高血圧の真犯人は塩分ではなく、脂肪?ではなく糖質だと思いますが…

新聞を読んでいたら、また怪しい週刊誌の記事を発見。

週刊ポストに「高血圧の真犯人は塩分でなく脂肪だった」と大きな見出しで書いてありました。この記事を直接雑誌で読んではいませんが、一部ネットにあるので読んでみると、真島消化器クリニック院長の真島康雄というドクターの記事のようです。(NEWSポストセブンの記事はここ

そして読んでみると、次のようなことが書いてありました。

「高血圧をもたらすのは塩分ではなく、血管に溜まったプラークである」

「プラークとは脂肪の塊のこと」

「プラークが溜まって血管の内側が狭くなるから、そこを流れる血液の圧力が高まる」

「塩分よりも、脂肪分や糖分を口にしないことで、血管中にプラークを作らないほうが重要」

確かに高血圧をもたらすのは塩分ではありません。塩分は高血圧の直接の犯人ではありません。それには同感です。プラークが溜まりアテローム性動脈硬化が高血圧をもたらすことも同感です。しかし、「脂肪分や糖分を口にしない」と書いてありますが、プラークは脂肪の塊だから、脂肪分を口にしないことが重要だと言っているようです。糖分に関しては賛成ですが、脂肪分に関しては大反対です。では、この方は何を食べて生きているのでしょう?糖質も脂質も摂らないならば、タンパク質だけでしょうか?

その後読んでいくと「太るとリスク3倍」と書いてあるので、肥満が高血圧の原因と言いたいようです。題名にある「脂肪」とは栄養素の「脂質」ではなく、「体脂肪」の意味なんでしょうか?正直、混同していてよくわからない内容です。

栄養素の「脂肪」は非常に重要なものなので、たっぷり摂るべきです。PURE試験にもあったのを覚えている方もいると思います。(「簡単に言えば、脂肪は「善」、糖質(炭水化物)は「悪」」参照)

ですから、題名の「高血圧の真犯人は塩分でなく脂肪だった」というのは非常に誤解を招く題名であることと、内容もピントがちょっとずれています。

もちろん太るという意味での「脂肪」は高血圧と関連しています。しかし、真犯人は別にいます。それはもちろん「糖質」です。特にフルクトース(果糖)です。(図は下記の原文より改変)

インスリン抵抗性は本態性高血圧の患者の80%に認められ、糖尿病でない人と比べて、糖尿病の人は高血圧の有病率が非常に高くなります。そして「インスリン抵抗性=肥満」ではないので、肥満ではないからインスリン抵抗性がないとは言えません。実際に高血圧患者の約50%が高インスリン血症であり、正常血圧の人ではわずか10%です。

また、添加された糖からカロリーの10%未満を消費する人と比較して、添加された糖からカロリーの10.0~24.9%を消費した人は、心血管疾患による死亡のリスクが30%増加します。さらに、添加された糖から25%以上のカロリーを消費する人は、リスクがほぼ3倍高くなります。果糖の消費が74g/日以上の人は独立して、高血圧のリスクが高くなり、砂糖を加えたドリンクの消費も身長や体重と関係なく独立して血圧上昇と関連しています。

若い健康な成人(21-33歳)での研究では、果糖溶液(60g)の摂取は収縮期血圧を6.2mmHg上昇させました。

多くの加工食品やドリンクには果糖をはじめ、糖質がたっぷり入っています。果糖は果物として摂るべきです。果物として摂れば、カリウムも豊富に摂れるため一石二鳥です。(ただ、大量の果物摂取はお勧めしていません。糖質制限ではあくまで少量の果物にとどめましょう)

ある研究ではナトリウムとカリウムのより高い摂取量の人々が最も低い血圧を示し、逆にナトリウムもカリウムも摂取量が少ない人が最も高い血圧を呈したというものもあります。私はナトリウムとカリウムの摂取比は1以下を推奨しています。野菜やきのこをたっぷり食べる糖質制限ではカリウムもたっぷりです。魚もカリウム豊富です。(「塩分制限をしても血圧は下がらないかもしれない」参照)

現在の高血圧のガイドラインでは塩分制限を推奨しています。しかし、塩は人類にとって、生物にとって必須のミネラルです。多く摂りすぎれば排出するだけです。しかし、塩分制限をすると様々な有害な作用をもたらします。高血圧の患者であっても、健康な人であっても血液検査をするとほぼ一定の範囲のナトリウム値を示します。そのように体が調整します。塩(ナトリウム)を大量に摂取した場合、一時的にはナトリウムが増加するかもしれませんが、体はすぐに調節して、一定の範囲にします。だから、過剰な塩分摂取が血液量を増加させて、血圧が上がるという理論はほんの一時的なものであり、間違いです。

糖質制限ではナトリウムの排出が増加するので、さらに塩分制限は良くありません。工業製品として作ったNaClという塩ではなく、天然の良質な塩を摂りましょう。

 

「The wrong white crystals: not salt but sugar as aetiological in hypertension and cardiometabolic disease」

「間違った白い結晶:高血圧および心筋代謝疾患における病因は塩ではなく砂糖」(原文はここ

 

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