スタチンが世の中で出回るようになり、関心はLDLコレステロールにばかり向いてしまっています。しかし、私は中性脂肪が最も重要だと考えています。
中性脂肪は空腹時だけでなく非空腹時でも上昇すると心血管疾患のリスクは増加します。例えば下の図を見てみましょう。(図は原文より)
上の図はコペンハーゲン市心臓研究とコペンハーゲン一般人口研究を組み合わせた、中性脂肪の上昇と心血管疾患および全原因死亡との関連性です。左と真ん中の横軸は非空腹時中性脂肪値、右は空腹時中性脂肪値です。日本の単位に直す場合は88.57をかけます。面倒なら88でも良いでしょう。つまり2mmol/Lだと176mg/dL、3mmol/Lだと264mg/dLです。
極度に高濃度の非空腹時中性脂肪は心血管疾患の高リスクと関連していました。非空腹時中性脂肪値が 6.6mmol/L (580mg/dL) では0.8mmol/L (70mg/dL) の場合と比較して、心筋梗塞で5.1倍、虚血性心疾患で3.2倍、虚血性脳卒中では3.2倍、全原因死亡では2.2倍でした。そこまで中性脂肪が高くない2~3mmol/Lであってもリスクは高くなっています。3mmol/L(264mg/dL)なら心筋梗塞は3倍以上、虚血性心疾患では2倍以上でしょう。
右側の図の空腹時中性脂肪でも同様です。
そうすると、中性脂肪値を低下させる薬を飲めば良いと思う人もいるでしょう。しかし、以前の記事「薬で検査データを変えるだけでは健康にはなれない」で書いたように、数値だけを薬で下げても効果はありません。
上の図は観察研究および遺伝学的研究でのリスクです。一番上がレムナントコレステロールが1mmol/L増加するごと虚血性心疾患のリスク増加を示しています。1.4倍から2.8倍です。
真ん中は心筋梗塞のリスク増加です。レムナントコレステロールが2倍になると1.7倍から2.2倍です。中性脂肪が2倍になると1.6から1.9倍です。
一番下が全原因死亡です。中性脂肪が1mmol/L増加すると1.2倍から2倍です。
レムナントコレステロールの増加は、すなわち中性脂肪の増加に他なりません。(「レムナントコレステロール増加は高中性脂肪を表している」参照)さらに、レムナントコレステロールを含むレムナントリポタンパク質は、特に高中性脂肪と低HDLコレステロールがあると、食後12時間でも大量に残っています。(「レムナントリポタンパク質は食後12時間経っても大量に残っている」「低脂質高糖質の食事は空腹時でもレムナントリポタンパク質を激増させる」参照)高中性脂肪低HDLはインスリン抵抗性で起こります。つまり、糖質過剰摂取で起こります。
糖質過剰摂取による有害性をLDLコレステロールのせいにしたいがために、LDLコレステロールばかりに目を向け、中性脂肪をあえて無視していると思われます。スタチンのためです。
通常は糖質摂取でLDLコレステロールが低下することを考えれば、糖質摂取していてもLDLコレステロールが高くということは、それだけ過剰摂取してインスリン抵抗性が高くなっているのだと思われます。
糖質制限をして中性脂肪を低下させ、HDLを増加させ、インスリン抵抗性を低下させて、糖質過剰症候群である心血管疾患を予防しましょう。
「Triglycerides and cardiovascular disease」
「中性脂肪と心血管疾患」(原文はここ)
数値を下げる新薬ができれば、医療業界も心疾患原因「中性脂肪」押しになるのでは?
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
中性脂肪を下げる薬はすでにあるに、いまだLDLコレステロール絶対主義ですから、スタチン強しです。
中性脂肪に目が向いても、LDL+中性脂肪となるだけで、薬がさらに増やされるだけでしょう。
医療も利益重視の「産業」ですね。
スタチンでLDLと共に中性脂肪が下がる時にはどうすべきでしょうか。現在ビタバスタチン服用開始から3週ですが、以前に服用したことがあり、その時には中性脂肪が100程度と記憶しています。
今回の服用開始前の中性脂肪は150位。中性脂肪/HDLは3です。
ハイパーさん、コメントありがとうございます。
どうすべき?という質問の意図が良くわかりませんが、何のためにスタチンを飲む必要があるのでしょうか?虚血性心疾患があるのでしょうか?
中性脂肪値100というのは空腹時ですか?スタチン前後のLDLは?スタチン前後のHDLは?
食事を変えずにスタチンで数値を整えたいのでしょうか?
返答ありがとうございます。
5年前に心筋梗塞となりました。数値は、朝食抜き(水のみ)の午前中、病院の血液検査の結果です。プチ糖質制限ですが、中性脂肪が下がりません。スタチンを服用すれば、量にもよりますがLDL70でも可能です。無しでは190位です。HDLは大きな変動無しです。食事で中性脂肪が下がらない様(スタチンありで100位)なのでスタチンで下げるしか無いかと。
ハイパーさん
NNTで考えると、心疾患がすでにある場合スタチンで命が助かるのは5年間で83です。つまり83人に1人が助かる計算です。
同様に、致命的ではない心臓発作回避のNNTは39、脳卒中予防のNNTは125です。
その程度の効果しかありませんし、様々な副作用がありますが、どう考えるかはそれぞれです。
プチ糖質制限は健康な人が行う食事であり、心筋梗塞を起こした人では全く十分ではありません。
中性脂肪値が下がらないのもHDLが増加しないのも糖質量が多いからではないでしょうか?