新型コロナとインフルエンザは同時には流行しない?

先日、東京大学などの研究チームが、新型コロナウイルスと季節性インフルエンザウイルスは同じ時期に同じ地域、規模では流行していないことを発表しました。(この記事参照)(さらに詳しい情報はここ

コロナとインフルは“同時には流行せず” 22カ国調査の東大など研究チーム

世界22カ国の感染状況の分析から新型コロナと季節性インフルエンザは同じ時期に同じ地域、規模では流行していないと東京大学などの研究チームが発表しました。
 東京大学の河岡義裕特任教授らの研究チームはコロナとインフルエンザの同時流行の関係について、世界22カ国で2019年から2022年の感染者数を比率を調整したうえで調べました。
 その結果、22カ国すべての国でコロナが感染拡大して以降、インフルエンザの感染者が著しく減少していたことが分かりました。
 このうち、日本と韓国ではインフルエンザの流行が低い状況が続いているということです。
 フランス、イタリア、イギリスの3カ国においては一部の期間でコロナの流行中にインフルエンザの感染も増えていたため詳しく調べたところ、それぞれが異なる地域で増加していたことが分かりました。
 これらのことから、コロナとインフルエンザは同じ時期に同じ地域、同じ規模では流行していないことが確認されたということです。
 河岡特任教授は「同時に流行しない理由については十分には解明されていない」としつつも「コロナに感染している人ではインフルエンザウイルスが増殖しにくい可能性がある」としています。

日本でも2020年の冬、2021年の冬はほとんどインフルエンザがいませんでした。これに関して、マスクをして感染対策をしっかりしていたからインフルエンザが流行しなかったという論調も一部にはありました。本当?まあ、ゼロではないかもしれませんが。

国もマスコミもコロナとインフルエンザが同時流行すると煽っていましたが、それも怪しいのかもしれません。

そして、この発表を受けて、「ウイルス干渉」だと当たり前のように述べている人が多いでしょう。でも、本当?ウイルス干渉は何らかのウイルスに感染すると、自然免疫が活性化されて、他のウイルスに感染しづらくなる現象です。ウイルス同士の椅子取りゲームのようなものです。個人の中の現象であり、地域全体で起きるかどうかは何とも言えないと思うのですが。

(下の図はここから)

上の図はNHKのサイトから引用した新型コロナウイルスのものです。「国内の感染者数」となっていますが、本当は陽性者数です。まあ、それは置いておいて、2021年から2022年の冬は1月に入ってから、いわゆる第6波がありました。ピークは1日10万人ほどです。その前の年、2020年から2021年の冬を見てみましょう。これは第3波というのでしょうか?ほとんど波が見えませんが。その時の1日の陽性者は数千人でした。数千人で大騒ぎになって緊急事態宣言が出されていたのです。それと比較して、2022年から2023年の冬は20万人超の日もあります。

通常の季節性インフルエンザはピークで恐らく1日10万人前後です。そうだとすると、オミクロン株の最初の方と同じ程度の感染力だと推定されます。

それなのに、そのオミクロン株に2021年から2022年の冬はウイルス干渉を受けて、インフルエンザは勝てなかったのでしょうか?その前の年2020年から2021年の冬はコロナの感染力がインフルエンザと比較して非常に小さく1日数千人規模の陽性者だったのに、インフルエンザは負けてしまったのでしょうか?(図は原文より)

アゴラの記事にもあったように、上久保靖彦氏などの発表によると、新型コロナウイルスにはS型、K型、G型の3種類があり、比較的軽いS型とK型のウイルスが2019年末までに日本に入り、日本人にはすでにコロナに対する集団免疫ができていたとしています。

次の図は日本のインフルエンザ(青)と新型コロナ(赤)の陽性者数を比較したものです。左の図は両方のウイルスの陽性者数を1:1にしているので、インフルエンザのグラフが見えないくらいになってしまっています。右がインフルエンザのグラフだけ1500倍にしています。インフルエンザはPCR検査をしているわけではないし、定点での測定なので、このように少ないのでしょう。実際はもっとかなり多いです。2019年には例年どおり11月上旬ごろから流行が始まりましたが、年末に流行がピークとなり、正月明けから減り始め、12週3月末には0になってしまいました。

