動脈硬化の原因となると考えられているレムナントコレステロールですが、レムナント自体が血中から血管壁に潜り込んで動脈硬化を起こすというのは考えにくいので、動脈硬化のリスクの高い人でレムナントコレステロールが高いことは結果でしょう。
レムナントコレステロールは中性脂肪を非常に多く含んだVLDLからできるのが普通です。もちろん食後ではカイロミクロンのレムナントもありますが、一般的にはVLDLのレムナントが多くを占めると考えられます。レムナントコレステロールは総コレステロールからHDLとLDLを引いたものと考えられます。つまり、
①レムナントコレステロール=[総コレステロール]ー[HDLコレステロール]ー[LDLコレステロール]
という式で表されます。
LDLコレステロールを求める計算式Friedwaldの式は
②LDLコレステロール= [総コレステロール] – [HDLコレステロール] – [中性脂肪]÷5
ですから、①の式のLDLコレステロールに代入すると、
レムナントコレステロール=[総コレステロール]ー[HDLコレステロール]ー( [総コレステロール] – [HDLコレステロール] – [中性脂肪]÷5)
=[中性脂肪]÷5
となります。つまり、レムナントコレステロールが高いということは中性脂肪が高いことを表していることになります。レムナントコレステロールは中性脂肪を非常に多く含んだVLDLからできていることを考えれば当然と言えば当然です。
コレステロールには悪玉、善玉と名前をつけるのに、マスコミは中性脂肪にはあまり目を向けません。中性脂肪が十分に低ければ、コレステロールに悪玉はほとんどいないと考えた方が良いでしょう。
レムナントコレステロールの心血管疾患へのリスク増加は、実は中性脂肪の増加によるリスク増加を見ているのではないかと考えています。
以前の記事「低脂質高糖質の食事は空腹時でもレムナントリポタンパク質を激増させる」で書いたように、高脂肪食ではなく、低脂肪高糖質食がレムナントリポタンパク質を増加させます。
レムナントコレステロールは一般的に測定しません。しかし中性脂肪なら測定可能です。逆にコレステロールは測定しても中性脂肪を測定しない血液検査はあまり役に立たないでしょう。
「レムナント」という言葉を恐れたり、気にする必要はなく、糖質制限をして中性脂肪を低く保てば問題ないと思います。
「The Forgotten Lipids: Triglycerides, Remnant Cholesterol, and Atherosclerotic Cardiovascular Disease Risk」
「忘れられた脂質:中性脂肪、レムナントコレステロール、およびアテローム性動脈硬化症の心血管疾患のリスク」(原文はここ)
清水先生、こんばんは。
各コレステロールの関係式から、レムナントコレステロールは中性脂肪÷5が導き出せるのですね。中性脂肪を低値に保つことの意義が改めて分かりました。
清水先生、こんばんは。
家族性高コレステロール血症の方は、黄色腫やアキレス腱肥厚がみられると聞いたことがあります。このような場合は、LDLコレステロールが高値であるだけでなく、中性脂肪も高値なのでしょうか?
じょんさん、コメントありがとうございます。
アキレス腱黄色腫の主成分は脂質とコラーゲンで、
脂質組成は55%の遊離コレステロール、28%はコレステロールエステル、13%がリン脂質らしいです。
(この論文参照)
中性脂肪とは直接は関連していないと思いますが、詳細はわかりません。
家族性高コレステロール血症で糖質制限をしている方(n=1)ですが、その方は黄色腫があったかどうかはちょっと覚えていませんが、
RLP(レムナント様)コレステロールの実測値の平均値は11くらいで、中性脂肪値は72くらい、LDLコレステロールの平均値は468くらいです。
家族性高コレステロール血症でも糖質制限をすれば中性脂肪値は低く保てますが、少し上がりやすいのかもしれません。
あまり答えになっていませんが。
清水先生、ありがとうございます。
家族性でも糖質制限をして中性脂肪を低く、HDLを高く維持できれば、新血管系のリスクは小さくなるかもしれないですね。