLを取り込めなくなります。酸化LDLは、早期に取り除かねばならぬ物質であり、白血球の1種類であるマクロファージに取り込まれます。マクロファージに取り込まれた酸化LDLはなぜかアテロームに集ります。これが動脈硬化の始まりです。sLDLは、VLDLやLDLが加水分解されたもので、健常人ではすぐ細胞に取り込まれ消滅しますが、何らかの原因で消滅できないとき出現します。すなわちsLDLは「酸化されやすいLDL」が沢山存在していた証拠だったのです。しかしLDLが少ないまたはsLDLがない人にも心筋梗塞が起こっており、LDLやsLDLコレステロールを下げたから動脈硬化や心筋梗塞が起こらないということにはなりません。要は前出の「酸化されやすいLDL」の存在を知りそれをなくす治療法が必要と言うことになります。もちろん教科書にはこれら指針は皆無です。以上ご参考になりますか。

    • Dr.Shimizu より:

      松田さん、コメントありがとうございます。また先日は資料ありがとうございました。
      参考にさせていただきます。

      よろしければ教えてください。健常人でsLDLがすぐに消滅するメカニズムはどのようなものですか?
      sLDLはLDL受容体との親和性が低下すると認識していますが、それは健常人では異なるのでしょうか?

      今回のコメントにある
      >マクロファージに取り込まれた酸化LDLはなぜかアテロームに集ります。これが動脈硬化の始まりです
      は、これまでの仮説と同じ内容です。この仮説に対して、疑問を持っています。
      >LDLが少ないまたはsLDLがない人にも心筋梗塞が起こっており、
      >LDLやsLDLコレステロールを下げたから動脈硬化や心筋梗塞が起こらないということにはなりません
      つまり、もともとどんなタイプであれLDLは関係ないということでは?
      心筋梗塞を起こしても、酸化LDLが高い人もいれば健常人と同じレベルの人もいる。
      集団レベルでデータを分析すれば、健常人よりも有意に酸化LDLが高くても、
      個人レベルでは人それぞれです。
      つまり、酸化LDLが高くなるような状態が問題であって、血中に酸化LDLが増加することは
      必須条件ではないのでは?と思ったりします。
      血中の酸化LDLが低いこと=実際の体内の酸化LDLの量が少ないこと、ではないとも思います。
      いかがでしょうか?

  2. 松田武英 より:

    清水 先生
     ご連絡ありがとうございます。ご返事遅くなりました。
    血管壁の中の代謝は専門の先生方にお任せするとして、私は主に血中の脂質代謝に注力しているものです。先生のご質問の答えになるかどうかは別として、健常人は小粒子LDL(sLDL)ができにくいのです。言い替えると、CMとVLDL、LDL中のTGが、LPLやHTGLにより加水分解された直後、細胞のLDLレセプターにより吸収され消滅します。しかしご存知のようにLDL中のTGの含有率はおよそ10%です。したがってLPLやHTGLによりLDLが無くなるという仮説は成り立ちません。現実に大量のヘパリン投与でもLDLが無くならないからです。これはPCSK9の登場によりLDLやsLDLが劇的に消失することで証明されています。したがって血液中のsLDLやLDLコレステロールが動脈硬化の原因物質であるという説には矛盾があります。もしそうであればsLDLを持っている患者の数が多いので心筋梗塞は今の100倍1000倍以上となるはずです。
    これが出発点です。
    さてLDL受容体は、VLDLやLDL中のアポB100をターゲットにVLDL、LDLを細胞に取り込みます。この時アポCが補酵素として使われています。すなわちVLDL、LDLは水解された直後になくなるということです。
    ところで心筋梗塞には血中のリポ蛋白質の形から見た場合、2通りあります。
    1つはⅡbやⅣ型に見られるsLDLが多いタイプ、もう1つはⅡa型に見られるTGが低く(TCが高い患者、もちろんsLDLはありません。後者にはTCが低い健常人タイプも含まれます。したがってコレステロールが高いから心筋梗塞を発症するというのは、製薬メーカの宣伝です。コレステロールが200を切った人でも心筋梗塞が起こっている事実があるからです。また300や400なら心筋梗塞になるとは言い切れません。
    さてご質問のsLDLは受容体との親和性が低下するということはないです。LDL受容体は酸化したIDLや、LDL、sLDLは取り込むことができないのです(主にアポBが酸化されると言われています。)。sLDLが酸化しやすいと言われていますが根拠はないです。もともとLDL受容体はsLDLを受け付けないが正解のようです。何故ならアポBのほかにアポCが補酵素としてなくてはならないからです。LDLやsLDLはアポCが殆んどない上にこれらのTGの含有率が低く、LPLではTGを水解しても受容体に取り込まれないのです(コレステロールの一部はLCATによりHDLに引き抜かれる)。だから人ではLDLが溜まるということになります。すなわち無理にLDLを下げる必要はないということです。血液中には抗酸化物質が沢山あって、酸化LDLや酸化sLDLは、血液中に殆どなく、できたとしてもすぐマクロファージに取り込まれるからです。しかしマクロファージが取り込んだ酸化LDLはなかなか代謝できません。少しづつこれが炎症性動脈壁に溜まって動脈硬化が進展すると考えた方が良いとおもっています。私たちはどういう人がリスクガ高いのか現在研究中で近くオープンされる予定です。以上お答えになりましたでしょうか??

    • Dr.Shimizu より:

      松田さん、非常に詳しい解説ありがとうございます。
      非常に参考になります。
      sLDLが酸化しやすいというのに根拠はないということですね。sLDLは含有する抗酸化物質が非常に少ないので
      酸化されやすいと認識していました。そして受容体との親和性は低下するのではなく、「受け付けない」が正解ということですね。
      このことについて文献があれば教えていただけると幸いです。
      でも、疑問はまだまだあるので、勉強を続けていきたいと思います。
      また、よろしくお願いいたします。