新型コロナウイルスと他のウイルス感染は同時に起きるか?

先日、非常に興味深い記事が出ましたね。(記事はここなど)

昨年12月にパリで肺炎と診断された患者が、新型コロナウイルスによる感染症COVID-19だったことが明らかになった

というものです。昨年12月2日から今年1月16日までの間にインフルエンザのような症状で入院し、最終的にインフルエンザとは診断されなかった患者らについて、凍結保存されていた検体を調べたところ、1人男性の検体に新型コロナウイルス陽性が出たということです。この男性は、昨年12月27日に病院で診察を受けているそうです。そして、この男性自身は肺炎になる前に旅行もしていないそうです。ただ、この男性の妻はシャルル・ド・ゴール空港近くのスーパーマーケットで働いていたので、そこで旅行者との接触がある可能性はあります。

この記事の中では、

アメリカも最近になって、新型ウイルスの流入した時期を修正している。カリフォルニアで行われた検視により、アメリカで最初に確認された新型ウイルスによる死亡例は、当初より1カ月も前に発生していたことが明らかになっている。

と書かれています。また、イタリアでも昨年から原因不明の肺炎が流行していたという記事があります。(ここ参照)

これに対して、WHOは各国にコロナ初期事例の調査要請しています。(ここ参照)中国を擁護するためなのか、それとも新しい発生源が出てくるのか?興味深いですね。

日本も昨年の検体が何か残っているのでしょうか?日本でも昨年から新型コロナが発生していた可能性は十分に有りうるでしょう。そして、さらにインフルエンザ陽性だった人の肺炎についても知らべたほうが良いでしょう。

ある方から新型コロナウイルス感染とインフルエンザは同時にかかるの?と質問されました。答えは同時感染は「ある」です。確率的にどちらかに感染するともう一方のウイルスに感染する確率が減少するかどうかはわかりません。

ウイルスと細菌の相互作用は、例えば、インフルエンザ感染により肺炎球菌性肺炎に対する感受性が約100倍に増加するという、強力ではあるものの短期間の相互作用が確認されています。(ここ参照)

一般的にはウイルス感染は「干渉」すると言われ、あるウイルスに感染すると別のウイルスには感染しにくいと言われています。しかし、現実には同時感染はそれなりに起きているようです。

ウイルス同士の相性などがあるようです。(図は原文より)

(RV =ライノウイルス、IAV =インフルエンザAウイルス(H1N1およびH3N2)、IBV =インフルエンザBウイルス、RSV =RSウイルス、CoV =ヒトコロナウイルス(新型ではない)、AdV =ヒトアデノウイルス、 MPV =ヒトメタニューモウイルス、PIV3 =パラインフルエンザ3型ウイルス、PIV1 =パラインフルエンザ1型ウイルス、 PIV4 =パラインフルエンザ4型ウイルス、 PIV2 =パラインフルエンザ2型ウイルス)

上の図は集団レベルでの月間有病率の相互作用を示しています。青いところが負の相互作用、赤いところが正の相互作用、グレーは未調整の相関で、+は正の相互作用、-は負の相互作用です。

そうすると、インフルエンザのA型はライノウイルスと負の相互作用があります。つまり、ライノウイルスが流行するとA型のインフルエンザは流行しにくくなるのです。実際の報告でも、フランスで新型インフルエンザウイルスの流行が、ライノウイルスの流行により遅れたというものがあります。(その論文はここ

コロナウイルスで見てみると、RSウイルス、インフルエンザウイルスAとBなどと正の相互作用があるようです。新型コロナウイルスではどうかはわかりません。

(略語は先ほどの図を参照。パラインフルエンザウイルスは、PIVA(PIV1およびPIV3:ヒトレスピロウイルス)およびPIVB(PIV2およびPIV4:ヒトルブラウイルス)に分類)

上の図は下のBは無視して、上のAの図は個々の人のレベルでのウイルスとウイルス相互作用を図に示したものです。やはりここでもA型のインフルエンザウイルスはライノウイルスと負の相互作用があるようです。コロナウイルスはRSウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザウイルスの一部と正の相互作用があるようです。

実際に、新型コロナウイルスとの同時感染について調べたものがあります。カリフォルニアで2020年3月3日から25日まで1217検体を調査しました。1217検体のうち116検体(9.5%)は新型コロナ陽性であり、318検体(26.1%)は1つ以上の新型コロナ以外のウイルス陽性でした。新型コロナ陽性の116検体のうち、24検体(20.7%)が他のウイルスに1つ以上陽性であったのに対し、新型コロナ陰性の1101検体のうち294検体(26.7%)が他のウイルス陽性でした。つまり、新型コロナに感染したからと言って他のウイルスに感染する可能性はそこまで低下しない可能性があります。(図はここより)

上の図は同時感染のウイルスの割合です。同時感染は、ライノウイルス/エンテロウイルス(6.9%)、RSウイルス(5.2%)、および新型ではないコロナウイルス(4.3%)などでした。インフルエンザウイルスはA型が1人(0.9%)だけでした。この調査が3月に行われたことを考えると、すでにインフルエンザの流行期のピークを過ぎており、1~2月のピーク時であれば、もっと同時感染が多かったかもしれません。そしてその時期であれば、検査でインフルエンザ陽性となれば、新型コロナウイルスに同時感染していても見逃されていたでしょう。

(図はここより)

上の図は2020年3月1日から2020年4月4日までの間のニューヨークの新型コロナウイルス感染者5,700人のものです。同時感染を調べた1,996人の中で、他の呼吸器のウイルスの同時感染は42人(2.1%)でした。その中で半分以上はエンテロウイルス/ライノウイルス、新型コロナではないコロナウイルスが16.7%、A型インフルエンザは2.4%(1人だけ)でした。

興味深いのは、最も競合しそうな新型コロナウイルスと、これまでのコロナウイルスの同時感染が意外と起きていることです。仲間なので、起きやすいのでしょうか?

さらに最近のLancetにスペインから4例の新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの同時感染について報告されています。(ここ参照)4人は全例新型コロナ陽性で、患者1〜3はそれぞれ53歳、78歳、56歳の男性で、患者4は81歳の女性でした。患者1と2でインフルエンザA陽性、患者3はインフルエンザAとBの両方で陽性、患者4はインフルエンザBで陽性でした。

インフルエンザとの同時感染率を多いとみるのか少ないとみるのかは、何とも言えませんが、同時感染していても不思議ではないでしょう。また、他の呼吸器ウイルスとの同時感染も起きていても不思議ではありません。

このような同時感染が新型コロナウイルスの重症化に影響を与えるかどうかはわかりません。新型コロナウイルスと他のウイルスの同時感染は十分に起こり得ますが、インフルエンザウイルスに限定すれば少ないのかもしれません。また、もう5月なので、現在はほとんどインフルエンザウイルス感染は無いと思います。

世界的に、昨年末ごろからのインフルエンザ陰性の肺炎だけでなく、インフルエンザ陽性の肺炎も、もしかしたら多くの新型コロナウイルス感染が起きていたかもしれません。そうだとすると非常にややこしい話です。全貌はまだまだわかりませんね。

「Virus-virus interactions impact the population dynamics of influenza and the common cold」

「ウイルスとウイルスの相互作用は、インフルエンザと一般的な風邪の人口動態に影響を与えます」(原文はここ

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