SGLT2阻害薬と膀胱がん

SGLT2阻害薬は様々な有益な効果が報告されるようになり、注目されている糖尿病薬です。心臓や腎臓の保護効果はケトン体が見直されるきっかけにもなったかもしれません。また、体重減少も期待できるようです。

しかし、体のブドウ糖を強制的に尿に排出するということは、膀胱には糖が常にいっぱい存在することにもなります。果たしてこれが良いことなのでしょうか?

以前、ピオグリタゾン(商品名アクトス他)と膀胱がんとの関連が騒がれましたが、現在は添付文書上では、

「本剤を投与された患者で膀胱癌の発生リスクが増加する可能性が完全には否定できないので、以下の点に注意すること。

膀胱癌治療中の患者には投与を避けること。また、特に、膀胱癌の既往を有する患者には本剤の有効性及び危険性を十分に勘案した上で、投与の可否を慎重に判断すること。

投与開始に先立ち、患者又はその家族に膀胱癌発症のリスクを十分に説明してから投与すること。また、投与中に血尿、頻尿、排尿痛等の症状が認められた場合には、直ちに受診するよう患者に指導すること。」

などと書かれています。膀胱がんの危険性は否定はできないけれど、リスクがあっても非常に少ないという感じです。

今回のヨーロッパのデータベースからの報告では、SGLT2阻害薬と膀胱がんについて分析しています。報告オッズ比(ROR)は1以上が有意に報告数が多いことになります。

データベースの全ての薬と比較して、SGLT2阻害薬のRORは3.97であり、頻繁な報告が認められました。中でもダパグリフロジン(商品名フォシーガ)が最もRORが高く7.02でした。

他の糖尿病薬との比較では関連性はありませんでしたが、先ほど書いたピオグリタゾンを除くと、RORは6.84でした。ダパグリフロジン(商品名フォシーガ)が最もRORが高く8.97でした。ピオグリタゾンは膀胱がん症例の3分の2以上を占めました。ということは、やはりピオグリタゾンは膀胱がんと関連していそうです。それを除いてみると、SGLT2阻害薬もやはり膀胱がんと関連がありそうです。

わざわざ糖質過剰摂取して、わざわざ排泄するのは意味があるのでしょうか?全ての人に当てはまるわけではありませんが、それよりも摂取量を減らす、つまり糖質制限をした方が良いと思います。

SGLT2阻害薬に心臓や腎臓の保護作用があると言っても、糖質過剰摂取のまま糖尿病治療を行っている人との比較だと思います。糖質制限をすれば簡単に達成できるようなレベルではないかと思います。

糖質過剰症候群

「SGLT2 Inhibitors and Bladder Cancer: Analysis of Cases Reported in the European Pharmacovigilance Database」

「SGLT2阻害薬と膀胱がん:欧州ファーマコビジランスデータベースで報告された症例の分析」(原文はここ

6 thoughts on “SGLT2阻害薬と膀胱がん

  1. ブドウ糖が悪さをする前に強制的に尿へ排出する薬なのですね。
    膀胱にとっては想定外の状況なのでしょうね。

    そうまでして糖質を摂取して、しかもそれを「無かった事」にしようとしたツケ       なのでしょうか。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      副作用のない薬はありません。つまり「無かったこと」にもなりません。

  2. 面白い薬ですね。
    適当に調べたんですが100gくらいブドウ糖を排出してくれるみたいですね。
    糖質量によっては食べてもその薬があれば食べなかったことにしてくれるということなんですね。ただし、膀胱癌になるかもよ。みたいな、、、

    医療ダイエットといって自費診療で処方してくれる病院もあるんですね。
    薬に頼らず糖質制限して欲しいですね。
    糖質制限はダイエット法というよりも、健康法なのだから。

    1. 匿名希望さん、コメントありがとうございます。

      副作用のない薬はありません。つまり「食べなかったこと」にもなりません。
      医療ダイエットといって自費診療で処方してくれる病院があるんですね。
      何でもありですね。

  3. 清水先生、こんばんは。
    SGLT2阻害薬は、尿にブドウ糖を排泄させ、糖質制限をしているような状況を作り出すということです、面白いなあ、と思っていましたが、膀胱がんのリスクがあるのですね。
    膀胱に限らず、細胞、組織はある程度の濃度のブドウ糖液にさらされると、がん化するということがあるのでしょうか?

    1. じょんさん、コメントありがとうございます。

      糖質制限をしていることと似た状況を作ってくれるかもしれませんが、大きな違いもあると思います。

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