通常のリポタンパク質のライフサイクルは非常に短く、VLDLは30~60分程度でIDLとなり、IDLも30分程度でLDLとなり、LDLは2~4日間体をめぐっていると言われています。カイロミクロンも60分で半分になってしまうので、非常に短い間に消失します。
しかし、代謝が上手く行っていないと、カイロミクロンやVLDLはなかなか消えてくれません。いわゆるレムナントになってしまうのです。
以前の記事「レムナントコレステロールは心臓に悪い! だったら、糖質制限でしょ!」でも書いたようにレムナントは虚血性心疾患などのリスクを非常に高めます。
では、実際にはどれほどのレムナントが存在しているのでしょうか?
12時間の絶食と、36時間の禁酒の後の血液のデータです。(表の略語は、RLP-C:レムナントリポタンパク質コレステロール、CM:カイロミクロン、RLP-TG:レムナントリポタンパク質中性脂肪です。表は原文より改変)
高中性脂肪は約177mg/dL以上、高LDLコレステロールは約131mg/dL以上、低HDLコレステロールは約35mg/dL以下としています。
その値に応じて、正常な脂質の群と高LDLコレステロールと高中性脂肪の合併の群、高中性脂肪と低HDLコレステロールの群に分けています。
正常な脂質の群(n = 10) | 高LDL-Cと高中性脂肪の合併の群(n = 14) | 高中性脂肪と低HDL-Cの群(n = 8) | |
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総コレステロール(mg/dL) | 175.68 | 232.05 | 202.70 |
血漿 RLP-C (mg/dL) | 6.56 | 11.20 | 25.87 |
CM RLP-C (mg/dL) | 0.77 | 1.16 | 8.49 |
VLDL RLP-C (mg/dL) | 1.93 | 5.79 | 16.99 |
IDL+ LDL+ HDL RLP-C (mg/dL) | 4.63 | 4.63 | 3.47 |
中性脂肪(mg/dL) | 118.58 | 265.49 | 456.64 |
血漿RLP-TG (mg/dL) | 19.47 | 61.06 | 138.05 |
CM RLP-TG (mg/dL) | 9.73 | 29.20 | 61.95 |
VLDL RLP-TG (mg/dL) | 6.19 | 29.20 | 80.53 |
IDL+ LDL+ HDL RLP-TG (mg/dL) | 7.08 | 5.31 | 7.96 |
血漿 RLP-C/血漿 RLP-TG | 1.07 | 0.50 | 0.44 |
Apo B100 (mg/L) | 35.8 | 83.8 | 141.4 |
Apo B48 (mg/L) | 1.0 | 2.3 | 6.5 |
表を見てみると、正常の人と比べると他の2群は絶食にも関わらずレムナントのコレステロール、中性脂肪とも非常に高いことがわかります。特に高中性脂肪と低HDLコレステロールの群では、正常と比べて血漿レムナントコレステロールは約4倍、血漿レムナント中性脂肪は実に7倍にもなっているのです。
驚くことにすぐに消失するはずのカイロミクロンもVLDLも大量にレムナントとして残存しています。高中性脂肪と低HDLコレステロールの群では、正常と比べてカイロミクロンのレムナントコレステロールは約11倍、VLDLのレムナントコレステロールは約9倍、カイロミクロンのレムナント中性脂肪は約6倍、VLDLのレムナント中性脂肪は約13倍にもなります。
中性脂肪値に対するレムナントの中性脂肪が占める割合は正常で約16%、高LDLコレステロールと高中性脂肪の合併の群で約23%、高中性脂肪と低HDLコレステロールの群では約30%にもなってしまうのです。
ApoB100はVLDL、IDL、LDLのアポリポタンパクです。ApoB48はカイロミクロンのアポリポタンパクです。そのApoB48は高中性脂肪と低HDLコレステロールの群では、正常と比べて6.5倍も増加してしまっています。それだけレムナントが残存しているということになります。
中性脂肪が高いこと、HDLコレステロール値が低いことはこれほどレムナントリポタンパク質を増やしてしまうのです。
中性脂肪を低下させ、HDLコレステロールを増加させて、レムナントを少なくしましょう。
「Postprandial remnant-like lipoproteins in hypertriglyceridemia」
「高中性脂肪血症における食後のレムナント様リポタンパク質」(原文はここ)