食欲抑制薬の臨床データはある意味凄い! (祝!1000回目)

この記事は何と1000回目の記事になります。

それにしてもよくここまで続いたなぁと思います。勝手なひとりごとをどれだけの人が読んでくれているのかはよくわかりませんが、読んでいただいた方にお礼を申し上げます。ありがとうございました。

ときどきくだらない記事もあり、時々むかつく記事もあるでしょう。お付き合いいただきありがとうございました。まあでも私のひとりごとですから。

そして、約2か月前に「糖質過剰」症候群を出版し、一定の役割は終えたのではないかと思っています。

ということで、今回の記事を最後に…

と思いましたが、まあ何人かでも役に立つなあ、と思っていただける人がいるなら、無理せず自分のペースでひとりごとを言っていきたいと思います。

以前の記事「人間はみんな自分の体について無知である」で書いたように、まだ我々は人間の体のメカニズムのほんの一部しか知りません。だから体に起きていることを考えるのに、何かに手掛かりが必要だと思います。その意味で仮説を述べるときにやはり何らかの根拠が必要だと思います。出来る限り人間のもの、それがないならせめて動物実験のもの。それもなければ仮説というよりは空想、妄想に近いものになってしまいます。決してエビデンス至上主義ではありませんが、根拠がゼロなら科学ではなくなります。医学は科学ではないという人もいますが、代謝は細かく見れば化学的な反応、現象です。だから、科学でなければ変です。もちろん科学だけでは解明できない部分もいっぱいあるとは思います。

そうすると三石理論は、根拠があるのでしょうか?仮説としては非常に面白いです。タンパク質の重要性も同感です。しかし、カスケード理論は動物でも人間でも確認されているでしょうか?そもそも三石理論は糖質制限的には全く受け入れられないことがあります。彼の著者「医学常識はウソだらけ 図解版」には、「脳の唯一のエネルギーはブドウ糖だけ」「砂糖を摂れば頭の回転が良くなる」「砂糖は積極的に摂れ」「朝食を抜くと脳死に近い状態になるから、しっかり白米などを摂れ」などという趣旨のことが書かれています。このことだけで彼を否定しようとは思いませんが、やはり空想や妄想の部分もあるのでしょう。

また、ビタミンの必要量は個人差によって100倍も違いがあると、あたかも確定している理論のように言う方がいますが、動物でも人間でも確認されているでしょうか?確認されていないなら、仮説ですが空想か妄想に近いです。100倍の「100」という数字もいかにも作った数字に感じます。研究で判明した数字なら、このようなキリのいい数字ではなく、中途半端数字になるはずです。もしかしたら偶然キリのいい数字だったかもしれないですが。実際の数値を知っている人が万が一いたら是非とも教えてください。もちろん個人差はあるのは当然ですが、そんなに大きな差でしょうか?

出来る限り私の仮説も妄想にならないように根拠を示していきたいと思います。

さて、今日は食欲抑制剤についての話です。サノレックスという薬は知っていますか?食欲調節中枢などに作用して食欲中枢を抑制し、満腹中枢を刺激することにより食欲抑制作用を示すそうです。日本で唯一の食欲抑制剤です。(詳細はここ

上の図はサノレックスの販売元の富士フイルム出している製品情報からのものです。先日この情報を手にしてびっくりしました。BMIが35以上が適応ですが、上に図はプラセボとサノレックスを3か月使った時の食欲抑制効果を見たものです。

まずびっくりするのは摂取エネルギーぼ低さです。1000kcalもありません。対象者は100kg級の人です。必要なエネルギー量の半分にもならないでしょう。この臨床試験でプラセボ群は18人中4人が激しい空腹に耐え切れず脱落しています。当たり前です。拷問のような食事です。

それでもサノレックスは更に摂食量が減少しているのです。746kcal!ある意味凄いですね!薬を飲み始めて7か月後(薬は最初の3か月で終了)の体重減少量はプラセボ群で約10kg、サノレックス群で約20kgでした。

これで必要な栄養素は摂れているはずはありません。メーカーの人の話では、薬をやめて普通の食事に戻ったらリバウンドします、と言っていました。当たり前だ!

