血中のオメガ3脂肪酸と死亡率

オメガ3脂肪酸は健康的な脂質だと考えられています。様々な研究でオメガ3の有益性が証明されているように見えます。私はちょっと疑問を持っています。特にオメガ3の先頭のα-リノレン酸は特に有益性はないのではないかと思います。

今回の研究では、血中のオメガ3と死亡リスクとの関連を17の前向きコホート研究からのデータを使用して、分析しています。追跡期間の中央値は16年間です。(図は原文より、表は原文より改変)

脂肪酸すべての原因による死亡率心血管疾患死亡率がん死亡率その他の死亡率
ALA0.99(0.96–1.02)1.01(0.95–1.07)1.02(0.96–1.08)0.99(0.95–1.04)
EPA0.91(0.88–0.94)0.88(0.83–0.94)0.91(0.85–0.96)0.92(0.87–0.97)
DPA(ドコサペンタエン酸)0.87(0.84–0.91)0.91(0.84–0.99)0.87(0.81–0.95)0.88(0.82–0.94)
DHA0.89(0.85–0.92)0.86(0.80–0.92)0.93(0.86–1.00)0.90(0.84–0.95)
EPA + DHA0.87(0.83–0.90)0.85(0.79–0.91)0.89(0.83–0.96)0.88(0.82–0.93)

上の表はそれぞれの脂肪酸の血中の濃度の5分位の一番低いものと一番高いものを比較して、それぞれの死亡リスクを分析したものです。ALAは18炭素の植物由来のα-リノレン酸です。

そうすると、EPA、DPA、DHAどれも血中濃度が高いと死亡リスクが10%前後低下しました。しかし、α-リノレン酸は死亡率とは関連していませんでした。有害性も有益性も全く認められません。

脂肪酸すべての原因による死亡率心血管疾患死亡率がん死亡率その他の死亡率
ALAQ11111
Q20.95(0.87–1.04)0.95(0.87–1.04)0.98(0.89–1.08)0.94(0.87–1.01)
Q30.94(0.89–0.99)1.00(0.91–1.10)0.96(0.87–1.05)0.93(0.86–1.00)
Q40.95(0.90–1.01)0.99(0.91〜1.09)0.99(0.90–1.09)0.95(0.88–1.03)
Q50.94(0.89–0.99)0.98(0.89–1.08)0.88(0.80–0.98)0.93(0.86–1.01)
EPAQ11111
Q20.92(0.87–0.97)0.98(0.90–1.07)0.90(0.82–0.99)0.91(0.84–0.98)
Q30.88(0.83–0.92)0.98(0.90–1.07)0.86(0.78–0.95)0.86(0.79–0.93)
Q40.85(0.81〜0.90)0.89(0.81–0.98)0.87(0.78–0.96)0.83(0.77–0.90)
Q50.82(0.78–0.87)0.85(0.77–0.94)0.82(0.74–0.91)0.78(0.72–0.85)
DPAQ11111
Q20.95(0.90–1.01)0.96(0.87–1.07)0.96(0.86–1.07)0.94(0.86–1.02)
Q30.92(0.87–0.98)0.99(0.89–1.09)0.98(0.88–1.10)0.91(0.84–0.99)
Q40.90(0.85–0.96)0.98(0.88–1.09)0.92(0.82–1.03)0.88(0.80–0.96)
Q50.84(0.79–0.90)0.87(0.78–0.98)0.79(0.70〜0.90)0.85(0.78–0.93)
DHAQ11111
Q20.95(0.90–1.00)0.96(0.88–1.05)0.91(0.83–1.00)0.96(0.89–1.04)
Q30.92(0.88–0.97)0.87(0.80–0.95)0.88(0.80–0.97)0.97(0.89–1.05)
Q40.97(0.94–1.01)0.92(0.84–1.01)0.91(0.83–1.00)0.90(0.83–0.97)
Q50.85(0.81〜0.90)0.79(0.72–0.88)0.86(0.78–0.95)0.87(0.80–0.94)
EPA + DHAQ11111
Q20.94(0.89,0.99)0.96(0.88,1.04)0.93(0.85–1.03)0.93(0.86–1.00)
Q30.92(0.88,0.97)0.91(0.83,1.00)0.90(0.82–0.99)0.94(0.87–1.02)
Q40.89(0.84,0.93)0.86(0.79,0.95)0.92(0.83–1.02)0.89(0.82–0.96)
Q50.84(0.79,0.89)0.80(0.73,0.88)0.87(0.78–0.96)0.82(0.75–0.89)

5分位全体の分析では、EPA、DPA、DHA、およびEPA + DHAで有意な傾向が観察されました。最も低いのと最も高いのを比較すると、それぞれ最も高い血中濃度の群の死亡リスクが15〜18%低くなっています

上の図はグラフ化したものです。EPAは線形ではないので、血中濃度が高いほど良いとは言えないでしょう。

そうすると、アマニ油やエゴマ油などオメガ3脂肪酸を売り物にしたオイルがありますが、オメガ3が入っているからと言って、特に健康的ではない可能性が高くなります。

α-リノレン酸のEPAやDHAへの変換率は一般的に非常に低いと考えられています。若い男性ではα-リノレン酸からEPAへの変換は8%程度で、DHAへの変換はほとんど0%、若い女性ではEPAへの変換は21%、DHAは9.2%と性差が認められるようですが、いずれにしてもDHAまで変換されるのは非常にわずかです。(ここここ参照)女性の方が変換率が高いのはエストロゲンなどの効果や、妊娠時に胎児にDHAなどを送るためなのかもしれません。

オメガ3はEPAやDHAの形で摂る方が良いでしょう。

 

「Blood n-3 fatty acid levels and total and cause-specific mortality from 17 prospective studies」

「17の前向き研究からの血中n-3脂肪酸レベルと総および原因別死亡率」(原文はここ

2 thoughts on “血中のオメガ3脂肪酸と死亡率

  1. やはりサバ水煮缶ですかね。地震も多いし安い時に大量買いして備蓄が大量にあります。 
    缶詰ですがやはり消費期限はあるので定期的に消費してました。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      サバ缶などが手軽で良いのでしょうね。でも私は缶詰ではない魚の方が好きです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です