大量ビタミンB6の毒性

以前の記事「大量ビタミンCの毒性」では、水溶性のビタミンであっても、過剰な分はただ排泄されるだけでなく、有害作用を起こす可能性があることを書きました。

栄養素は単独で大量に摂取されるわけではなく、様々な栄養素が様々なバランスで相互作用を示します。食事からであれば一つ一つの栄養素の量は知れていますが、それぞれの食材にはそれに含まれる栄養素同士の相互作用が丁度良い程度のバランスで栄養素が含まれる気がします。

しかし、サプリメントで大量、多種類の栄養素を摂取した場合、どのような相互作用が起きるかは未知の世界です。薬の多剤併用と何ら違いはありません。

以前の記事「薬の併用は新たな病気を作り出すかもしれない」で書いたように、単独では副作用が現れなくても、併用によって副作用が現れる可能性もあります。

大量のサプリを勧める人も、実際には大量、多種類のサプリを同時摂取した場合のエビデンスを持っているわけではないので、それぞれの栄養素単独での利点を強調しているに過ぎません。しかも、それは単独の栄養素の研究がもとになっていることがほとんどです。あれもこれも大量に摂っている人の研究なんて存在しません。つまり、エビデンスがまったく存在しない状況でサプリを大量に摂取していることになります。

水溶性ビタミンの中でサプリとして人気があるのはビタミンCと共にビタミンB群でしょう。ビタミンB群は非常に重要なビタミンだと思います。しかし、これも大量に摂取して問題ないのでしょうか?

B1やB2はあまり問題ないようですが、ナイアシンは以前の記事「ナイアシンは安全か? その1」「その2」で書いたように安全性に問題ありです。それではビタミンB6はどうでしょうか?これも皆さんご存知だと思います。

実はこのビタミンB6は有害性ありです。世界保健機関(WHO)が出している、国際疾病分類(ICD)にも「ビタミンB6大量摂取症候群」として一つの病気としても分類があるほど有名な副作用です。さすがにビタミンB6に関しては、大量摂取を勧める方でも、上限量を示して、注意喚起がされていると思います。世界的に認められた明確な副作用ですから。もし、上限量設定無しに安心、無害と言っていたら、医師として、人間として…ちょっと。他の意図を感じてしまいます。

大量のビタミンB6は進行性の感覚性運動失調や重度の位置覚および振動覚障害などの末梢神経障害を引き起こす可能性があります。歩行が困難になる場合もあります。大量というのは「MSDマニュアル プロフェッショナル版」によると500mgです。大量摂取を勧める方の上限量がどれくらいかは知りませんが、その上限量を大きく上回った500mgとか、何gというグラム単位でビタミンB6を摂取している人はまさかいないと思いますが、500mgという量でも危険性があるようです。200mgと書かれているものもあります。アメリカでは一応200mgがこれまで報告された境目の量と考えて、上限量を100mgに設定しています。日本は対格差を考えたのか少し少ない男性55~60mg、女性45mg、ヨーロッパはもっと低用量での報告を加味してもっと厳しく25mgの設定です。

ただ、高齢者、腎機能が低下している人などはもっと少ない量でも神経障害が起きる可能性があるかもしれません。

3人の高齢者の報告ではビタミンB6の600mg摂取では、多発性の末梢神経障害と感覚性運動失調を示し、ビタミン投与中止から2年後でさえ、すべての患者で末梢神経障害と歩行に有意な改善は見られませんでした。

健康なボランティア5人による人体実験では、1gまたは3gのビタミンB6を摂取させられ、すべての被験者において、感覚症状と定量的感覚閾値の異常が同時に起こりました。3gの方が症状が早く出現しました。さらにビタミンB6投与を中止し、血清ピリドキサールリン酸レベルが正常に戻ったにもかかわらず、症状が2〜3週間進行し続けました。(論文はここ

もちろん中には副作用を示さなかった報告も存在するでしょう。しかし、多くは副作用を示し、ほとんどの国で注意喚起がされ、世界標準の病名まであるのです。直ぐに副作用が現れなくても、長く飲んでいることにより、リスクが高まる可能性があります。

ビタミンB6による神経障害の回復は緩徐であり、上の高齢者のように患者によっては完全に回復しない場合があると言われています。手足のしびれやピリピリ感、違和感、歩行の感覚のちょっとした異常、手足のぎこちなさなどを感じたらすぐにビタミンB6は中止しましょう。

このような悲惨なことが起きないようにするには、食事からだけ摂取するか、少量のビタミンB6に抑えるかしかありません(最大25mg程度)。起きてしまってからでは遅い可能性があります。糖尿病の方では、糖尿病による末梢神経障害かビタミンB6の副作用かわからない場合もあるでしょう。

神経障害まで起こすリスクを負ってまでビタミンB6を大量に飲まなければならないほど、あなたのビタミンB6は大きく不足していますか?

