糖質過剰摂取では中性脂肪値が上昇します。さらに尿酸値も上昇します。糖質で中性脂肪値は食後にも中性脂肪の大きな増加(TGスパイク)が起きます。そうすると、空腹時および非空腹時の中性脂肪値の上昇は高尿酸血症の発症と関連があるでしょう。
今回の研究では、一般日本人集団における空腹時および非空腹時中性脂肪値が新規発症高尿酸血症(HUA)に及ぼす影響を調べています。2008年から2019年までのベースラインでHUAを発症していなかった5,576人(平均年齢は60.5歳、男性41.9%)が対象です。ベースラインの中性脂肪値別に3群に分けました。グループ1(男性83mg/dL未満、女性77mg/dL未満)、グループ2(男性83~129mg/dL、女性77~114mg/dL)、グループ3(男性130mg/dL以上、女性115mg/dL以上)に分類しています。5.4年間の追跡期間中、552人の男性と146人の女性の参加者が新たにHUAを発症しました。空腹時は最後の食事から10時間以上経過した場合と定義されています。
下の表は男性と女性の中性脂肪値による3グループ別の新規高尿酸血症発症リスクです。(表は原文より改変)
男 | 女性 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
グループ 1 | グループ 2 | グループ 3 | グループ 1 | グループ 2 | グループ 3 | |
調整ハザード比(95% CI) | 1 | 1.30 (1.02–1.66) | 1.81 (1.42–2.30) | 1 | 1.66 (0.96–2.89) | 2.51 (1.48–4.28) |
男性では中性脂肪が83を超えるとすでに高尿酸血症のリスクが上がってしまいます。女性ではグループ2では有意差はありませんでした。しかし、男性も女性も一般的な正常値上限である150mg/dLを下回っていても、高尿酸血症のリスクは上がります。
中性脂肪測定時の状態(空腹時 対 非空腹時)別に検討したところ、空腹時だった男性(1,528例)の高尿酸血症発症リスクは、グループ2が1.28(95%CI 0.96~1.71)、グループ3が1.88(95%CI1.42~2.49)、非空腹時だった男性(598例)ではそれぞれ1.11(95%CI0.71~1.73)、1.46(95%CI0.94~2.24)、女性では空腹時(2,241例)の高尿酸血症発症リスクは、それぞれ1.77(95%CI0.96~3.29)、2.56(95%CI1.40~4.68)、非空腹時(715例)が1.44(95%CI0.42~4.96)、2.60(95%CI0.88~7.65)といずれの場合も高尿酸血症発症に及ぼす影響に明確な差は見られませんでした。(有意差がない場合もありますが)
空腹時であれ非空腹時であれ、中性脂肪の上昇は高尿酸血症と関連しています。根本原因が同じなので当たり前ですが。
そして、非空腹時でも中性脂肪の上昇は様々なリスクと関連しています。(「非空腹時の中性脂肪値と心血管イベントのリスク」「非空腹時の中性脂肪値とLDLコレステロール値と心不全リスク」「非空腹時中性脂肪と虚血性脳卒中のリスク」「中性脂肪と心血管疾患」「食後の中性脂肪スパイクとsdLDLの関連」など参照)
私個人の人体実験では卵を10個(脂質60g)一気に食べても中性脂肪値はスパイクはほとんどしません。(「大量のコレステロールを摂るとどうなるか? その1」参照)中性脂肪が100を超えたのは1時間後のみでした。
糖質以外で中性脂肪に大きな影響を与えるのはアルコールです。(「糖質制限をしても中性脂肪値が低下しない原因の一つはアルコールである」参照)飲酒後12時間後でも中性脂肪値はものすごい値を示す場合もあります。
血液検査で空腹時の中性脂肪値を測定したいのであれば、前日のアルコールはやめて、最低でも12時間の絶食をすべきでしょう。逆に食事から6時間程度後の非空腹時の中性脂肪値を知っておくのもいいかもしれません。
「Non-fasting and fasting serum triglyceride concentrations and new-onset hyperuricemia in the general Japanese population: ISSA-CKD study」
「一般日本人集団における非絶食時および絶食時の血清トリグリセリド濃度と新規発症高尿酸血症:ISSA-CKD研究」(原文はここ)