超加工食品の摂取は生殖機能と健康に大きな影響を及ぼす

超加工食品は便利で、すぐに食べられます。味付けもなかなかのものも多いでしょう。しかし、食事はお腹を満たすという目的だけではなく、体を作る為なので、その中身は重要です。

また、いまだに世の中ではカロリー神話を信じている人がいます。カロリーが同じであれば、体重の増減は同じか?そんなことあるわけがありません。

今回の研究では、未加工食品と超加工食品の食事が同一人物に及ぼす健康への影響を比較しました。20歳から35歳までの男性43人を対象に、下の図のようにそれぞれ3週間ずつ2つの食事を行いました。参加者の半数は超加工食品を、残りの半数は非加工食品を摂取する食事から始めました。半数はさらに1日あたり500kcal多い高カロリー食を摂取し、残りの半数は体格、年齢、身体活動レベルに応じた通常のカロリー量を摂取しました。

食事構成は、超加工食品の食事では平均77%のカロリーが超加工食品から、5.5%が未加工食品から、未加工食品の食事では1%のエネルギーが超加工食品から、66%が未加工食品から含まれていました。(図は原文より)

上の図Bは3大栄養素のバランスです。未加工食品と超加工食品で違いはありません。Cは脂質の割合です。超加工食品の方が飽和脂肪酸が多いということを言いたいのでしょう。超加工食品は未加工食品と比較して、飽和脂肪、コレステロール、精製穀物、添加糖、乳製品の含有量が高く、食物繊維の含有量が低くなっていました。

炭水化物の割合が同じでも、その中身は異なります。食物繊維は1000kcalあたり14.5gの差があります。また添加糖は48.5g/1000kcalの差、飲み物の糖は24.5g/1000kcalの差があります。

超加工食品の例は次の写真のようです。

朝食例:フロスティーズシリアル、牛乳、アップル&レモンドリンク、塩味ローストピーナッツ、プロテインバー

昼食例:カウボーイトースト、ミックスキャンディー、チョコレートミルク

間食例:チョコレート&ナッツバー、ラズベリープロテインドリンク

夕食例:照り焼きチキン串、白米と野菜の盛り合わせ、コールスロー、照り焼きソース

他にも、超加工食品群ではハンバーガーやフライドポテトなども提供されています。

結果ですが、まずは面白いことに(当たり前ですが)、同じエネルギー摂取量なのに、体重増加量が異なるということです。

それぞれの図の左側は通常のカロリー量、右側が過剰カロリー摂取です。緑が未加工食品群、黄色が超加工食品群です。図のAは体重の変化です。たった3週間で、超加工食品群と未加工食品群を比較すると、適正カロリー群と過剰カロリー群でそれぞれ1.4kgと1.3kgの体重増加の違いが起こりました。摂取エネルギーが違っても体重変化に差はないばかりか、食べる食事が超加工食品であれば、エネルギーが適正でも過剰でも、未加工食品群よりも体重増加が起きてしまうのです。つまり、エネルギー摂取量は関係なく、食事の質で体重の違いが出るのです。

図のBとCにあるように、体重増加のうち筋肉量には変化がなく、 どちらのカロリー群も約1kgは脂肪でした。増えたのはほとんど脂肪ということです。

コレステロールの変化も示されていますが、総コレステロールなんてどうでもいいし、LDL:HDL比だけではLDLが増加したのか、HDLが低下したのかよくわかりませんので、割愛します。

Fに示すように、拡張期血圧は過剰カロリー群で超加工食品群の方が高くなりました。

IとJに示すように、過剰カロリー群では、超加工食群において、成長分化因子15(GDF-15)レベルが低下し、レプチンのレベルが上昇傾向を示しました。GDF15は脳の摂食中枢に作用して食欲不振を引き起こします。良い面と悪い面があるかもしれませんが、超加工食群でGDF15が低下しているということは、もしかしたら超加工食品がさらなる過食を起こしている可能性があります。

レプチンは食欲抑制ホルモンですが、超加工食群で上昇傾向ということは、もしかしたらレプチン抵抗性が起きている可能性があります。

上の図のように、超加工食品はホルモンにも影響を与えていました。

図のAとBのように、卵胞刺激ホルモン(FSH)が低下 、男性ホルモンのテストステロンが低下を示していました。これらは精子生成に不可欠なホルモンです。実際に、精子の質は低下傾向を示し、過剰カロリー群では精子総運動性が低下しました。精子濃度には有意な変化は認められませんでした。

