うつ病の大学生に対するケトン食の絶大な効果

うつ病が食事で改善するなんて、思っている人は少ないかもしれません。ましてや医師が食事改善を推奨するわけがありません。薬を投与してナンボの世界ですから。

今回の研究では、大学生のうつ病患者に対してケトン食を摂取してもらい、どうなるかを調べました。キャンパス内および地域の精神科医療機関でカウンセリング治療を受けているうつ病と確定診断された学生16人が対象です。(図は原文より、表は原文より改変)

平均
年齢(歳)24
身長(cm)169.2
体重(kg)73.1
BMI25.2
体脂肪率(%)31.8
脂肪量(kg)24.5
除脂肪体重(kg)45.7
HRSD13.9
PHQ-9スコア15.3
空腹時βヒドロキシ酪酸(mM)0.4
空腹時血糖値(mg/dL)85

上の表は参加者の特徴です。7人の参加者には、ノルエピネフリン・ドパミン再取り込み阻害薬(NDRI; 2人)、セロトニンアゴニスト・再取り込み阻害薬(SARI; 1人)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI; 1人)、非定型抗精神病薬(1人)、チアジン抗てんかん薬(1人)、および前述の薬物クラスの組み合わせ(1人)を含む薬物が処方されていました。参加者には10~12 週間ケトン食を摂ってもらいました。各参加者にベースライン時に10食の既製ケトジェニック食が提供されました。

血中のβヒドロキシ酪酸が0.5mM(日本の単位で500μmol/L)になることを目標として、ほとんどの参加者は1日あたり50 g未満の炭水化物と基準体重1kgあたり約1.5 gのタンパク質を摂取する必要がありました。残りのカロリーは脂肪で構成され、全食品からの一価不飽和および飽和脂肪酸源に重点が置かれました。非でんぷん質の野菜、低GIの果物(ベリー類、オリーブ、トマト、レモン/ライム)、肉類(牛肉、鶏肉、豚肉、魚、羊肉)、ナッツ類と種子類、油(オリーブ、アボカド、ココナッツ)、チーズ、バター、クリーム、卵、脂肪の多い魚(鮭、イワシ)など、幅広い食品が推奨されました。ケトン食では「ケトフル」と呼ばれるナトリウムと体液の損失につながる可能性があるため 、参加者にはブロス/LMNT電解質パック(中身はよくわかりません)が提供されました。筋肉のけいれんの症状が報告された場合は、マグネシウムとカルシウムを豊富に含む食品の摂取が推奨されました。

参加者は、高品質の脂肪(例:オリーブオイル)、サラダドレッシング、サーモンとイワシのパック、ビーフジャーキー、ウィスプチーズクリスプ、ナッツと種子、オートミール代替品など、いくつかの常温保存可能なアイテムを提供したことを除いて、自分で食べ物と食事を選びました。

参加者は、介入期間中の77%の日にβヒドロキシ酪酸および血糖値を正しく報告しました。図のAに示すように、βヒドロキシ酪酸値は個人によって異なりました。報告された日のうち、参加者は73%の時間で0.5mM 以上のβヒドロキシ酪酸を維持し、Bに示すように研究期間中の平均 βヒドロキシ酪酸は0.7mMでした。

ベースラインで薬物療法を受けていた参加者のうち、1人はSSRIの投与量をセルトラリン100 mg/日からエスシタロプラム5 mg/日に減量し、NDRIの投与量を150~300 mg/日から増量し、中間時点でガバペンチンを導入し、その後も継続しました。もう1人の参加者は、1週目にNDRIからSNRIの一定用量に切り替えました。介入期間中、その他の薬剤や投与量の変更は行われませんでした。

上の図は、様々なうつ病の評価スコアの推移です。AとBに示すように、2週目にPHQ-9スコアが37%減少し、ベースラインと比較して10~12週目にはさらに減少して69%の改善を示しました。うつ病症状の重症度はベースライン(8~25点)の参加者間で大きく異なりましたが、開始時のスコアに関わらず、全員がPHQ-9スコアの低下を報告し、時間の経過とともにうつ病症状の再発や有意な悪化を示した人はいませんでした。

CとDに示すように、HRSDスコアは、6週目と10~12週目でそれぞれ59%と71%減少しました。6週目には全ての参加者でHRSDうつ病評価が低下し、10~12週目までに全ての参加者のスコアが10未満になりました。つまり、10~12週目の時点で中等度または重度のうつ病を呈していた参加者はいなかったことを示しています。

EとFに示すように、介入開始2週目までに、全般的な精神的健康状態に関する自覚評価はほぼ2倍に増加し、介入後の検査ではほぼ3倍に改善しました。WHO-5スコアが低下した人はいませんでした。

上の図は、身体の変化です。介入前後で平均5.0kg体重減少を示し、そのうち15人が臨床的に有意な体重減少の閾値(-6.2%)を達成しました。有意な体重変化は、体脂肪率(-2.4%)、脂肪量(3.3 kg、p < 0.001)、除脂肪量(1.1 kg)の変化と相関しており、体脂肪量と除脂肪量の体組成比は3:1に変化しました。

ケトン体とうつ病の関連では、うつ病症状の顕著な改善は栄養性ケトーシスの発現と一致していましたが、βヒドロキシ酪酸とうつ病症状の変化との相関分析では有意な結果は得られませんでした。

体重減少とうつ病の関連では、体重の変化と有意な相関を示しませんでした。

生化学マーカーは、いくつかを除き、コレステロール、中性脂肪などに有意な変化は認められませんでした 。評価した10種類の血清アディポカイン(BDNF、IL-1β、IL-6、IL-8、IL-10、インスリン、レプチン、MCP-1、TNF-α、β-NGF)のうち、経時的に有意な変化を示したのはレプチン(-52%)とBDNF(+32%)のみでした。特に、介入後のBDNF値はベースラインと比較して大きな変動を示しました。 HOMA-IRには有意な変化はありませんでした。

認知能力に関しては、エピソード記憶、処理速度、実行機能といった認知課題において、有意な改善が認められました。具体的には、参加者は聴覚言語学習能力の10%の向上を示し、口頭記号数字テストで5%とパターン比較テストで4%の向上を示し、介入後の処理速度が向上したことを示しました。

ケトン食を10週間程度続けただけで、うつ病の症状が約70%減少し、精神的健康状態に関する自覚評価がほぼ3倍に改善したのです。どんな薬物療法およびカウンセリングよりも効果があると思います。

すでに薬で治療していた人も何人かいて、それで大きな改善が得られなかったと思われますが、食事を改善しただけで、症状が非常に大きく改善してしまいます。

正しい食事は治療です。間違った食事は有害です。そしてうつ病を含め多くの精神疾患も糖質過剰症候群です。

「A pilot study examining a ketogenic diet as an adjunct therapy in college students with major depressive disorder」

「大うつ病性障害を持つ大学生に対する補助療法としてのケトジェニックダイエットを検討するパイロットスタディ」(原文はここ

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