スタチンは様々な副作用があるために、アメリカなどの報告では1年以内に約50%が中止しています。(ここ参照)日本人は自分で考えることをしなかったり、ある意味真面目なので、自分で中止する人はもっと少ないでしょう。
スタチンの副作用で最も多いのは筋肉痛、脱力感、全身倦怠感などの筋肉系の副作用でしょう。しかし、多くの医師は筋肉の副作用なんて得られる利益よりかなり軽度の問題だと思っているでしょう。そして、筋肉のマーカーのCPKを測定して、それほど変化がなかったり軽度の上昇では、その訴えが本当にスタチンによって起きているとは思ってくれないかもしれません。
超有名医学雑誌Lancetで、スタチン投与時の筋症状は9割以上が関連なし、という結論の論文を出してしまったので、余計に患者の訴えは疑われてしまう可能性が高くなります。
CPKが基準値の10倍になればさすがに信じてくれるかもしれませんが、3倍程度までは中止を考えてくれないかもしれません。
スタチン誘発性筋肉痛の可能性がある(日常の機能を制限し、スタチンへの曝露中に発生する筋肉の訴え(痛み、圧痛、または筋力低下)であり、スタチンの中止後に症状が解消し、CPKが正常化するか(そもそも上昇している場合)、または明らかに減少した場合、筋肉の訴えとスタチンの使用との因果関係はあり得ると考えられます。)20人を対象にして分析した研究を見てみましょう。(この論文参照)
観察された最高CPK値は1881で、7人の患者でCPKが正常の上限の3倍以上と有意に上昇していました。5人(28%)の患者はCPKの上昇を示しませんでした。6人(33%)はわずかな上昇のみを示しました。スタチンの中止後、CPK値の上昇を示した患者13人中11人で、数週間以内に筋肉症状の解消とCPKの正常化が認められました。
スタチンによる筋肉の症状はCPKを上昇させず、起こっていると思われます。
スタチン療法中に筋肉症状を発症したけどCPKは正常である4⼈の患者を対象とした研究があります。(ここ参照、図はこの論文から)スタチンとプラセボを盲検的に繰り返し、患者が区別できるか、スタチンのときには筋肉はどうなっているのかを調べています。
患者1は、4年間のシンバスタチン治療中に筋⾁痛を発症し、運動耐容能が低下しました。彼⼥は、重度の脚の痛みで休憩せずに階段を1段上がるのが難しいことに気づきました。アトルバスタチンでも症状は変化しませんでした。この研究に参加した後、2週間の休薬期間と盲検プラセボ段階で筋⾁症状が顕著に解消しました。盲検スタチンでは、開始から 48 時間以内に筋⾁痛が再発しました。2週間のスタチン療法の後、患者は脚の痛みと脱⼒感のため、再び階段を上るのが困難になりました。このプロトコルを繰り返しましたが、スタチン投与中に再び症状
を経験し、症状はプラセボ段階で再び解消されました。CPKは正常。筋⽣検により、筋線維内に分布する広範な脂質蓄積、シトクロムオキシダーゼ陰性筋線維が認められました。(この意味は私にはよくわかりません。)
筋⾁症状と股関節の筋力低下は、スタチン療法を中⽌してから3か⽉後に改善しました。その時点で、筋⽣検を繰り返したところ、病理学的異常が完全に解消していることがわかりました。
患者2は、ロバスタチンの投与中に筋⾁痛と筋⼒低下を発症しました。彼⼥は瓶を開けることも、指を鳴らす
こともできませんでした。彼⼥の医師は治療法を2 年間ナイアシンに変更しました。脂質コントロールを改善するためにシンバスタチンが追加されるたびに、筋⾁痛、脱⼒感、運動時の息切れを発症しました。この研究に参加し、彼⼥の症状が再現された、盲検でのスタチンのときに筋⼒低下があり、CPKは正常でした。筋⽣検により、ミオパチーと⼀致する脂肪滴の蓄積の亢進とシトクロムオキシダーゼ陰性の筋線維が明らかになりました。スタチンの中⽌後3か⽉後に筋⽣検を繰り返したところ、異常な脂質貯蔵が完全に解消されたていました。
