男性型脱毛症(AGA)および前立腺肥大の薬フィナステリドの副作用 その1 自殺および心理的有害事象

男性型脱毛(AGA)で悩んでいる人も多いでしょう。ネットでのオンラインで、簡単に薬が処方されているのが現状でしょう。その処方される薬の一つにフィナステリドという薬があります。このフィナステリドの副作用は深刻です。

今回の研究では、世界保健機関(WHO)の安全性報告の国際データベースであるVigiBaseを用いて、フィナステリド使用と自殺傾向(自殺念慮、自殺企図、自殺既遂)および心理的有害事象(うつ病および/または不安)との関連性を調査しました。

フィナステリド使用に関連する自殺傾向症例356件と心理的有害事象2926件を特定し、合計3282件となりました。報告オッズ比 (ROR)は次のようです。(表は原文より改変)

有害事象ROR(95%信頼区間)
自殺傾向1.63 (1.47-1.81)
自殺念慮4.39 (3.90-4.95)
自殺未遂
自殺未遂
心理的4.33 (4.17-4.49)

自殺未遂または自殺既遂についてはRORによるシグナルは確認されませんでした。自殺傾向は1.63倍、自殺念慮は4.39倍、心理的有害事象は4.33倍でした。

フィナステリド投与量別の自殺傾向のRORは次のようでした。

用量ROR(95%信頼区間)
1mg1.64 (1.41-1.91)
5mg
未知1.97 (1.68-2.30)

5mgではシグナルはなく、1mgで自殺傾向のRORは1.64倍でした。

また、適応症および年齢別の分析では、自殺に関する有意な不均衡シグナルは、若年患者でROR3.47倍、脱毛症患者でROR2.06倍でした。一方、高齢患者および前立腺肥大症患者においてはシグナルは認められませんでした。

もう一つ、アメリカ食品医薬品局(FDA)の有害事象報告システム(FAERS)のデータを用いた研究を見てみましょう。いわゆるポストフィナステリド症候群(PFS)(次回以降で取り上げます)

PFSが「正式に」認識される開始の1年前までの 6 年間(2006 年〜 2011 年)、PFS認識後の6年間「PFS 後第 1 時代(2013 年〜 2018 年)」、PFS が認識されてから7年後の5年間「PFS 後第 2 時代(2019 年〜 2023 年)」に関して、5つの有害事象(AE)「自殺既遂」、「自殺傾向にあるうつ病」、「自殺行為」、「自殺念慮」、「自殺未遂」を調査しています。今回もシグナルは報告オッズ比(ROR)です。

2006年から2011年にかけて、経口フィナステリド投与群では、5つの有害事象のいずれにおいても有意な有害事象のシグナルは検出されませんでした。まさか、この薬でこのような有害事象が起きるとはみんな思わなかったのかもしれません。しかし、PFSが認識された後はどうなったでしょうか?(表は原文より改変)

有害事象2013~2018年2013~2018年(1 mg)2013~2018年(5 mg)
RORRORROR
自殺未遂0.963.9630.733
うつ病自殺願望4.61417.8492.163
自殺行為1.2470.543
自殺念慮2.8273.6281.847
自殺未遂0.6630.9550.216
上の表は、2013年から2018年までのPFSの公表後の経口フィナステリドの使用と心理的影響との関連性です。うつ病の自殺願望のRORはフィナステリド全体で4.614倍、1mgだけを見ると17.849倍にもなりました。また、1mg群では自殺未遂3.963倍、自殺念慮3.628倍でした。
有害事象2019~2023年(含む)2019~2023年(1 mg)2019~2023年(5 mg)
RORRORROR
自殺未遂1.7058.9672.354
うつ病自殺願望8.80649.5673.368
自殺行為3.2256.6251.212
自殺念慮4.9569.8932.37
自殺未遂0.7091.6220.841

上の表は、2019年から2023年までの経口フィナステリドの使用と心理的影響との関連性です。うつ病の自殺願望のRORはフィナステリド全体で8.806倍、1mgだけを見るとなんと49.567倍にもなりました。1mgは他にも、自殺未遂8.967倍、自殺行為6.625倍、自殺念慮9.893倍のシグナルが出ていました。

毛を失わなくなったとしても、命や健康な心を失ってしまうかもしれません。

人間の本来のメカニズム、初期設定を変更したり、停止したり、無理に促進したり、そのような薬が多すぎます。GLP-1薬と同様に、人間を自殺にまで追い込むような副作用がありながら、平気でビジネスのために薬を処方している医師が増えているのも確かでしょう。自由診療であればさらに、医師の責任が軽くなるとでも思っているのでしょうか?医療がコンプレックス産業に成り下がってしまっています。

安易に毒物である薬を体に入れてしまうと、取り返しのつかないこともあります。

 

「Investigation of Suicidality and Psychological Adverse Events in Patients Treated With Finasteride」

「フィナステリド治療を受けた患者における自殺傾向および心理的有害事象の調査」(原文はここ

「Finasteride Use: Evaluation of Depression and Suicide Risk」

「フィナステリドの使用:うつ病および自殺リスクの評価」(原文はここ

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