血中のオメガ6/オメガ3脂肪酸の比率が高いほど、全死因死亡、がん死亡、心血管疾患死亡のリスクが高まる?

必須脂肪酸でありながら、多価不飽和脂肪酸のオメガ6は悪で、オメガ3は善という構図が出来上がっているような気がします。現代ではオメガ6摂取量が多すぎて、様々な疾患リスクが上がっていると言われています。そして、その対極にあるオメガ3をたくさん摂れば健康に有益であるとされています。

そして、血中のオメガ6/オメガ3脂肪酸の比率が高いと、健康に有害であるという考え方があります。本当でしょうか?

今回の研究では、イギリスのバイオバンクにおいて、血中のオメガ3およびオメガ6多価不飽和脂肪酸(PUFA)とその比率と、全原因死亡率および死因別死亡率との関連を調査しました。対象となる85,425人のうち、追跡期間中に6,461人が死亡しました。そのうち2,794人ががん、1,668人が心血管疾患によるものでした。オメガ6 /オメガ3比、オメガ3、オメガ6の中央値は9.1、4.2%、38.2%です。

その結果は、オメガ6/オメガ3比の増加に伴い、3つの死亡リスク全てが増加しました。オメガ6/オメガ3比の値により5つのグループ(それぞれのグループの比率の中央値は5.9、7.6、9.1、11.0、14.8)に分けたとき、最高群と最低群を比較すると、全原因死亡率は26%、がん死亡率は14%、心血管死亡率は31%高くなりました。(図は原文より)

上の図は、オメガ6/オメガ3比と全原因死亡率、がん死亡率、心血管死亡率との関連を示しています。でも、最も比率が高いグループの中央値でさえ14.8なので、オメガ6/オメガ3比が30とか40なんて意味がありません。20くらいでも全原因死亡と心血管死亡のリスクが少し上がっているだけですね。がんの死亡はほとんど有意差なしですね。

さて、よく「オメガ3とオメガ6の理想的な比率は、オメガ6とオメガ3が2:1と言われています。しかし、現在、日本人のオメガ6とオメガ3の比率は、10:1にもなっていると言われています。」などとネットの記事などに書かれています。上の図からするとオメガ6/オメガ3比が10のところでは、全原因死亡率、がん死亡率、心血管死亡率のリスク増加はありません。

日本人の研究で、JPHC研究参加者の1,213人(平均年齢72.9歳)の脂肪酸を調べた研究(ここ参照)では、日本人のオメガ6 /オメガ3比、オメガ3、オメガ6の平均値は2.7、11.5%、29%でした。オメガ6とオメガ3比は、よく言われている、10:1という比率よりも、理想的な比率の2:1に近いですね。イギリスの今回の研究のオメガ6 /オメガ3比、オメガ3、オメガ6の中央値が9.1、4.2%、38.2%であるのとかなりの違いです。そうすると、この上の研究は全く日本人とはかけ離れた研究なのかもしれません。

さらにこの研究には疑問があります。血中のオメガ6およびオメガ3は、全原因死亡率、がん死亡率、心血管死亡率と逆相関しているのです。(下の図はこの研究のデータから私が作成しました)

上の図のように、オメガ3もオメガ6も割合が増加すると、全原因死亡が低下するのです。この関係はがん死亡率、心血管死亡率でも同様でした。この関連は、オメガ3のDHAの割合およびオメガ6のリノール酸の割合で見ても同様でした。そして、オメガ3とオメガ6をまとめると、次の図になります。(3Dなので非常にわかりにくいですが)

全体的には、オメガ3の割合が増加すると、死亡リスクが低下しているには一貫しているようですが、オメガ6に関してはちょっと凸凹しています。でも、これを見ると、本当にオメガ6/オメガ3比って重要なの?と思ってしまいます。オメガ3もオメガ6も最も低いグループの中央値で計算すると、オメガ6/オメガ3比は12.2です。これを1とすると、オメガ3が最も少なく、オメガ6が最も多いグループのオメガ6/オメガ3比は15.6ですが、リスクは0.73倍です。オメガ3が最も多く、オメガ6が最も少ないグループのオメガ6/オメガ3比は5.2ですが、リスクは0.68倍で、オメガ3が最も少なく、オメガ6が最も多いグループとそれほどの違いがありません。

つまり、オメガ6/オメガ3比は本当はそれほど重要なものではない気がします。オメガ6を悪者にして、オメガ3が少ないのを補充させるために、エビデンスを作り出したのではないかと思います。

恐らく血中のオメガ3もオメガ6も、酸化した多価不飽和脂肪酸はその血中濃度に含まれていないのではないかと思います。真に有害なのは酸化した不飽和脂肪酸です。オメガ6は摂取量が多い分、酸化したオメガ6も多いでしょう。でも酸化していない不飽和脂肪酸を摂取する分には、それがオメガ6でも問題ないと思いますし、体内での酸化ストレスの大きさにも関係があると思うので、摂取量が問題でもないかもしれません。オメガ3でも、サプリの中のオメガ3は非常に高い割合で酸化しています。(「オメガ3サプリメントの品質は怪しい」参照)酸化したオメガ3は、いくらオメガ3でも有害でしょう。

植物油が有害なのは、製品を製造する過程で、すでに脂肪酸が酸化していたり、加熱により酸化しやすく、ヒドロキシノネナールなどが大量にできてしまうからでしょう。

新鮮な不飽和脂肪酸を摂取して、体の中の酸化ストレスを増やさないことが最も重要でしょう。

「Higher ratio of plasma omega-6/omega-3 fatty acids is associated with greater risk of all-cause, cancer, and cardiovascular mortality: A population-based cohort study in UK Biobank」

「血漿中のオメガ6/オメガ3脂肪酸の比率が高いほど、全死因死亡、癌死亡、心血管疾患死亡のリスクが高まる:英国バイオバンクの人口ベースのコホート研究」(原文はここ

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