患者3は、アトルバスタチンを2年間服⽤している間に、肩、腰、⼤腿部の痛みと脱⼒感を発症しました。2週間の休暇中に、彼は薬を忘れてしまい、筋⾁の症状が⼤幅に解消していることに気づきました。この研究に参加しス盲検のスタチンを正確に特定し、その時のCPKは正常でした。スタチン療法中に⾏われた筋⽣検では、脂肪滴の増加、不規則な⾚⾊線維、シトクロムオキシダーゼ陰性筋線維が明らかになりました。スタチン中止後の5.5か⽉後に⾏われた繰り返しの⽣検では、増加した脂肪滴の解消が認められました。
患者4は、アトルバスタチンの投与を開始し、2週間以内に階段を登るときに脚の痛みに気づきました。アトルバスタチンの服⽤を中⽌してから2週間後に彼の症状は治まりました。この研究に参加し、彼は盲検スタチン療法を正しく特定し、CPKが正常であるにもかかわらず、測定可能なほどの股関節の衰弱を⽰しました。筋⽣検では、シトクロムオキシダーゼ陰性線維が認められ、電⼦顕微鏡検査では、電⼦密度の⾼い膜状の破⽚に囲まれた異常な脂肪滴が⽰されました。スタチン療法の中⽌後、⽣検を受けていません。
下の図は患者1~3の筋生検で左側がスタチン療法中、右がスタチンを止めて数か月後のものです。
病理的なことは詳しくないのでよくわかりませんが、スタチン中では筋肉のタイプ1線維における脂質の異常な蓄積が⽰されました。これらの脂質の蓄積は、患者がスタチンを投与されなくなったときに⾏われた繰り返しの⽣
検では認められません。
スタチン中では異常に増加した脂質蓄積、シトクロムオキシダーゼ陰性線維、ぼろぼろの赤い線維が認められるようです。これらの所見はミトコンドリア機能不全の特徴であり、代謝異常による筋障害を⽰唆しています。これらの所⾒の⼀部は加齢により筋線維でまれに発⽣する可能性があるようですが、脂質の増加パターンは異常だそうです。
また、スタチン療法中に検査を受けた3⼈の患者で軽度の3-メチルグルタコン酸尿症が⾒つかりました。何?初めて聞きました。調べてみると、メチルグルタコン酸尿症は指定難病324に指定されている疾患だそうです。(ここ参照)ミトコンドリアの障害でメチルグルタコン酸尿が出てくるようです。
いずれにしても、CPKが正常であっても筋肉は病理学的異常を示し、4人中3人にミトコンドリア障害を強く示唆するメチルグルタコン酸尿まで出ています。
我々のエネルギーの源のミトコンドリアの障害を軽く見てはなりません。
スタチン療法でCPKをもとに筋肉の症状がスタチンによるものかどうかは全く判断できないことがわかります。自覚症状で少しでも筋肉の痛みや筋力低下などを認めたのであれば、細胞レベルではミトコンドリアの機能障害が起きている可能性があります。
さらに、スタチン療法で筋⾁痛のない患者の⾻格筋にも超微細構造損傷を誘発しているという研究もあります。(ここ参照)
LDLコレステロール低下絶対主義は見直されなければなりませんが、製薬会社に乗っ取られている医学雑誌にスタチン崇拝論文が載ってしまっている以上、医師の頭の中は変わらないでしょう。
利益相反のある人が書いたLancetの論文は重大な副作用を曖昧にさせるのに十分なのかもしれません。
そもそも超複雑系の人間の体の代謝を薬で変えることが問題なのです。代謝に問題が起きているのは、そのほとんどは毎日の生活、特に食事の問題によるものが最も大きいでしょう。
「Effect of statin therapy on muscle symptoms: an individual participant data meta-analysis of large-scale, randomised, double-blind trials」
「筋症状に対するスタチン療法の効果: 大規模無作為化二重盲検試験の個々の参加者データのメタ分析」(原文はここ)
医師の先生へ申し上げるのもはばかられますが、健康の為には下手に医者にかかれないですね。