ほんのわずかな低ナトリウム血症でも問題があるかもしれない

血中のナトリウム濃度は、本当にびっくりするほど狭い範囲にコントロールされています。これは見事としか言えません。正常値は検査機関にもよるかもしれませんが、135~145mEq/L(mmol/L)とされています。しかし、ほとんどの人は139~142 mEq/L(mmol/L)に納まっています。だから、ちょっと低いと「何か裏に病気が隠れているのでは?」と結構気になってしまいます。

検査上では正常とされている軽度の低ナトリウム血症を研究したものがあります。それによると、ナトリウムの値によって、心血管疾患や死亡率はU字を描いています。(図は原文より)

心血管疾患の既往がない60〜79歳の3099人の男性の前向き研究です。

上の図で上のグラフは主要な心血管疾患の発症率を表し、下のグラフは総死亡率を表しています。グラフを見るとナトリウムが139〜143で最も低い値を示しており、それよりも低くても高くても割合が増加しています。

高ナトリウム血症は高齢者では比較的まれだと思いますが、軽度の低ナトリウム血症は比較的よく見かけます。

この研究では136未満の人は6.7%で145以上の人は1.8%でした。低ナトリウム血症の人に関連していたことは、高齢、糖尿病、利尿薬の使用で、検査値では血糖値の上昇やCRP(炎症のマーカー)、γ-GT(GGT)やALPの上昇などとも関連していました。

逆にBMIおよび筋肉量は、ナトリウムの増加とともに増加する傾向がありました。

つまり、正常の範囲にあっても、ナトリウムが138以下では心血管疾患や死亡のリスクが高くなると考えられます。

ALP上昇の場合、多くは肝障害が疑われますが、腎臓や骨に異常が起きても上昇します。血糖値の上昇が低ナトリウムに関連しているので、食事を考えなければなりません。高血糖は炎症も促進しますので、さらにリスクがあります。

また、低ナトリウムが低BMIや低筋肉量と関連しているということは、痩せすぎや筋肉の低下を起こしている高齢者は注意しなければなりません。タンパク質をしっかりと摂って、筋肉をつけましょう。

高齢者はもしかしたらナトリウムのコントロール能力が低下しているかもしれません。これから夏になって、熱中症や脱水予防に水やスポーツドリンクを大量に飲んでしまうと、一時的にさらに低ナトリウムが悪化してしまうかもしれません。しかも塩分制限は健康的だと考えている人も多いのでなおさらです。(実際には食事の塩分を増やしてもそこまで血清ナトリウムが増加するわけではないともいますが。)本当に脱水予防が必要なのかどうかを考える必要があります。

もし、水分補給をするのであれば、何を飲むか考えなければなりません。スポーツドリンクのナトリウム量は大して多くありません。水と大差がありません。そして大量の糖質を含んでいるので血糖値が急上昇してしまいます。血糖値の上昇はナトリウム値を低下させることを考えれば、リスクを上げる可能性があります。せめてOS-1を飲むようにしましょう。普段の生活であればナトリウムをその場で補わなければならない状況は非常にまれです。1時間くらいのジムでの運動程度なら水分補給は水やお茶で十分です。長時間大量に汗をかいているのでなければ、普通に食事をしていれば、塩分は十分補えます。気になるのであればいつもよりも味噌汁を多めに飲んだり、いつもより少し塩を多く使った料理を食べれば良いことです。

熱中症の予防は涼しい環境にいることです。外で作業や運動をして汗を大量にかいたり、部屋の中でエアコンをつけずに過ごしているのでなければ、そこまで気にする必要がありません。企業の戦略に騙されないようにしてください。汗をかかないように部屋を涼しく保ち、喉が渇いたり、何かで汗をかくようであればそのとき水分を摂れば十分です。夜間寝るときもできる限り涼しくし、トイレに起きるのが嫌だからと水分制限をすることは避けて、寝る前にコップ1杯の水分でも余分に摂れば十分でしょう。

少し昔までは、エアコンもなく、スポーツドリンクもない時代がありました。そのとき夏になる度に多くの人が死にましたか?私の幼少期もそのような時代でしたが、誰も熱中症になったとか、死んだとは聞いたことがありませんでした。現代人は急に弱くなってしまったのでしょうか?(もちろん昔は情報が今よりも遅く、ニュースにならなかっただけで非常に多くの人が死んでいた可能性はないわけではありませんが。)

ナトリウムの話がちょっとずれてしまいました。

やはり、普段から血清ナトリウム値が軽度低下している場合、何か問題が起きている可能性がないか、注意した方が良いかもしれません。

今年のウルトラマラソンの後はナトリウムが138まで低下しました。もちろん一時的ではありますが、いつもしっかりコントロールされているはずのナトリウムが低下するのですから、やはり過酷なスポーツであることは間違いありません。

「Mild hyponatremia, hypernatremia and incident cardiovascular disease and mortality in older men: A population-based cohort study」

「高齢者の軽度の低ナトリウム血症、高ナトリウム血症と心血管疾患の発症および死亡率:集団ベースのコホート研究」(原文はここ

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コメント

  1. 吉川恭彦 より:

    先日の函館マラソン練習不足にもかかわらず何とかサブ4でゴールできました。5月は足首が痛く全く走らず、6月に入っても痛みが続き、大会参加悩みましたが完走目標に出て良かったです。カーボローディングしないフルマラソンでしたが後半でも大丈夫でした。これからも先生の本、ブログを参考に糖質制限食で頑張りたいです。ありがとうございました。

    • Dr.Shimizu より:

      吉川恭彦さん

      フルマラソンサブ4で完走おめでとうございます。天気も非常に悪かったのに素晴らしいですね。
      私も負けないように頑張りたいと思います。