「Sensory neuropathy from pyridoxine abuse. A new megavitamin syndrome」

「ピリドキシン乱用による感覚神経障害-新しいメガビタミン症候群」(原文はここ

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コメント

  1. Az より:

    いつも有益な記事をありがとうございます。
    先生の記事を読んでビタミン剤サプリを減らしました。
    ゼロにした訳ではありませんが、過剰にならないように気をつけたいと思います。

    以前のコレステロール値に関する記事でも私の疑問(不安)に答えて頂けたし、本当に有り難く思っています。
    中性脂肪 47 HDL 117 LDL 158 で「要医療」と言われていたのですが LDLコレステロール値について計算式もあり不安が解消しました。

    これからも「不安を解消する記事」「ブレーキをかける記事」をよろしくお願いします。

    • Dr.Shimizu より:

      Azさん、コメントありがとうございます。

      また、ありがたいお言葉嬉しいです。

      サプリは全面的に否定しているつもりではありません。
      ご自身に合わせて適量であれば問題はないと思いますし、過剰でも、リスクが分かったうえで敢えて大量に摂るのは
      本人の自由です。

      医療では未だにLDL悪玉説が主流なので、面倒ですよね?

      これからの記事がお役に立つのかどうかはわかりませんが、多分この調子です。

  2. 中嶋一雄 より:

    「ビタミンB6・B12サプリは男性の肺がんリスクを上昇させる」

    http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4473.html

    この内容を、ある医師が管理するメガビタミンに関するFacebookに書き込んだ。そうすると除名処分をくらい、閲覧も書き込みもできなくなった。私はあくまで学問的な論争をいどもうと思ったのだが、一方的に拒絶されてしまった

    食事摂取基準2015には、ビタミンの耐用上限量が設定されています

    https://www.glico.co.jp/navi/e07-2.html

    • Dr.Shimizu より:

      中嶋一雄さん、コメントありがとうございます。

      ビタミンの上限は知っています。もちろんそれを上回ったらすぐにどうにかなるわけではありませんが、
      メガビタミンというのは、ちょっと次元が違います。

      正直なことをいうと、反対意見を持つ人のコメントは非常に攻撃的なところがあることも少なくありません。
      あまりにひどい場合は私も無視します。しかし、通常の疑問をぶつけることは全く問題ありません。

      彼のやり方は非常にうまいなぁと思います。さすがは精神科?(関係ないか?)
      Facebookなどの閉鎖的なコミュニティは一つの考えを植え付けるのには非常に適しています。
      そして、話の展開の仕方はダイレクトレスポンスマーケティングに非常に似ています。
      この方法は信者化するのにはもってこいでしょう。
      何とかセットなど作ったのも、マーケティングを取り入れている感じが強くします。

      更に必要なことは情報の遮断です。通常のエビデンスには価値がないと思わせるのです。通常の医師も無能だと思わせるのです。
      だから自分の考えを否定するようなエビデンスは閉鎖的なコミュニティに入れさせたくはないのです。
      だから中嶋さんが普通に質問したところで、ないものとさせられたのでしょう。

      そして勉強しろ、勉強しろ、といいます。どこかにも同じようなことがありましたよね?

