糖尿病薬?やせ薬?GLP-1受容体作動薬の副作用 その13 胆嚢炎および胆石症

このシリーズはなかなか尽きません。もう「その13」です。

今回の研究では、GLP-1受容体作動薬による胆嚢炎、胆石症です。

FDA有害事象報告システム(FAERS)データベースのデータを用いて、報告オッズ比(ROR)、比例報告比(PRR)、Bayesian confidence propagation neural network (BCPNN)を使用してGLP-1受容体作動薬の胆嚢炎および胆石症の有害事象報告を抽出しました。(図は原文より)

上の図はそれぞれのGLP-1受容体作動薬による胆嚢炎および胆石症のROR、PRR、BCPNNです。エキセナチドはROR=1.88、PRR=1.88、IC = 0.90、リラグルチドはROR=6.75、PRR=6.71、IC=2.74、セマグルチドはROR=5.74、PRR=5.71、IC=2.50)、 デュラグルチドはROR=1.29、PRR=1.29、IC=0.37、チルゼパチドはROR=1.98、PRR=1.98、IC=0.98であり、。シグナル検出結果は、GLP-1薬が3つの検出法すべてで陽性シグナルを示しました。GLP-1薬群全体でも陽性シグナルが認められ、ROR=2.86、PRR=2.86、IC=1.48でした。

上の図のaに示すように、GLP-1薬誘発性胆嚢炎および胆石症の発現までの期間の中央値は182日でした。図のbはそれぞれの薬の胆嚢炎および胆石症の発現までの日数を示しています。エキセナチド、リラグルチド、セマグルチドでは、胆嚢炎および胆石症は通常360日後に発現しました。しかし、エキセナチド投与開始後7日以内にも相当数のこれらの症状を発現しました。図のcに示すように、胆嚢炎および胆石症の発現までの期間の中央値は、チルゼパチドが最も短く80日でしたが、エキセナチドは最も長く230日でした。全体的に、発現までの期間の中央値は、さまざまなGLP-1薬の間で有意に異なりました。女性患者では、エキセナチドおよびデュラグルチドを投与された際に、胆嚢炎および胆石症の発現までの期間の中央値が男性患者より長く、それぞれ280日および248日でした。一方、男性患者では、セマグルチドおよびチルゼパチドを投与された際に、これらの症状の発現までの期間の中央値が女性患者より長くなりました。

患者の年齢層別に見ても、発現までの期間の中央値は、GLP-1薬の種類によって異なっていました。特に、エキセナチドは18歳未満の患者において胆嚢炎および胆石症の発現までの期間の中央値が451日と最も長く、チルゼパチドは65歳以上の患者において55日と最も短かったです。

いずれにしても、GLP-1薬の使用は胆嚢炎および胆石症リスクを高くすると考えられます。

もう一つ見てみましょう。12か月間GLP-1薬を継続して使用した2型糖尿病患者216人と、GLP-1薬を含まない従来の抗糖尿病薬で治療された対照群92人を分析しました。症候性胆石症は臨床的に症状のある胆石症であり、活動に影響を与え、医師の診察を受けることを余儀なくさせた症状のある胆石です。無症候性胆石症は臨床症状を伴わない胆石症です。

GLP-1薬の使用は、肝機能障害を示すASTおよびALT値の有意な改善と関連していましたが、一方で胆汁うっ滞マーカー(ALP、ビリルビン)は対照群と比較して有意に上昇していました。膵酵素、血清アミラーゼおよびリパーゼもGLP-1薬使用者の間で有意な上昇を示しました。

参加者における胆石症の発症頻度は31.2% (96/308) で、胆石症患者のほとんど (58/96、60.4%) は症状がありました。症候性胆石症の頻度はリラグルチド使用者(81.8%)で有意に高く、次いでセマグルチド使用者(68%)、デュラグルチド使用者(44%)の順でした。

下の表はGLP‐1薬群と対照群における胆石症全体および症候性胆石症の相対リスクと有害事象発生必要数NNTです。(表は原文より改変)

イベントリラグルチドデュラグルチドセマグルチド
RRNNT(害)RRNNT(害)RRNNT(害)
胆石症1.217.251.314.691.410.96
症状性胆石症1.63.140.916.671.45.56

表に示すように、胆石症の全体的な相対リスクは、対照群と比較して、リラグルチド、デュラグルチド、セマグルチドでそれぞれ1.2、1.3、1.4(有意差なし)であり、胆石症患者における症候性胆石症の相対リスクは、リラグルチド、デュラグルチド、セマグルチドでそれぞれ1.6、0.9、1.4で、リラグルチドのみ有意でした。

胆石症の有害事象発生必要数はそれぞれ17.25、14.69、10.96であった。胆石症患者における症候性胆石症の有害事象発生必要数はそれぞれ3.14、16.67、5.56でした。

つまり、GLP‐1薬は11人から17人に1人の割合で、症状の有無はわかりませんが、胆石症を発症する可能性があるのです。かなり多いと思いませんか?

ある別の研究(ここ参照)では、GLP-1薬で治療した患者では胆嚢摘出術のリスクが2倍になりました。医療側にとっては旨味たっぷりの薬ですね。これはスタチン、PPIに次ぐ、新たなマッチポンプ薬ですね。

本来、人間の体内で分泌されるGLP-1の半減期は1~2分と言われています。それが1週間に1回の注射で済むということは、半減期も約1週間もあるのです。人間の初期設定では数分で消えるものが、注射で1週間もずっと分泌され続けているようなものであると考えると、恐ろしくないですか?

糖尿病も肥満も糖質過剰症候群です。薬に頼れば害があることを受け入れなければなりません。

「Glucagon-like peptide-1 receptor agonist-induced cholecystitis and cholelithiasis: a real-world pharmacovigilance analysis using the FAERS database」

「グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬誘発性胆嚢炎および胆石症:FAERSデータベースを用いた実際の医薬品安全性監視分析」(原文はここ

「The relative risk of clinically relevant cholelithiasis among glucagon-like peptide-1 receptor agonists in patients with type 2 diabetes mellitus, real-world study」

「2型糖尿病患者におけるグルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬の臨床的に関連する胆石症の相対リスク、実世界研究」(原文はここ

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