肥満は最も一般的な糖質過剰症候群の病態です。BMIが高いことは様々な疾患と関連していることはこれまでも多く指摘されています。因果関係を示すには観察研究では交絡因子が多く、なかなか難しいと考えられています。そこで、メンデルランダム化解析という遺伝情報をもとにした、自然界で行われている無作為化を利用した解析法が開発されました。観察研究においても交絡因子を除外して、因果関係を明らかにする方法です。最近流行りの解析法ですが、知識不足で、なんだかピンときません。
今回の研究では、337,536人のイギリス人のデータから、900以上の疾患との関連を5つの異なるアプローチでの分析をしています。その結果、14の疾患について、すべてのアプローチにわたって完全に一貫した証拠が得られ、26の疾患について、用いられた5つの方法のうちの少なくとも4つによって証拠が得られたのです。BMIとの関連のトップ30は次のようです。(順番は疾患の部位別なので、高い順ではありません)(図は原文より)
上から順に新生物(がん)、甲状腺機能低下症、1型糖尿病、2型糖尿病、高コレステロール血症、不眠症、その他の末梢神経障害、遺伝性網膜ジストロフィー、非リウマチ性大動脈弁障害、高血圧、虚血性心疾患、心肥大、不整脈、うっ血性心不全、静脈炎および血栓性静脈炎
上から順に、喘息、閉塞性慢性気管支炎、呼吸器系のその他の症状、鼠径ヘルニア、臍ヘルニア、胆石症、腎不全、その他の関節症、変形性関節症、浮腫、壊疽(えそ)、膝の内部障害、蜂窩織炎および膿瘍、下肢の慢性潰瘍、アトピー性接触皮膚炎です。
この中で、鼠径ヘルニアだけは負の関連です。つまり、BMIが高いほど鼠径ヘルニアになりにくいということです。お腹の内臓脂肪が邪魔をして、ヘルニアになりにくいのかもしれません。
驚くことではありませんが、糖尿病に関連した疾患が多く認められています。末梢神経障害、下肢の潰瘍、壊疽や腎不全などはすべて糖尿病合併症であることが知られています。意外にも1型糖尿病も肥満との関連を認めています。
肥満に関連する疾患のリスクを減らすということは血糖値の変動、高血糖を減らすことが非常に重要だということだと思います。
「A data-driven approach for studying the role of body mass in multiple diseases: a phenome-wide registry-based case-control study in the UK Biobank」
「様々な疾患における体重の役割を研究するためのデータ駆動型アプローチ:イギリスのバイオバンクにおける表現型ワイドな登録に基づく症例対照研究」(原文はここ)