私は非常に早食いです。子供の頃はどうだったかは記憶にありませんが、仕事し始めてからのことを考えるとものすごく早食いです。もちろん、よく噛んだ方が良いとは思っていますが、職業柄、日によってはゆっくり昼食を食べる時間がなく、ときに1~2分で昼食をかきこむこともよくありました。たぶんもともとも早かったのだとは思いますが、早食いが身に付いてしまい、変えようにも変えられません。
今回の福島医科大学の研究では、その早食いが日本人の糖尿病発症の最も危険な因子だと述べています。本質から一般の人の目をそらすための、非常に「素晴らしい」研究です。
さて、今回の研究では様々は質問をしていて、その中で食事の速度について、「同じ年齢の他の人と比べてどれくらい速く食べますか?(速い、普通、遅い)」と聞いています。この質問で速い、と答えた人が早食いの人の群に分けられています。ものすごく曖昧な分類です。まあ、私のように早食いの自覚がある人もいれば、ない人もいるでしょう。
その結果は次のようです。(図は原文より、表は原文より改変)
早食い | 非早食い(普通とゆっくり) | P値* | |
---|---|---|---|
年齢 | 61.6(8.5) | 64.1(7.6) | <0.01 |
男性の割合 | 41.6% | 36.8% | <0.01 |
BMI | 24.2(3.3) | 22.5(3.0) | <0.01 |
胴囲 | 85.5(9.1) | 82.5(8.7) | <0.01 |
収縮期血圧 | 129.1(17.5) | 128.5(17.4) | |
拡張期血圧 | 76.9(10.9) | 76.1(10.6) | <0.01 |
空腹時血糖 | 94.2(12.1) | 92.9(10.3) | <0.01 |
HbA1c | 5.59(0.33) | 5.58(0.33) | <0.01 |
HDLコレステロール | 61.3(15.7) | 63.7(16.2) | <0.01 |
LDLコレステロール | 127.2(30.0) | 126.4(30.0) | 0.05 |
トリグリセリド | 117.0(72.6) | 109.1(67.0) | <0.01 |
AST | 23.0(9.4) | 23.9(9.2) | 0.05 |
ALT | 22.2(13.6) | 20.6(11.7) | <0.01 |
ɤGTP | 34.8(40.2) | 33.3(40.0) | <0.01 |
高血圧 % | 44.2 | 41.7 | <0.01 |
脂質異常症 % | 56.4 | 52.6 | <0.01 |
現在の喫煙者 % | 13.9 | 12.4 | <0.01 |
夕食後の間食 | 18.3 | 13.9 | <0.01 |
寝る前に間食 | 16.9 | 10.8 | <0.01 |
朝食抜き | 10.2 | 7.3 | <0.01 |
定期飲酒 | |||
毎日 % | 22.8 | 21.9 | <0.01 |
時々 % | 23.1 | 22.3 | |
まれに、またはまったく % | 54.1 | 55.8 | |
1日あたりのアルコール摂取量 | |||
20 g未満 % | 62.6 | 66.4 | <0.01 |
20 g~40 g未満 % | 24.6 | 23.8 | |
40 g~60 g未満 % | 9.3 | 7.7 | |
60 g以上 % | 3.4 | 2.0 | |
定期的な運動 | |||
軽く椅子に座る運動 % | 42.4 | 42.2 | 0.20 |
1時間/日以上のウォーキング % | 52.6 | 52.4 | <0.01 |
体重変化 | |||
20歳からの体重10kg以上の増加 % | 40.8 | 27.7 | <0.01 |
1年以内の体重変化±3 kg % | 26.9 | 17.5 | <0.01 |
上の表は早食いとそうでない人のベースラインの違いです。ほとんどの項目に違いがあり、早食いの方が悪い結果です。特に間食をしている人の割合が高いのが私は非常に気になります。そして、早食いの人は20歳から10㎏以上太っている人が4割を占めています。若いころから糖質過剰摂取で、頻繁な食事回数で、しかも大きく体重増加もあれば、糖尿病を発症してもおかしくないでしょう。
上の図は様々な因子で調整したオッズ比です。どのモデルを見ても確かに自己申告の早食いというのは有意に新規に糖尿病を発症する可能性が高いという結果です。しかし、ほんのわずかです。
確かに同じ食事であれば、糖質過剰摂取なので、非常にゆっくり食べる人と比べたら、早食いの人の方が血糖値スパイクは起きやすいかもしれません。以前の研究では、職場でのストレスが早食いをする可能性を高めることが報告されています。仕事のストレスは、多くの場合、早食いして満腹のポイントを超えて食べる、いわゆる過食を招くというものです。それにより、肥満そして糖尿病に繋がると考えているのです。本当でしょうか? これも糖質過剰摂取でという条件であれば、食べ過ぎが肥満を招きますし、それにより糖尿病も起きやすいでしょう。
しかし、本質は食後高血糖や高インスリン血症が問題のはずです。朝食を抜くことや早食いに目を向けさせることで、その本質から目をそらせることが目的の研究と思えてなりません。
糖質制限を始めた私は、以前と変わらず早食いです。しかし、どんどん痩せていきました。様々な検査データは改善していきました。お腹がはち切れんばかりに食べることもあっても、体重は増えません。糖尿病は糖質過剰症候群の代表的な疾患です。糖質を摂らなければ糖尿病にならないのです。
日本の糖尿病の専門家たちはまだ糖質制限から目をそらし続けるのでしょうか?
