ビタミンB6による細胞死

以前の記事「大量ビタミンB6の毒性」で書いたように、大量のビタミンB6の摂取では進行性の神経障害のリスクがあります。ヨーロッパでの摂取量の上限は1日に25mgです。

オランダの医薬品とワクチンの有害反応の報告を収集して分析するオランダファーマコビジランスセンターラレブは、ビタミンB6サプリメントの副作用に関する報告を発表しました。 2014年以降、ビタミンB6による感覚神経障害の50例以上が報告されました。ビタミンB6の摂取量は1.5〜100mgです。活性型のピリドキサールリン酸の血中濃度は183nmolから4338nmolでした。

ビタミンB6には、ピリドキシン、ピリドキサールおよびピリドキサミンおよびそのリン酸型があり、水溶性ビタミンに分類されます。 腸で吸収された後、ビタミンB6の大部分は肝臓でピリドキサールリン酸に変換され、私たちの体のすべての細胞で利用可能になります。細胞内では、ピリドキサールはピリドキサールキナーゼによってリン酸化されてピリドキサールリン酸になります。 組織の必要量を超えるピリドキサールの大部分は、肝臓によって酸化され、尿中のビタミンB6の主要な分解生成物である4-ピリドキシン酸になります。(図は原文より)

上の図はビタミンB6の代謝を示しています。

これまで、どうしてビタミンB6が神経障害を起こす毒性を持っているのかは不明でした。しかし、今回の研究ではその毒性のメカニズムを示しています。

上の図はビタミンB6による細胞死の割合を示しています。横軸の略語はピリドキシン(PN)、ピリドキサミン(PM)、ピリドキサール(PL)、ピリドキサミンリン酸(PMP)、ピリドキサールリン酸(PLP)です。Triton-X100は陽性対照です。大きいグラフは5μmolの濃度での細胞死の割合です。ピリドキシンのみ30%を超える細胞死が認められました。それ以外のビタミンB6では細胞死の増加はありませんでした。

右上の小さなグラフはピリドキシンのみで、濃度を変化させて細胞死の割合を分析しています。横軸の単位はμmolです。たった0.2μmol(200nmol)の濃度で、細胞死は17%に増加しました。 濃度を2倍にして0.4μmol(400nmol)にすると、細胞死は30%に増加しました。

この結果より、ビタミンB6の中で毒性を持つのはピリドキシンと考えられます。不活性型のピリドキシンは、最終的に活性型であるピリドキサールリン酸に変換されます。高濃度のピリドキシンは、ピリドキサールリン酸と競合することにより、ピリドキサールリン酸依存性酵素を阻害すると考えられています。

ピリドキサールリン酸は、さまざまな酵素反応でよく知られている補酵素です。ピリドキシンは最も一般的にビタミンB6のサプリメントとして摂取されます。ビタミンB6は水溶性ビタミンであり、安全であるという神話が信じられているため、高用量のピリドキシンを含むサプリメントが市場に出回っています。

これまでの副作用を引き起こすすべてのビタミンB6のサプリメントにはピリドキシンが含まれていました。ピリドキシンは、ピリドキサールリン酸と競合することにより、神経毒性の原因となると考えられます。さらにピリドキシンの毒性作用は神経細胞特異的であると思われます。細胞死の他に、軸索障害は多発性神経障害も引き起こします。高レベルのビタミンB6も神経の脱髄に関連しているため、軸索障害はおそらくビタミンB6の毒性に関連していると考えられます。脱髄はより軽微な毒性効果であり、このビタミンB6の毒性は、細胞死に必要な濃度よりもさらに低い濃度で発生すると予想されます。脱髄は多発性神経障害につながる可能性があります。

神経障害はビタミンB6の毒性だけでなくビタミンB6欠乏症でも見られます。今回の研究では、活性型のピリドキサールリン酸に対する不活性型のピリドキシンの効果を、ピリドキサールリン酸を補酵素として含む2つの酵素、すなわちチロシン脱炭酸酵素とアラニンアミノトランスフェラーゼで試験しました。両方の酵素の活性は、ピリドキシンによって競合的に阻害されることが示されました。他のビタミンB6のタイプは、酵素活性を増加させるか、酵素活性に影響を与えませんでした。ピリドキシンは実際に活性型のピリドキサールリン酸と競合し、ビタミンB6依存性酵素の阻害をもたらすのです。

ビタミンB6欠乏症では、補因子としてのピリドキサールリン酸に依存する酵素が部分的に阻害されます。高用量のビタミンB6のサプリメント摂取では、ピリドキサールキナーゼとピリドキシンリン酸オキシダーゼによってピリドキサールリン酸に変換されるピリドキシンが非常に増加し、ピリドキシンはこれらの酵素を飽和状態にさせ、結果として、ピリドキシンが蓄積します。つまり、ビタミンB6の摂取は活性型が競合的に阻害されることによりビタミンB6欠乏症と同様の状態になってしまう可能性があるのです。この論文ではこれを「ビタミンB6パラドックス」と呼んでいます。

実際、大量のビタミンB6のサプリメント摂取者では、高濃度のピリドキシンが脳脊髄液で最大18μmol、血中で最大0.2μmol(200nmol)認められているようです。0.2μmol(200 nmol)のピリドキシンは、上のグラフで示したように、すでに細胞死を誘発しうるようなレベルです。脳脊髄液では最大でその90倍ものピリドキシンが認められているのです。

水溶性ビタミンは安全であるというのはただの神話です。水溶性ビタミンは大量に飲んでも有害性はないというのは根拠がないでしょう。ちゃんと糖質制限をしている場合、恐らくビタミンB6欠乏になることはないでしょう。しかし、どうしてもビタミンB6サプリメントを摂取したいのであれば、1日に25㎎以下の量にするか、ピリドキシンを含まないものを選択する必要があると思います。

「The vitamin B6 paradox: Supplementation with high concentrations of pyridoxine leads to decreased vitamin B6 function」

「ビタミンB6パラドックス:高濃度のピリドキシンを補給すると、ビタミンB6機能が低下する」(原文はここ

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