それ以外にも、下の表のような変化がありました。

Δ 未加工 → 超加工
カロリーレベルベースライン(平均±SD)見積もりp調整済み95%信頼区間
人体計測
重量(kg)適切78.94 ± 9.451.40550.0270.566 ; 2.251
過剰76.57 ± 8.861.27680.0320.467 ; 2.083
脂肪量(kg)適切14.46 ± 4.250.99800.0270.405 ; 1.641
過剰15.75 ± 5.110.95550.0270.377 ; 1.533
除脂肪体重(kg)適切64.05 ± 7.50.22040.829−0.675; 1.107
過剰60.97 ± 7.49−0.3210.679−1.176; 0.533
血圧
収縮期血圧(mmHg)適切123.07 ± 8.320.32310.907−3.023; 3.798
過剰125.28 ± 9.422.28210.344−0.924; 5.486
拡張期血圧(mmHg)適切74.6 ± 6.382.56240.244−0.435; 5.684
過剰75.51 ± 6.854.82860.0271.917 ; 7.730
肝機能
アラニントランスアミナーゼ(U/L)適切22.55 ± 13.9212.75940.1251.609 ; 23.926
過剰20.71 ± 9.63−2.1880.862−12.84; 8.499
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(U/L)適切21.6 ± 8.02−0.6690.906−6.986; 5,648
過剰22.33 ± 5.19−2.4340.669−8.491; 3.624
アルカリホスファターゼ(U/L)適切61.04 ± 16.913.09790.512−2.497; 8,693
過剰55.83 ± 18.53−6.6030.0.099−11.97 ; −1.238
アルブミン(g/L)適切33.28 ± 3.59−0.1250.941−2.738; 2.488
過剰33.54 ± 3.6−3.2090.089−5.715 ; −0.703
膵臓機能
血糖値(mmol/L)適切5.05 ± 0.350.01350.941−0.256; 0.284
過剰5.07 ± 0.35−0.0990.679−0.358; 0.160
HbA1C(ミリモル/モル)適切31.9 ± 2.960.10190.89−0.550; 0.751
過剰32.45 ± 2.4−0.0300.941−0.658; 0.585
インスリン(pmol/L)適切34.24 ± 17.6514.93810.1620.090 ; 29.787
過剰40.64 ± 30.52−14.420.162−28.66 ; −0.184
Cペプチド(pmol/L)適切402.4 ± 124.3124.70580.05238.5 ; 211.87
過剰443.9 ± 169.7−42.940.54−125.6; 40.236
甲状腺機能
T4(nmol/L)適切66.6 ± 11.110.61620.906−4.720; 5.952
過剰65.79 ± 9.12−5.7220.132−10.84 ; −0.604
総T3(nmol/L)適切1.4 ± 0.170.12680.0990.024 ; 0.233
過剰1.5 ± 0.2−0.0450.601−0.145; 0.054
TSH(miU/L)適切1.78 ± 0.90.49490.0890.110 ; 0.884
過剰1.96 ± 0.68−0.2070.5−0.573; 0.165
食欲ホルモン
FGF-21(pg/mL)適切74.98 ± 59.9230.03760.305−9.260; 69.335
過剰98.41 ± 88.18−4.1720.906−41.67; 33.606
GDF-15(pg/mL)適切313.5 ± 71.8−10.010.718−40.65; 20.753
過剰357.8 ± 155.2−51.850.027−81.22 ; −22.76
グレリン(pg/mL)適切882.57 ± 30866.04500.599−73.35; 205.71
過剰886.3 ± 304.260.46350.601−74.14; 192.4
グルカゴン(pmol/L)適切4.01 ± 1.524.11060.1440.235 ; 7.970
過剰5.21 ± 3.290.41440.906−3.293; 4.124
レプチン適切3,010 ± 2,5381,316.780.176−40.53; 2,667.9
過剰3,738 ± 3,5081,706.5940.084417.1 ; 2,994
脂質パネル
総コレステロール(mmol/L)適切3.34 ± 0.760.54440.0270.207 ; 0.879
過剰3.53 ± 0.680.28230.228−0.036; 0.608
中性脂肪(mmol/L)適切0.68 ± 0.250.09420.512−0.077; 0.265
過剰0.74 ± 0.390.00220.98−0.161; 0.166
LDL:HDL比適切1.85 ± 0.610.38510.0270.171 ; 0.603
過剰2.06 ± 0.690.24540.110.039 ; 0.453
精液の質
精液量(mL)適切4.03 ± 1.66−0.1250.862−0.741; 0.490
過剰3.36 ± 0.980.50570.244−0.085; 1.096
精子濃度(百万個/mL)適切73.45 ± 54.33−9,3970.679−34.78; 15.981
過剰71.95 ± 42.3−23.120.189−47.46; 1.214
精子の形態(%)適切2.81 ± 1.33−0.1680.889−1.274; 0.939
過剰3.14 ± 1.520.65020.459−0.411; 1.712
精子総運動率(%)適切73.81 ± 19.12−5,8690.634−19.48; 7.744
過剰74.95 ± 20.07−13.230.162−26.28 ; −0.176
生殖ホルモン
FSH(IU/L)適切3.58 ± 1.79−0.2550.323−0.598; 0.087
過剰3.59 ± 1.24−0.5220.027−0.851 ; −0.193
LH(IU/L)適切4.94 ± 1.9−0.30.751−1.294; 0.697
過剰4.91 ± 1.69−0.6390.395−1.594; 0.317
テストステロン(nmol/L)適切18.71 ± 4.49−2.1110.142−4.071 ; −0.152
過剰15.85 ± 4.21−0.6790.679−2.558; 1.200
メンタルヘルス
不安スコア適切4.52 ± 3.11−1,2340.228−2.619; 0.197
過剰5.86 ± 3.23−1.0750.1285−2.432; 0.280
うつ病スコア適切3.05 ± 3.111.31060.1340.123 ; 2.499
過剰3.86 ± 2.53−0.2050.879−1.355; 0.945
ストレススコア適切16.33 ± 8.220.85570.831−2.738; 4.544
過剰21.5 ± 9.050.60760.879−2.902; 4.124

