アメリカでは2004年から2014年の間に、エナジードリンクに関連する34人の死亡が米国食品医薬品局(FDA)に報告されました。心停止、心筋梗塞、心房細動、および心臓発作です。2007年と比較して2011年ではエナジードリンクに関連した救急外来受診が倍増しているそうです。
今回の研究では、18歳から40歳までの健康なボランティアで行われました。2種類のエナジードリンクとプラセボドリンク(16オンス、約500ml)をそれぞれ飲んで分析しました。(図は原文より)
上の図は収縮期血圧の変化です。プラセボと比較して2つのエナジードリンクは有意に血圧を上昇させました。非常に面白いことに、60分値ではプラセボでもやや血圧が上昇して、血圧の推移はエナジードリンクと似ています。恐らく、血圧変化の一部はプラセボ効果とも考えられます。
上の図はQT時間の変化です。QT時間というのは心電図上でQ波とT波というのがあって、その間隔を示します。このQT時間が延長すると、生命に危険のある心室性不整脈が起きるリスクが高くなります。このQT時間がプラセボと比較してエナジードリンクでは延長しています。しかも、それは4時間後でも続いてしまっています。ただ、ここでも面白いことに、プラセボでも60分後のQT時間が延長してしまっています。しかし、それは持続せず、ベースライン前後に戻っています。
上の図は平均した最大の変化を示しています。血圧はもちろん、QT時間の延長はプラセボと比較して、有意に増加しています。
血圧の変化では、若い健康な人に有害作用を示すほどのものではありません。しかし、QT時間延長は生命に危険のある不整脈の原因になり得ます。
さらに、エナジードリンクは血小板凝集を増加させ、血管内皮機能を低下させます。(下の図の原文はここ)
上の図は22歳前後の健康な人による研究です。250mlのエナジードリンクとプラセボを飲んだときの血小板凝集反応の1時間後の変化です。プラセボのコントロール群では何も変化がありませんが、エナジードリンクでは大きく血小板凝集が亢進しています。血小板凝集が亢進すると血管が詰まりやすくなります。
上の図は血管内皮機能を表すRHI(反応性充血指数) の1時間後の変化です。エナジードリンクでは有意に低下しています。つまり血管内皮機能の低下が起きているのです。
さらにレッドブルを名指しした次の研究では、脳血流の変化を示しています。(その論文はここ)
上の図にcとdは無視して、aとbを見てみましょう。aは脳の血流速度、bは脳の血管抵抗です。○はレッドブル、●は水です。レッドブルのは有意に脳血流の低下を示し、脳の血管抵抗を増加させています。
よく受験勉強やテスト前に、エナジードリンクを飲んでいる若者がいると思いますが、エナジードリンクは逆に脳血流を低下させマイナス効果をもたらすかもしれません。
エナジードリンクが心臓などに与える影響のメカニズムは不明です。よくカフェインが問題とされますが、カフェインだけではQT時間が延長するという根拠は非常に乏しく、血小板凝集が亢進することや血管内皮機能の低下を示すことも認められていません。逆にカフェインを多く含むコーヒーの有益な効果は多数報告されています。
恐らくはエナジードリンクに含まれる成分の組み合わせが有害性を示していると考えられます。
今年にはコカ・コーラがエナジードリンク(コカコーラエナジー)に参入しました。それによりさらに若者たちが容易にエナジードリンクを摂取する機会が増加する可能性があります。
以前の記事「エナジードリンクはジュースではない!ドラッグへと繋がるかも?」の前半ではカフェインばかり注目してしまいましたが、かなり以前の記事なのでご了承ください。ただ、若者たちはエナジードリンクとアルコールを同時に使ってしまうケースもあります。ドラッグへつながる可能性も高くなります。非常に有害性を持つエネジードリンクを規制すべきだと思います。少なくともアルコールと同様に未成年への販売は禁止すべきです。
「Impact of High Volume Energy Drink Consumption on Electrocardiographic and Blood Pressure Parameters: A Randomized Trial」
「心電図と血圧パラメータに及ぼす大量エナジードリンク摂取の影響:無作為化試験」(原文はここ)