血中のビタミンD濃度は日本人のがんのリスクと関連するかもしれない?

日本人の研究で、診断前の血中のビタミンD濃度が、その後のがんのリスクに関連しているというものが発表されました。

「Plasma 25-hydroxyvitamin D concentration and subsequent risk of total and site specific cancers in Japanese population: large case-cohort study within Japan Public Health Center-based Prospective Study cohort」

「日本人における血漿25-ヒドロキシビタミンD濃度およびその後の全体および部位特異的がんのリスク:日本の保健所ベースの前向き研究コホート内での大規模ケースコホート研究」(原文はここ

要約

目的 大規模なコホート研究において、診断前の血液循環ビタミンD濃度とその後の全体および部位特異的がんのリスクとの間の関連性を評価する。

参加者 3301人のがんの症例と、4044人の無作為に選ばれたサブコホート参加者。

結果 血漿中の25-ヒドロキシビタミンD濃度は、全体のがんのリスクと逆相関し、第2四分位〜第4四分位の多変量調整後のハザード比は0.81、0.75、0.78であった。特定の部位でのがんの中では、肝臓癌で逆相関が見出され、ハザード比が0.70、0.65、および0.45であった。

結論 この大規模な前向き研究では、ビタミンD濃度が高いほど全がんのリスクが低くなっていた。これらの知見は、ビタミンDが多くの部位でがんに対して防御効果を有するという仮説を裏付けている。

ビタミンサプリメントの使用者は15%前後だけで、ビタミンD濃度の中央値は冬でも約46でした。サブコホートのビタミンD濃度によって4つのグループに分けたとき、最もビタミンD濃度が高いグループのビタミンサプリ使用率が最も低く、12.9%でした。4つのグループのそれぞれのビタミンD濃度の中央値は36.9、48.4、56.9、72.6でした。50以上が一つの目安だと思いますので、半分以上の人がビタミンDが低いと思われます。

ビタミンD濃度が一番低いグループと比較して、その他のグループの全体のがんのリスクは20%前後低下しました。部位別でみると肝臓がんだけが非常に関連が大きく、30%~55%もリスクが低下しました。

これを読むと、ビタミンDは高い方が良いので、サプリメントを飲んだ方が良いのではと思ってしまうかもしれませんが、それは何とも言えません。ビタミンDがもともと高い人は、そのような食事をしているのであり、そのような生活習慣を送っている可能性があります。逆にもともとビタミンDが低い人は、そのような食事をして、そのような生活習慣なのかもしれません。ビタミンDが低くなるような食事や生活が、がんのリスクを上げているだけであり、ビタミンDの摂取量が大きく問題にならない可能性はあります。

同じく日本人の研究で、食事や運動、年齢や性別などとビタミンD濃度を調べたものがあります。(図は原文の概要版より)

まずは季節との関わりですが、確かに夏が最もビタミンD濃度が高くはなりますが、日照時間が短くなる秋や冬に低下するかというと、最も低いのは3月や4月の春当たりです。この論文では鮭の消費量が秋に高くなるからではと考察していますが、そんなにみんな鮭をたくさん食べるのでしょうか?

さらに、上の図では、男女差がはっきり出ています。男性の方が2倍以上もビタミンDの充足が高いのですが、これは恐らく日焼け止めの影響ではないでしょうか?女性は日焼けを恐れている方が多く、その分日光でビタミンDができるのが激減してしまうからです。そして、意外にも高齢者の方がビタミンDの充足率が高いのです。高齢者の方が日中外にいる時間が長くなるからでしょうか、それとも日焼けを恐れなくなるからでしょうか?

BMIはビタミンDと逆相関しています。私はこれが実際には原因では、つまり肥満がビタミンD濃度を低下させているのではと考えています。これについては今度の記事で書きます。

最後のグラフは鮭のパワーです。食べない人と比較すると毎日のように食べると3.5倍以上の充足です。しかし、毎日のように鮭を食べる人は果たしてどれぐらいの割合でいるのでしょうか?

確かに鮭一切れ(80g)にビタミンDは26.4μg入っているようです。これはビタミンDサプリで言えば1000IU以上になる量です。しかも天然のものなので、最高です。しかし、最近は漁獲量が非常に減っているので心配です。

もちろん鮭を毎日食べてもいいでしょうが、太らないような食生活、つまり糖質過剰摂取を避け、日光をできる限り浴びて、糖質制限食を食べていれば、ビタミンDが低下することは少ないと思います。

「Impact of demographic, environmental, and lifestyle factors on vitamin D sufficiency in 9084 Japanese adults」

「9084人の日本人成人のビタミンD充足率に対する人口統計、環境および生活習慣要因の影響」(原文はここ

2 thoughts on “血中のビタミンD濃度は日本人のがんのリスクと関連するかもしれない?

  1. こんにちは、いつも新しい記事楽しみにしています。これからも宜しくお願います。
    D3のガンに対する効果はAMPKを活性化させ、そのためmTORc1を不活性化、そのためオートファジーの活性化するので、間接的にオートファジーを活性化させるのでしょうか?その前の記事でDとカルシュウムのサプリが良くないような記事が書いてありましたが同時取得が良くないのではないでしょうか。
    私はD3をだいぶ前から健康維持のためにサプリメントを摂取してます。
    メラトニン、シリマリンも同時に摂取してます。

    1. 戸村さん、コメントありがとうございます。
      以前の記事の内容では、ビタミンD単独では悪い結果ではありませんでしたので、
      おっしゃる通りカルシウムとの併用が良くないと考えられます。
      オートファジーに関してはそのように考えていいのだと思います。

      サプリメントが体の中で有効に働いているかどうかは自分では確かめようがありません。
      サプリメントに関してはご自身のご判断で良いと思います。

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