ごぼうは炭水化物が比較的豊富で、糖質制限食ではにんじんや玉ねぎと並んで、控えめならば食べても良い食材、としての位置づけでした。しかし、日本食品標準成分表(八訂)(七訂でもすでに書かれていましたが)では、炭水化物が非常に細かく分類されました。(「利用可能炭水化物とこれまでの炭水化物量との乖離」参照)炭水化物という名前の付く項目だけで、4種類もあります。「炭水化物」と書かれているのは、成分表2015年版(七訂)の方法のエネルギーの算出に使われた成分項目です。利用可能炭水化物というものの欄が3種類になってしまいました。
そして、今までの炭水化物と利用可能炭水化物の量に、一部の食材で大きな乖離を起こしていました。利用可能炭水化物量とこれまでの炭水化物量および差し引き法による利用可能炭水化物量との乖離の理由がよくわからなかったので、当院の栄養士さんに聞いてみました。栄養士さんが一生懸命に調べてくれました。その答えは、次のようです。(ここ参照)
「食物繊維総量は、プロスキー変法による高分子量の「水溶性食物繊維(Soluble dietary fiber)」と「不溶性食物繊維(Insoluble dietary fiber)」を合計した「食物繊維総量(Total dietary fiber)」、プロスキー法による食物繊維総量、あるいは、AOAC. 2011.25法による「低分子量水溶性食物繊維(Water:alcohol soluble dietary fiber)」、「高分子量水溶性食物繊維
(Water:alcohol insoluble dietary fiber)」及び「不溶性食物繊維」を合計した食物繊維総量である。本表では、エネルギー計算に関する成分として、食物繊維総量のみを成分項目群「炭水化物」に併記した。食物繊維総量由来のエネルギーは、この成分値(g)にエネルギー換算係数8 kJ/g(2 kcal/g)を乗じて算出する。
なお、食品成分表2015年版追補2018年以降、低分子量水溶性食物繊維も測定できるAOAC. 2011.25法による成分値を収載しているが、従来の「プロスキー変法」や「プロスキー法」による成分値及びAOAC. 2011.25法による成分値、更に、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維等の食物繊維総量の内訳については、炭水化物成分表増補2023年別表1に収載している。炭水化物成分表増補2023年の別表 1にAOAC. 2011.25法による収載値とプロスキー変法(あるいはプロスキー法)による収載値がある食品の場合には、本表にはAOAC. 2011.25法によるものを収載した。」
簡単に言えば、従来はプロスキー変法(あるいはプロスキー法)で測定され、この方法では、難消化性でん粉等の一部やイヌリンの分解物や大豆オリゴ糖などの低分子量の水溶性食物繊維が含まれず、高分子量の食物繊維しか測定できなかったのですが、AOAC. 2011.25法では低分子量の水溶性食物繊維および難消化性でん粉も測定できるようになったのです。
しかし、全てを再分析したわけではなく、「総でん粉量1%以上であることを判断基準として、穀類、いも及びでん粉類、菓子類等に属する植物性食品から、順次再分析を行っていくこととした。」(ここ参照)
ごぼうもにんにくもでんぷん質が非常に少ないため、今回の再分析には含まれず、プロスキー変法のままの数値になっています。しかし、ごぼうもにんにくも非常に多くの低分子量の水溶性食物繊維のフルクタン(イヌリン)などを多く含んでいるので、利用可能炭水化物量とこれまでの炭水化物量および差し引き法による利用可能炭水化物量との乖離が起きてしまっているということです。
ごぼうの100g当たりの従来の炭水化物量は、生で15.4g、ゆでたごぼうで13.7gでした。食物繊維(プロスキー変法)は生で5.7g、ゆでで6.1gです。そうするとこれまでの考えでは、糖質量を計算すると、生で9.7g、ゆでで7.6gです。しかし、利用可能炭水化物量は、生で1.1g、ゆでで0.9gです。大きな違いがあります。
さて、そうなると、利用可能炭水化物というのを信じて、ごぼうはたくさん食べても大丈夫なのか、調べてみたくなり、久しぶりの人体実験を行いました。
スーパーで土付きごぼうを買ってきました。袋に入った状態で289gでした。洗って土を落とすと254gとなり、そのままでは食べられないので、ゆでました。茹でた状態では236gまで減少しました。
ごぼうの236gでこれまでの計算だと、生だと炭水化物36.34gでそのうち糖質が22.89gですが、ゆでたので炭水化物32.33gでそのうち糖質が17.94gとなります。およそ18gの糖質を摂れば、それなりに血糖値は上がるはずです。でも利用可能炭水化物で計算すると2.12gしか糖質がないことになります。これならほとんど血糖値は変動しないはずです。
では、人体実験をやってみましょう。土を落とすのもそれなりに大変な作業ですね。手もごぼう臭いというか、青臭い臭いがとれません。いくつかに切り分けて5分間茹でました。ゆであがるまでに、空腹時血糖値を測定するとちょうど100mg/dLでした。できる限り5分以内に食べきりたかったのですが、なんせ歯ごたえがあり、顎が疲れてしまい、6分かかってしまいました。その後の血糖値の推移は下の図のようです。
15分値を測定してみましたが、5mg/dL上昇したので、おや?と思いました。30分値ではベースラインから10mg/dL上昇したので、まさか?と思いました。しかし、その後は1時間値から2時間値まで103~105で横ばいでした。30分値は何とも言えませんが、ほぼ血糖値の変動はないと考えていいのではないかと思います。これであれば、糖質制限OK食材に格上げですね。
にんにくでもやりたいですが、原因かどうかはわかりませんが、前回大量に食べたときに肝機能の上昇があったので、やめておきます。恐らく同じような結果でしょう。それに、にんにくを200g以上摂るのもしんどいです。
さて、人体実験中にも便意があり、ウンコをしました。まあ、これは毎朝のウンコだと思っていました。ごぼう摂取から3時間を超えたあたりから、お腹がちょっと張ってきました。トイレに行くとオナラが結構出て、ウンコも少し出ました。そしてランニングに出かけましたが、ちょっと走ったところで、また便意が少し出てきました。ちょっとどうなのかな?と思いつつ走り続けると、ウンコが顔を出しそうな状況になってきました。これはまずい!60歳近い中年が道端でウンコを漏らしたら恥ずかしい!と思い、ランニングを切り上げて家に戻ることとしましたが、一向に便意はおさまらず、ウンコも顔を出したがっています。緊迫した状況です!でも普通に走っても帰宅まで15分程度かかる距離です。焦らず、走ると危険なので、ゆっくりと歩いて、便意がおさまるのを待ちます。便意がおさまってくるとまた走り始めます。家が近づいてくると、脳が安心しはじめ、便意が強くなってきました。間に合うのか?出てしまうのか?やっとのことで家についてシューズを脱ごうとしますが、焦って紐が絡まり、なかなか脱げません。あと少しでトイレに着きます。落ち着け!そう言い聞かせながら、トイレに急ぎます。そしてパンツを脱いで座った瞬間、安堵に包まれました。良かった…
その後も夜までお腹が張り、オナラが出続けました。
結論:ごぼうを一度にたくさん食べると後が大変