超加工食群は、未加工食群と比較して、適正カロリー群においてのみ甲状腺ホルモンであるトリヨードサイロニン(T3)および甲状腺刺激ホルモン(TSH)の上昇傾向を示しました。

超加工食群では不安やストレスのレベルに変化はありませんが、適切なカロリー摂取群でのみうつ病スコアが上昇する傾向がありました。

さらに問題なのは、内分泌かく乱物質です。超加工食群では、未加工食群と比較して、血中のモノ(4-メチル-7-カルボキシヘプチル)フタル酸 (cxMINP) の蓄積を増加させました。内分泌かく乱物質は、生殖機能を損ない、性ホルモン分泌を乱す可能性があります。フタル酸エステルは食品包装などのプラスチックに使用される物質です。

たった3週間の食事でこれらの変化が起きてしまいます。これが毎日、365日、超加工食品を摂取したら…

超加工食品を摂取すると、体重、体脂肪の増加が起こり、ホルモンが乱れます。そして生殖機能に影響を与える可能性があります。これらの一因はフタル酸エステルの増加によるものかもしれませんし、超加工食品に含まれる他の物質によるものかもしれません。しかし、やはりプラスチック系の内分泌かく乱物質が超加工食品にはどうしても増加してしまいます。

超加工食品のパッケージの表示を見てみましょう。カロリーなんて気にせず、材料を見てみましょう。恐らく、自然のものではない物質が大量に入っています。材料に書かれていない物質も大量ですし、パッケージそのものが有害です。

食品業界は、このような有害物質を全く気にせず、超加工食品を製造し、販売し、様々な病気を作り出していくでしょう。

若い人たちが、コンビニや外食産業の餌食になっているのが気になります。食品業界と医療業界は一体となって、今後も人類を少しずつ蝕んでいくのでしょう。

できる限り食材を自分で調理して、食事をすべきでしょう。それでも現代の生活ではプラスチックの脅威からは逃れられません。

「Effect of ultra-processed food consumption on male reproductive and metabolic health」

「超加工食品の摂取が男性の生殖機能と代謝の健康に及ぼす影響」(原文はここ

2 thoughts on “超加工食品の摂取は生殖機能と健康に大きな影響を及ぼす

  1. 「同じエネルギー摂取量なのに、体重増加量が異なるということです。」
    当たり前の事が、共有されずに
    カロリー神話や塩分制限神話、
    コレステロール神話などが常識
    となっている事に加えて、
    ジャンクフードの違法スレスレの
    吸引力には抗い難い現状ですね、

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      ジャンクフードは抗えないような依存性、中毒性をもたらすように作られていますからね。
      手を出さないことが重要でしょう。

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