      最初は少し興味を持っていましたが、あまりにも根拠に乏しいこと、マーケティング手法の匂いがしたことで、
      私は医療従事者として、ここからは離れるべきだと思いました。
      糖質制限は根拠もあり、背景のメカニズム納得できます。だからこそ徐々にではありますが、世界的な広がりを見せています。
      しかし、メガビタミンは本当にごく一部の医師がやっているだけです。全く広がりません。
      それは普通の医師が知識がないからではありません。
      根拠もほとんどありませんし、メカニズムもはっきりわかりません。そんなところに足を踏み入れたくないからです。

      医療側の問題もあり、医療に不信感を持っている一般の人は、非常に入り込みやすいでしょうね。

      この内容をちゃんと記事にしたら、びっちり2回分は書けそうですが、誹謗中傷コメントがまた増えるだけなので、
      これくらいにしておきます。

      • rui より:

        議論をする事って、ほとんどが時間と労力の無駄なんですよね。
        人は自分の考えを簡単には変えようとはしませんから。

        清水先生も誹謗中傷コメントがあるようですが、メガビタミンも同じ状況でしょう。

        私からすれば、糖質制限もメガビタミンも同じです。

        糖質制限について調べ納得して試してみたところ良いことだらけでしたので、いろんな人に勧め、自分の体の変化や糖質制限の理屈も説明しましたが、反対されるだけで、相手が言い返せないレベルまで議論すると、最後には「糖質制限教」とバカにされ宗教扱いです。
        今では糖質制限も広まってきたので、ここまで頭のおかしい人扱いはされなくなりましたが、私が始めた4年前はこんな感じでした。

        コメントの方は、「学問的な論争を挑もう」としてたようですので、時間と労力の無駄な議論になると判断されたのではないでしょうか?

        私にとっては、メガビタミンは、そのメカニズムやリスクの説明もちゃんとありますし、ビタミンなどの相互作用についても書かれているので、納得して自分の体で実験しています。
        また、ビタミンB6だけを大量に摂取するなんてことは推奨されていません。

        FBは今17000人ぐらいで、医者の方も数人いる感じです。FBは、多くの人の成功例、失敗例、失敗した理由など情報の宝庫です。メガビタミンは臨床例などが少ないので、FBの内容は大変ありがたいのですが、あそこをオープンにしてしまうと、今までの常識を武器に戦いを挑む人たちで溢れ、潰れてしまうでしょう。閉鎖的で宗教臭いですが、仕方のないことだと思います。

        糖質制限で頭のおかしい変人扱いをされた経験から、メガビタミンは本当に親しい人にしか勧めていません。

        今までの常識を武器にした普通の一般人からすれば、糖質制限もメガビタミンもありえない理論ですよ。
        両方試した自分からすれば、「試してみればわかるのに」と思うのですが。

        • Dr.Shimizu より:

          ruiさん

          まあ、この辺にしておきますか。
          ドップリとつかった一般の方には恐らく、私が意図している問題点はうまく伝わらないと思います。

          • rui より:

            承知致しました。
            気分を害してしまって申し訳ございません。
            私としては、清水先生の話は大変面白く、自分の考えと違う事も参考とさせて頂いてます。
            今後はROM専に徹します。

  3. 通りすがり より:

    先生の記事は毎回、目から鱗で勉強になります。ところで、メガビタミン系医師のブログ http://www.clnakamura.com/blog/ を見ると、MSG(グルタミン酸ナトリウム、味の素)の危険性に度々言及されています。家では味の素を意図的に使用することはありませんが、調味料、加工品には必ずといってよいほど、アミノ酸xxx が添加されており、外食でも防ぐことは不可能と思われます。先生のMSGに対する御見解をお聞かせいただけたら幸いです。

    • Dr.Shimizu より:

      通りすがりさん、コメントありがとうございます。

      MSGの毒性は気になるけど、大量ビタミンの毒性は気にならないのでしょうか?
      実際には私の答えはグレーです。わかりません。あえて摂らないのであれば、時々の外食などでMSGを少量摂取しても問題は起きないと思います。
      調味料はシンプルに、加工品をできる限り避ければ良いと思います。
      私は工業的に作ったり、抽出したものは体に良いとは思っていません。しかし、少量であれば問題は無いとも思っています。

  4. XYZ より:

    小児神経疾患における活性型ビタミンB6の意義
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/ojjscn/48/2/48_114/_article/-char/ja/

    カルボニルストレスを伴う統合失調症を対象にしたピリドキサミン大量併用療法の効果の検証
    http://www.igakuken.or.jp/schizo-dep/forspecialist.html

    ビタミンB6は、ヒトにとって毒にも薬にもなります

    • Dr.Shimizu より:

      XYZさん、情報ありがとうございます。

      仰る通り、毒にも薬にもなります。
      だから、治療と健康維持の次元は違うのです。