「Fast eating is a strong risk factor for new-onset diabetes among the Japanese general population」
「早食いは、日本の一般人口の間で新たに発症する糖尿病の強力な危険因子である」(原文はここ)
清水先生いつもありがとうございます。
記事の内容とは違っていて恐縮です。
https://webronza.asahi.com/science/articles/2019071500005.html
この記事の内容は人類の進化の過程で大変興味深いと思い、送信いたしました。
ジェームズ中野さん、情報ありがとうございます。
後でゆっくり読んでみます。
お世話になります。
改めて久山町研究のサイトを見てみました。
http://www.hisayama.med.kyushu-u.ac.jp/column/index.html
久山町研究は信頼度の高い疫学研究だと思っておりますが、このコラムでは、糖質摂取の推移(減少している)では糖代謝異常の増加が説明できないとして、動物性脂肪の摂取増加が糖尿病の増加であると結論付けています。
糖質では説明がつかないと言うことを糖質制限実践する糖尿病患者としてどう解釈すればよいのでしょうか。健康な人の食事としてはそのような結果であり、すでに糖尿病なら糖質制限すべきと考えるべきでしょうか。
また、糖質制限で必然的に動物性脂質の摂取が増えていることをどう考えればよいのでしょうか。
–以下抜粋–
糖尿病が久山町を含め全国レベルで増えている理由として、いくつかの要因が指摘されています。
国民レベルで肥満が増加し、運動量が減少していることがその大きな要因であることは疑いのない事実です。
また、食事内容の変化も糖尿病増加に関与していると考えられます。
久山町では、1日の総エネルギー摂取量は時代とともに減少し、総エネルギー摂取量に占める炭水化物(糖質)の割合(炭水化物エネルギー比)は、1965年の68.6%から1994年の54.2%へと着実に減少しましたが、2004年では57.2%にやや上昇していました(図7)8)。
同様の傾向は国民健康・栄養調査の成績でも認められます。
すなわち、久山町住民の糖質摂取状況は全国調査の成績と同じように推移しているといえます。
この糖質の摂取量の時代的推移で、わが国の糖尿病を含む糖代謝異常の増加は説明できません。
一方、脂質エネルギー比は1965年の15.6%から1994年の26.2%にかけて大幅に増加し、その後2004年には24.5%とやや減少傾向に転じています。
しかし、この間、総脂質摂取量に占める動物性脂質量の割合(動物性脂質比)は1965年の29.9%から2004年の47.5%まで一貫して増加しています。
国民健康・栄養調査の成績でも同様の傾向が認められます。
2000年代になっても久山町のみならず日本全国で動物性脂質比は増加傾向にあるといえます。
これまでの研究から、総脂質摂取量の増加や動物性脂質の過剰摂取は糖尿病発症の危険因子であることが明らかとなっています9,10)。
このように、久山町のみならずわが国では、食生活の欧米化、特に動物性脂質の摂取量の増加が糖尿病の増加につながった可能性が高いと考えられます。
西村典彦さん、コメントありがとうございます。
この記事の内容で言えば、炭水化物の摂取量を単純に見ているだけです。
60%も50%も糖質過剰摂取に変わりありません。しかも、糖質の「質」が変わってきております。
1960年代の糖質の多さは、主に米というでんぷん質であり、現在は果糖の割合がものすごく増加していると思われます。
私はこの果糖の増加が最も原因になっているのではないかと思います。
また、1960年代より現在の方が、ペットボトルやスナック菓子などの充実により、糖質摂取回数の増加も起因していると思います。
さらにこの栄養素の摂取割合はペットボトルや間食は本当に含まれているのでしょうか?よくわかりません。
そんな糖質過剰摂取で糖質頻回摂取であれば、脂質は本来の働きができません。
だから、見た目には脂質の増加と糖尿病の増加がリンクしているように見えるのだと、私は思います。
いつも充実した内容でとても勉強になります。わたくしもドクターが書かれている 間食や飲み物の糖質摂取量が研究に反映されているのかどうか疑問に思っています。わたくし(当年58)が子供の頃は、ケーキと言えば父母の知人とか親戚が訪ねてきた時やお誕生日くらいにしか食べることはありませんでしたし、甘い飲み物も今のようにペットボトルで売っている時代ではありませんでした。
わたくしはコンビニでも仕事をしておりますが、コンビニももちろんスーパーへ行ってもほとんどが糖質過剰の飲食物、我々の子供の頃には考えられなかった量の糖質過剰の飲食物であふれており、それを子供連れ孫連れのお客さんたちが、欲しいものを考えもなく買っていきます。それは大人だけでも変わりありません。お弁当、おにぎり、総菜パンにポテトチップスやスイーツを一緒に買っていく人のなんと多いことか。
本当にこういう現状を現代の研究は反映しているのかと尋ねたくなります。
人間ドッグや健康診断での食生活の調査ではおそらくほとんどの方が現状を正確に書いていることはないように想像しているのですが。
いずれにしても早食いや朝食抜きが糖尿病発症の原因ならば、スマホを見て食事をしたり、立ち飲み立ち食いで食べる人が増えれば、それも糖尿病発症の原因になってもおかしくありませんね。夏井先生の書かれている疑似相関です。
齊藤克弘さん、コメントありがとうございます。
仰る通りだと思います。糖尿病は糖質過剰摂取によって起こることをどうしても認めたくない人たちがいます。
その考えを持つ医師の犠牲になっている人たちは非常に多いと思います。残念です。