世にも恐ろしい赤ちゃんの鉄ましまし人体実験 その1

鉄欠乏は世界中で問題になっていることは確かです。特に成長段階では鉄が十分に必要かもしれません。しかし、私たちは鉄の機能、役割、代謝について全て知っているわけではありません。その中で、ものすごく恐ろしい人体実験が行われました。この人体実験は遥か昔のものではなく、2000年以降のものです。

現在日本では6~11か月の赤ちゃんでは、男児で1日5mg、女児で1日4.5mgです。6か月であれば体重は個人差がありますが6~8kg程度でしょうか。1~2歳で上限が男児25mg、女児20mgとしています。1歳の赤ちゃんは8~10kgでしょうか。そう考えると1日1mg/kgの鉄の摂取量はそれほど大量ではないと思えます。

今回の人体実験では赤ちゃんに4~9か月の間、1日に1mg/kgの鉄が与えられました。スウェーデンとホンジュラスで行われました。ホンジュラスの方が鉄不足が一般的な国です。そうしたところ、鉄補充により、鉄の状態はホンジュラスの赤ちゃんでは増加し、スウェーデンの幼児では増加しませんでした。(図はその2の論文より)

上の図は左がスウェーデン、右がホンジュラスのものです。それぞれの国の左がプラセボ、右が鉄投与群です。そうすると、プラセボを投与した赤ちゃんと比較して、鉄を投与したスウェーデンの赤ちゃんでは身長の成長が有意に減少しました。ホンジュラスでは有意ではありませんでしたが、スウェーデンでは有意な変化でした。頭囲の増加も鉄投与群で低下しました。

ホンジュラス全体では有意差が無かったのですが、ベースラインでHbが11以上であった赤ちゃんでは鉄の投与により身長の増加が減少していたのです。

さらに、Hb11以上の赤ちゃんに対する鉄の投与は下痢のエピソードを増加させました。鉄の増加は腸内細菌叢を乱す可能性がありますからね。

つまり、鉄欠乏に対しては鉄の投与は有効かもしれませんが、貧血の認められない(Hb11以上)の赤ちゃんには非常に有害な作用をもたらす可能性があるのです。投与された赤ちゃんは悲惨ですね。恐ろしい人体実験です。

赤ちゃんにとっても鉄の安全域は非常に狭いと考えられます。

さらに他の研究もあります。鉄ましましミルクを与えた赤ちゃん人体実験は次回以降の記事で。

「Iron Supplementation Affects Growth and Morbidity of Breast-Fed Infants: Results of a Randomized Trial in Sweden and Honduras」

「鉄補給は母乳栄養乳児の成長と罹患率に影響する:スウェーデンとホンジュラスにおける無作為化試験の結果」(原文はここ

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