比較的症状の軽い新型コロナウイルスが2019年末までに実際にはものすごく日本で広まっていたのでしょうか?でも従来のコロナウイルスはずっと存在していて、それにはインフルエンザは負けていませんでした。

今年はオミクロンの感染力はインフルエンザよりもちょっと上に見えますが、インフルエンザは全く広がっていないわけではありません。1月の第1週(1月2日~8日)でインフルエンザ定点当たり報告数が10を超えている、沖縄県、宮崎県、佐賀県では、同じ週のコロナ陽性者数は沖縄で2000人前後、宮崎では4000人前後、佐賀では3000人前後で、沖縄以外の2つの県ではこの1月第1週で過去最高記録です。

同じ時期に同じ地域、規模では流行していないと考えると、同じ県内でもある地域ではコロナが、別の地域ではインフルエンザが広がっていることになります。しかし、北海道新聞の記事によると、ある小児科では1 月上旬の計4日間でインフルエンザ患者は33人、コロナの21人だったそうです。ほとんど同じ規模と考えていいでしょう。小児科のクリニックなので当然同じ地域の子供が受診しているはずです。同じ地域で両方が存在しています。(と言っても、札幌は下の図の赤い矢印のようにまだまだ少ないです。図はここより)

また、2021年夏(第2波?)、2022年夏のいわゆる第7波のときに、小児ではRSウイルスが流行しました。(図はここより)

 

現在のインフルエンザの感染状況は本来のインフルエンザの勢いとはほど遠い状況ですが、どこまでを流行と考えるのかによって違いますが、ウイルス干渉や東大の研究チームの報告で説明することは難しいのではないでしょうか?ウイルス干渉だと、今年の状況とその前の2年のほとんどインフルエンザがゼロに近い状態の説明ができません。ウイルス干渉とすれば、今年こそインフルエンザがゼロでもおかしくありません。変異したコロナウイルスとインフルエンザウイルスの相性の問題かもしれません。

以前の記事「新型コロナウイルスと他のウイルス感染は同時に起きるか?」で書いたように、ウイルス同士の相互作用は必ずしも、どちらかが流行すればどちらかが抑制されるものではないようです。(図はここより)

An external file that holds a picture, illustration, etc. Object name is pnas.1911083116fig03.jpg

(RV =ライノウイルス、IAV =インフルエンザAウイルス(H1N1およびH3N2)、IBV =インフルエンザBウイルス、RSV =RSウイルス、CoV =ヒトコロナウイルス(新型ではない)、AdV =ヒトアデノウイルス、 MPV =ヒトメタニューモウイルス、PIV3 =パラインフルエンザ3型ウイルス、PIV1 =パラインフルエンザ1型ウイルス、 PIV4 =パラインフルエンザ4型ウイルス、 PIV2 =パラインフルエンザ2型ウイルス)

新型のコロナの前のコロナウイルスはRSウイルスやアデノウイルスなどとは相性がよく、同時流行が起こる可能性がありそうです。さらにコロナウイルスはインフルエンザウイルスとそれなりの良い相性のようですので、同時流行が起きても不思議ではないでしょう。

インフルエンザBと仲が悪いのはライノウイルスとRSウイルスで、インフルエンザAと仲が悪いのはライノウイルスのようです。これらは干渉しどちらかが流行すると、どちらかが抑制されます。

そもそもウイルスによって感染部位も違うこともありますし、くっつくレセプターも違います。ウイルス干渉したからといって、100対0になるわけではないでしょうが、新型コロナの最初の頃はほぼ100対0に近かったですね。インフルエンザウイルスがその人にコロナウイルスより早く到達していれば、インフルエンザに感染していたはずです。個体レベルのウイルス干渉が地域全体の干渉となるとは限らない気がします。もちろん、個体レベルの干渉によりインフルエンザウイルスを持っている人が周りに少なければ、地域の感染の流行は起きないでしょうけど、2020年から2021年の冬は周りにほとんどコロナ感染者はいませんでした。そうであるなら、本当なら2020年から2021年の冬はインフルエンザが流行する余地が十分にあった気がします。2019年末までに日本ではコロナの集団免疫ができるほど流行していたのであれば、2020年から2021年の冬はウイルス干渉が逆に起きないように思えます。