でも薬をやめた後も努力した人は、減少した体重が維持できています、とも言っていました。本当かよ?こんな少ないエネルギーでずっと過ごせるわけはありません。倒れてしまいます。

しかし、このサノレックスはこれだけの少ないエネルギー摂取量でも空腹感を感じないなんて、非常に恐ろしい薬です。その中身はアンフェタミンの類似薬だそうです。覚醒剤(メタンフェタミン)の仲間です。依存性に留意すること、と警告文まで書かれています。脳に働く薬に安易に手を出さない方がいいです。

いつから人間はこのような覚醒剤にも似た薬を使わなければ痩せることが難しくなったのでしょうか?糖質過剰症候群で肥満になっているのですから、糖質制限をすれば、お腹いっぱい食べてもどんどん痩せます。

11 thoughts on “食欲抑制薬の臨床データはある意味凄い! (祝!1000回目)

  1. 清水先生、 1000回、おめでとうございます!
    いつも記事を楽しみにしています。そして勉強させていただいています。

    最近のビタミンの安全性について非常に興味深いです。メガビタミンとかビタミンCの大量服用には違和感を持っていました。ビタミンもなんらかの生理機能を持っているのであれば、確かに大量に飲むとなんらかの効果があるのかもしれませんが、一方でなんらかの副作用に繋がっても不思議がないと思います。そもそも、通常の食事を考えれば、大量ビタミンはあまりに不自然だと思います。糖質制限の考えとはまったく逆だと思いますが、糖質制限を主張している先生方でも大量ビタミンの必要性を言われている先生がいることが不思議です。

    これだけの論文を紹介することは大変だと思いますが、これからも楽しみにしています。

    1. じょんさん、コメントありがとうございます。

      もともとのビタミンの役割、働きは重要ですが、大量というのが飛躍しすぎですね。
      体に必要なもの、良いものは大量にあってもいい、ということは言えないのですが。

      根拠付きで記事を書くことは正直大変ですが、このスタイルで今後も行きたいと思います。

  2. 1000回おめでとうございます。ぜひ、これからも続けてください。楽しみにしております。

    さて、今回、三石理論について述べられていますが、「これは医療でしょうか。」と思うのです。
    科学的なエビデンスはなく、リスクについての説明がほとんどないに等しい。その理論をもとにしているグループにおいてもリスクはほとんど説明されていない。信じるも信じないも自由だとは思いますし、一定の治療効果もあるのでしょう。しかし、医療はリスク&ベネフィットであるべきで、リスクが隠蔽されているとすれば、もはや医療とはいいがたいと思うのです。実践者もほとんど新興宗教の信者のような精神状態で、医学的にはっきりと数値が出ても根拠もない理由をつけて「大丈夫」と言っている方を見かけます。
    少し前に投稿しましたが、私もナイアシンを試してみました。細心の注意をはらって、予定していた血液検査の日から逆算して始めましたが、やはり肝機能への影響があり、すぐ中止しました。上記グループにおいては、すべては「自己責任」と言う逃げ口上で、指導に責任を持つという態度が見られません。実践されている方は、ぜひ自身の状態を冷静に分析してほしいと願います。

    1. 西村 典彦さん、コメントありがとうございます。

      三石理論は、こんな昔にこんなすごいことを言っていた人がいたんだなあ、という意味では価値があります。
      そしてその仮説も興味深くて面白いと思いますが、現代の医療にはそぐわないと思います。
      確かにすべては自己責任です。どの医療を選ぶか、どの栄養を選ぶかは自己責任です。
      しかし、リスクはリスクとしてちゃんと情報を伝えられているかどうかは非常に重要な部分でしょう。

