「その1」の続きです。
双極性障害は糖質過剰症候群だと考えています。今回は糖質過剰摂取で起こるインスリン抵抗性や糖尿病での脳の変化と双極性障害との関連を見てみましょう。
インスリン抵抗性は双極性障害患者の半数以上に認められ、予後不良と関連しています。
双極性障害とインスリン抵抗性を有する患者6人の症例シリーズの健康記録をレビューしました。(ここ参照、図もここより)生涯にわたる情動エピソード(躁病と抑うつの両方)の重症度と期間をAffective Morbidity Index(AMI)を使用して記録しました。以前は情動エピソードがそれほどでもなかった6人すべての患者が、下の図のように、検査で実証されたインスリン抵抗性の発症後に病状の悪化を経験しました。
上の図は下向きの印がうつ状態、上向きの印は躁状態です。赤い線は最初に耐糖能障害やインスリン抵抗性がわかったポイントです。そのポイント前後から急に病状が悪化しているのがわかります。AMIで測定した病状悪化は3倍から18倍以上に及び、平均で12倍に増加しました。糖質過剰摂取によって脳のインスリン抵抗性が進行し、徐々に症状が現れ、全身性の代謝障害が顕著になるころには、脳が大きな影響を受けて病状が一気に悪化してしまうのでしょう。
糖代謝異常は最初のエピソードの早い段階で見られることがあるとも言われています。
大規模な双極性障害の画像検査の研究(ここ参照)によると、平均して、双極性障害の患者は健常対照者と比較して両側性に脳室容積が高く、海馬、扁桃体、視床容積が低くなっていました。さらに、双極性障害では前帯状皮質、傍帯状皮質、上側頭回、前頭前野の皮質厚が低いことが報告されています。白質の完全性の変化なども認められます。
2型糖尿病およびインスリン抵抗性では様々な脳の部位の皮質厚が減少しているし、海馬や扁桃体も萎縮しています。(ここやここ参照)
つまり糖尿病やインスリン抵抗性の脳と双極性の脳は類似点が非常に多いのです。
双極性障害にインスリン抵抗性が大きく関連しているとしたら、インスリン抵抗性を改善する薬であるメトホルミンは双極性障害も改善するのでしょうか?
ある研究(ここ参照)では、45人のインスリン抵抗性があり、治療抵抗性の双極性障害患者に対し、メトホルミン2,000 mg/日またはプラセボを26週間投与されました。14週目以降、11人(メトホルミン群10人、プラセボ群1人)がインスリン抵抗性基準を満たさなくなりました。インスリン抵抗性が改善した人では、様々な症状の評価スコアが有意に改善しました。
もちろん、薬によるインスリン抵抗性治療は、根本的な治療ではありません。根本原因である糖質過剰摂取を止めることが根本的な治療です。
現代医学の精神疾患の中で、本来の精神疾患はごく一部でしょう。多く食事の間違いによる代謝障害、そのほとんどは糖質過剰摂取による糖質過剰症候群でしょう。糖質過剰摂取により脳のどの部分が最も影響を受けるか、または影響を受ける部位のバランスにより、ある人では双極性障害になり、ある人では統合失調症になり、ある人ではうつ病になり、ある人では認知症になると思われます。
進化の過程では、恐らく脳はブドウ糖に飢えていました。そこでできる限り糖を脳に送るように進化し、脳もどんどん糖を受け入れるように進化したでしょう。それが現代のように、糖質過剰摂取により体中に糖が溢れ、過剰なブドウ糖が脳に押し寄せることになり、脳はインスリン抵抗性となって糖をうまく処理できないようになり、脳の様々な部位が萎縮してしまい、様々な精神疾患が現れるようになったのだと思います。
精神疾患を精神の病気と捉えている限りは、薬などの治療がメインになってしまいます。しかし、代謝疾患と捉えれば、治療のメインは食事です。精神科の薬だけで治療していれば、背後のインスリン抵抗性などの代謝障害は改善しませんので、ずっと薬が必要になってしまうかもしれません。
体の異常、不調だけでなく、精神的な異常や不調を感じたら、すぐに食事を改善すべきでしょう。
「Insulin resistance takes center stage: a new paradigm in the progression of bipolar disorder」
「インスリン抵抗性が中心となる:双極性障害の進行における新たなパラダイム」(原文はここ)