新型コロナは当初インフルエンザと相性が非常に悪く、それでも当初の新型コロナの感染力がインフルエンザほど強くなかったのに、インフルエンザが負けてしまったのはなぜかはわかりません。そしてオミクロンのBA5以降では、少しだけインフルエンザとの相性が良くなってきている感じです。それでも今年のインフルエンザの波は非常に小さく、大爆発しそうにはありませんが。

今回、東京大学などの研究チームが2022年の今季の冬のデータはまだ入っていないでしょう。そうであるならば、新型コロナとインフルエンザは同じ時期に同じ地域、同じ規模では流行しないとは言い切れないのではないかと思います。過去はそうだったという分析にすぎません。変異により変わっているかもしれません。同じ規模の定義、範囲にもよりますが。そして、最も大きな違いは日本人の多くが新型コロナのワクチンを何回も接種してしまったことでしょう。このワクチンで人間の免疫はボロボロになっているのかもしれませんから。

記事の最後にこの研究をした教授は「コロナに感染している人ではインフルエンザウイルスが増殖しにくい可能性がある」としていますが、もちろん、同時または短いスパンでの感染のタイミングでは免疫が発動されているので、ウイルス干渉で感染しにくいのではないかと思えますが、同じ人が新型コロナになった後しばらくすればインフルエンザになる可能性はあるでしょう。現在どちらのウイルスも同じ地域に存在していて、どちらに先に感染するかで、一方に感染し、もう一方には一時的に感染しづらくなるので、今年はインフルエンザが流行してもおかしくはありません。

また以前の記事「インフルエンザワクチンは新型コロナウイルスの感染のリスクを上げているかもしれない」で書いたように、インフルエンザワクチン接種は従来のコロナウイルスの感染リスクを1.36倍増加させるという研究があります。逆に考えれば、新型コロナのワクチンがインフルエンザウイルス感染のリスクを上げている可能性もあります。つまり、この冬に少しだけインフルエンザが流行しているのはコロナワクチンのせいかもしれません。まあ、どれだけの感染で流行というのかも定義の問題ですし、難しいですね。

マスコミは同時感染が増加していると煽っていますが、コロナをPCRで捕まえたのであれば、同時感染なのかはわかりません。また、ある専門家はコロナとインフルエンザは症状が似ているので注意が必要と言っていましたが、どんな注意が必要なのでしょうか?治療薬の問題でしょうが、どちらも必要ありません。インフルエンザにタミフルは必要ありませんし、コロナにゾコーバも必要ありません。対症療法をしたとしたら、それは同じ薬で良いのです。どちらにしても、人間の力でインフルエンザも新型コロナも感染、流行が防げるわけではありませんし、自分の免疫力を維持して、普通の生活を送り、感染して症状が出たら休めば良いのです。煽られて不安になったり慌てる必要はありません。どちらも風邪なんですから。

ところで、2年間も沈黙していたインフルエンザウイルスはその間どこにいたのでしょうか?世界のどこかで細々と感染し続け、時が来るのを待っていたのでしょうか?動物に潜んでしたのでしょうか?それとも、誰かの体に持続感染を起こし続け、時を見計らって元気に暴れ始めたのでしょうか?

自然現象は良くわかりません。

 

「Are twindemics occurring?」

「ツインデミクスは発生していますか?」(原文はここ

4 thoughts on “新型コロナとインフルエンザは同時には流行しない?

  1. 必要な薬もあるのでしょうが、ほとんどの薬は症状を緩和するだけの物なのでしょう。
    その効果すら疑わしい、プラセボ的な物も多いと思われます。

    症状は回復の過程でしょうから、薬で抑え込むことはけっして
    体に良くはないのでしょうね。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      一般の人だけでなく、医師の中にも本気でタミフルがインフルエンザの特効薬と信じている人がいますからね。

  2. ウイルス干渉の機序は未解明ですから、明確な説明は誰にも不可能でしょう。
    環境中には発見・分析されていない非病原ウイルスも無数にありますし、一方、免疫学も未解明だらけで研究者や専門家にも先入観による誤解が蔓延しています。

    1. Caesiusさん、コメントありがとうございます。

      私もウイルス干渉はそれほど簡単なものではないのではないかと思います。
      免疫だけでなく人体はわからないことだらけですからね。

Dr.Shimizu へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です