  3. 1000回おめでとうございます!
    私も楽しみにしていますので、ゆるりと続けてください。

    ここのところの記事と皆さんのコメントは、なかなか耳が痛いですね(笑)
    私は数ヶ月前にメガビタミングループを退会しました。
    なんか違うと思ったのと、自分達の考え以外は認めないような不寛容さを感じたからですが、
    それでも何のメリットも感じないのにナイアシンを続けていたのは完全に信者になっていたんでしょう。
    ナイアシンをやめて2週間ですが、もうずっとなかった食欲が戻ってきました。
    慢性的に続いていた下痢もなくなりました。
    私には合わなかったようですね、考え直すきっかけをくださって感謝しています。

    1. カーコさん、コメントありがとうございます。

      賢明は判断だと思います。また、体調が良くなって良かったですね。
      ある一定の意見を持った集団の中にいると、自分を客観的に眺める力が低下します。
      信者化する仕組みに乗っかってしまえば、抗うことも難しいかもしれませんね。

  4. 清水先生 
    1000回おめでとうございます。
    毎日先生の投稿楽しみに拝読させていただいております。
    投稿を読み始めてから仕事に取り掛かっております。

    家内が統合失調症とパーキンソン病(薬剤性かもしれませんが)を長年患っており、毎日16mgの鉄と100mgのナイアシンを服用させております。家内だけに飲ますのはまずいと思い、私も一緒に服用しております。効いているのか効いていないのかわかりませんが、副作用は今のところでておらず、家内の調子もよいです。食事はスーパー糖質制限にしているので、こちらの方が効果があるのだとおもいます。

    人間の身体はまだまだ未知なところがあるので、何事も慎重考えに勉強をしながら対応をしなければいけないと思っており、先生の投稿は医療を考える上で大変参考になっております。

    1. Crazy Japaneseさん、コメントありがとうございます。

      奥様の状態が落ち着いていて良かったですね。治療として行うものと、健康維持は別物ですからね。
      私の記事が少しでもお役に立てているのならうれしいです。

  5. 1000回おめでとうございます!

    三石先生は1997年に亡くなられています。つまり、ほとんどの書籍は30年ぐらい前に書かれたものです。新聞のコラムや、一般人向けに書かれた内容のものが多く、お医者様からみれば説明などが物足りなく感じられるかもしれません。
    擁護はいらないと言われそうですが、糖質の事など、今ではわかっている事が、30年前にはわかっていなかった事も多いと思います。
    科学も医学も新しい発見があるたびに過去の理論を上書きしてきました。三石理論についても新しくわかった事は上書きして使って行けば良いのではないでしょうか。

    サノレックスやばそうですね。
    しかし、薬で簡単に痩せたいと思っている人はたくさんいるでしょう。そういう人はだいたい糖質中毒で、甘いものや炭水化物が大好きでやめられない人。そういう人が食欲がなくなって何を食べるのか?ケーキやお菓子だらけだったら??
    でも、この薬は売れそうですね。。。

  6. 1000回おめでとうございます!

    いつも勉強させて頂いています。ありがとうございます!

    私も三石先生の書かれた本を読みましたが「からだの中から健康になる長寿の秘密」という本のなかに

    ダイエットには高タンパク食が必要、そして脂肪の材料になる糖質の制限を行うことにすればいい

    と書いてあります。

    ダイエットについてですが、分かっている人には分かっていることだったのだなあ、と自分がいかに何も考えずに生きてきたのか、と感じさせられました。

    他にも面白い仮説なども書いてあり、楽しい本でした。

    何事も、「99.9%は仮説」(という本を読みました 笑)、と思うようにして、すべてを鵜呑みにしないよう心掛けたいですね。

    先生のブログを読むのは日課になっているので、ゆっくりペースでも良いので続けて頂けると嬉しいです。

    応援しています(*^^*)
    (マラソンの方も)

    1. ミホさん、コメントありがとうございます。

      その本には糖質制限を勧める記述があるのですね?しかし、私の持っている本には「朝はブドウ糖を十分に含んだ食品を食べなければいけない」と書かれています。
      仮説が定まっていなかったのかもしれませんね?
      なんでも鵜呑みにしないことが大切だと、私も思います。私の記事も鵜呑みにしないでくださいね。(笑)

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