糖質制限をしても中性脂肪値が低下しない原因の一つはアルコールである

糖質制限をするとほとんどの人が劇的に中性脂肪値が低下します。しかし、ときに中性脂肪値がそれほど低下しなかったり、上昇する人もいるかもしれません。そのような場合に考えられる大きな原因の一つは、恐らくアルコールでしょう。

糖質制限は種類によりますが、アルコールはOKとされています。しかし、それも程度問題でしょう。糖質の中で最も有害なものは果糖だと考えられていますが、果糖は酔っぱらわないアルコールと考えられているように、人間の体の中では非常に似かよった作用を示します。非アルコール性脂肪肝は果糖が原因であり、アルコール性脂肪肝はアルコールが原因だと考えられます。つまり、せっかく糖質制限を実践して肝臓や他の人体に良いことをしても、アルコールをたくさん飲んでしまえば、肝臓に大きな負担を与えてしまいます。

アルコールが分解されてできたアセトアルデヒドはSREBP-1cを刺激して肝臓での脂肪合成の酵素を活性化します。また、肝臓の局所のインスリン抵抗性を促進するとも考えられています。さらに、アセトアルデヒドは、ミトコンドリアの損傷、サイトカインの産生、および肝細胞への鉄の増加などにより、酸化ストレスを増やし、肝細胞の損傷を誘発します。アルコールと鉄の組み合わせは要注意です。(図は原文より)

上の図は脂質をエネルギーにする酸化量を示しています。左の白いバーがアルコール摂取前、右のグレーのバーがアルコール摂取後1~2時間の全身の脂質酸化量を示しています。そうすると、アルコールにより5分の1程度まで減少しています。

上の図はアルコールを24g摂取した時の肝臓での脂肪合成の割合を示しています。ベースラインでは1%程度であったのに、4~5時間後当たりでは約30%にも達しています。つまり、アルコールは肝臓での脂肪の合成を非常に促進するのです。6時間後でも合成はまだ非常に高いままです。

また、様々な検査を行っている検査機関のホームページのQ&Aの中で、アルコールと脂質検査についての注意が書かれています。(その全文はここ、表はこのページより改変)

それによると、「中性脂肪合成のピークは、アルコールを飲んで12時間後といわれています」とあります。この根拠となるデータはよくわかりません。上の研究では、合成のピークは4~5時間後だったので、個人差やアルコール量によって違いがあるのかもしれません。そしてアルコールの影響の一例が出ています。

表.前日の食事・飲酒の影響 早朝空腹時採血(AM9:00)
早朝空腹時採血(AM9:00)健常者A健常者B
検査前日\項目総コレステロール中性脂肪HDL-コレステロールLDL-コレステロール総コレステロール中性脂肪HDL-コレステロールLDL-コレステロール
軽めの夕食(14時間絶食)22254811231909449123
焼肉・飲酒(12時間絶食)204182661082139393585
単位:mg/dL

通常、中性脂肪値は食事の影響を大きく受けると考えられています。しかし、夕食の内容によってしっかり絶食をしたつもりでも、中性脂肪値はベースラインに下がっていない場合があるのです。アルコール摂取は絶食12時間後でも物凄い影響です。さらに、コレステロール値は一般に食事の影響を受けにくいとされていますが、アルコールの影響で、コレステロール値は低下して見えるようです。

そうすると、血液検査の前日は飲酒しない方が良いとは思います。ただ、飲酒の影響で確実に中性脂肪値は急上昇し、長時間高中性脂肪血症になっている可能性があります。前日に禁酒をして、数値を整えることがどれほどの意味を成すかはわかりません。毎日の飲酒量のまま、検査をして、TGスパイクが起きているかどうかを知ることも必要かもしれません。

以前の記事「絶食時ではない中性脂肪値上昇も危険性がある」で書いたように、絶食時ではない状態での高中性脂肪値も危険性が指摘されています。さらに、上の表で見たように、アルコールにより中性脂肪値は上昇し、HDLコレステロール値は低下します。「中性脂肪/HDLコレステロール比と心筋梗塞」などで書いたように、中性脂肪が上昇しHDLコレステロールが低下することは決して良いことはありません。

しかし、一般的にはアルコールを摂取している人ではHDLコレステロール値が上昇します。そうすると、もしかしたら、アルコールを飲んでしばらくはHDLが低下し、その後増加して、アルコールが抜けた後はHDLは高くなっているのかもしれません。つまり、体の中のアルコール濃度に応じて波ができる可能性はあります。

個人差はあると思いますが、中性脂肪合成のピークが本当にアルコールを飲んで12時間後であれば、1日の大半の時間は高中性脂肪血症となっているでしょう。前日だけ禁酒して、数値を整えても、本当の自分の状態は把握できません。通常の生活の状態での検査の方が意味があるでしょう。

いずれにしても、お酒はほどほどに。

「De novo lipogenesis, lipid kinetics, and whole-body lipid balances in humans after acute alcohol consumption」

「急性アルコール摂取後のヒトにおけるデノボ脂質生成、脂質動態、および全身の脂質バランス」(原文はここ

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