今回はみなさんからいただいたデータで血液データではないのですが、BMIについて書きたいと思います。
糖質制限をすると多くの方は体重が減少します。今回これまで分析した中で、BMIが求められた人の内、糖質制限を行っている人52人のBMIを示します。
上のグラフは横軸がBMIで縦軸が割合(%)です。青いバーは日本人の平均のデータです。きれいな正規分布の山になっています。オレンジのバーが今回のみなさんのデータです。分布はかなり左に寄り、特にBMIが18~21のところに集中しています。18.5~25未満が標準で、18.5未満は低体重という範疇に入ります。25以上は肥満です。25以上の方は非常にわずかでした。逆に18.5未満の方は約17%と比較的高い割合でした。20未満となると実に約46%にもなります。BMIが17を切ってしまう方も数人いらっしゃいました。
実際には糖質制限でBMIがどれくらいであれば理想的なのかはわかりません。現在通常の糖質過剰摂取をしていると考えられる一般の集団でのデータはあるのでご紹介します。
これは日本人の40~59歳の男性19,500人、女性21,153人のBMIと死亡率のグラフです。BMI23.0~24.9を1とした場合のそれぞれの相対的な死亡率のリスクを表しています。一目瞭然で、最も死亡率の高いのはBMI19未満のグループです。30以上のグループよりも死亡率が高くなっています。ただ、BMI19未満のグループにはそれ以下14までの人が含まれています。つまり極度に低体重の人も入っていることになるので、もしかしたらその極度の低体重の方の死亡率の高さがリスクを押し上げている可能性があります。
次の研究です。
これも日本人のデータです。BMI21~22.9までのグループを1として相対的なリスクを比較しています。中年と高齢者をそれぞれ分けてグラフにしていますが、やはり40~59歳の女性を除いて、BMI18.5未満で最も死亡率が高くなっています。
BMI21~22.9のグループとBMI18.5未満との様々なデータの平均値を比較してみましょう。
BMI・性別 | 収縮期血圧 | 総コレステロール | HDLコレステロール | 中性脂肪 | 高血圧の割合 | 脂質異常症の割合 | 高血糖の割合 | 現在の喫煙率 | アルコール66g/日以上 |
18.5未満・男性 | 123.8 | 178.1 | 62.9 | 102.6 | 22.6 | 24.1 | 20.7 | 67.3 | 10.2 |
21~22.9・男性 | 129.0 | 192.3 | 55.1 | 140.0 | 34.7 | 47.4 | 21.9 | 57.5 | 10.5 |
18.5未満・女性 | 119.2 | 192.2 | 67.0 | 85.7 | 15.8 | 23.7 | 11.9 | 9.0 | 0.1 |
21~22.9・女性 | 124.4 | 200.2 | 59.6 | 112.1 | 23.9 | 40.2 | 13.0 | 5.5 | 0.2 |
データを見る限り、18.5未満のグループの方が数値としては良く見えます。21~22.9までのグループよりもHDLは高く、中性脂肪は低いのです。問題は喫煙率です。低体重の方の方がなぜか喫煙率が高いのです。それが足を引っ張っているのでしょうか?
BMIが低いと心血管疾患のリスクは低下すると考えられます。一つ目にご紹介した研究でも女性ではそのようなBMIと心血管疾患の関連が認められています。しかし、その他の疾患による死亡率が高くなってしまうようです。例えばがんなどによる死亡です。
つまり、一般的な日本人の集団では、過体重よりも低体重の人の方が死亡リスクが高いことになります。
糖質制限をしている場合、このような一般的なデータが当てはまるかどうかはわかっていません。しかし私は、やはりあまりにも体重が低下することは健康的ではないと考えます。糖質制限で体重が低下しすぎている方は摂取エネルギー量が少なすぎる可能性があります。糖質過剰摂取の糖質の分を脂質やタンパク質で摂らなければならないので、かなり脂質やタンパク質が必要になると思います。そしてできることなら運動習慣を持って、筋肉をつけましょう。
どうしても脂質は悪いイメージが刷り込まれているので、少な目に摂りがちではないでしょうか?良質の油をたっぷり摂り、あまり体重が減り過ぎないように注意した方が良いのではないかと思います。
「Under- and overweight impact on mortality among middle-aged Japanese men and women: a 10-y follow-up of JPHC study cohort I」
「中高年男性および女性の死亡率に対する低体重および過体重の影響:JPHC研究コホートIの10年追跡調査」(原文はここ)
「Age- and gender-specific BMI in terms of the lowest mortality in Japanese general population」
「日本の一般人口における死亡率が最も低いという点での年齢および性別に特有のBMI」(原文はここ)