ボディービルを行っている人は、ものすごい筋肉をしています。いかにも強そうですが、実際にはレクリエーションレベルの人よりも力が弱いのかもしれません。
医療関係のサイトのCareNetで取り上げられた研究です。単一の筋肉の線維当たりのパワーなどを比較しています。アメリカンフットボール選手、陸上競技選手、重量挙げ選手というパワー系のアスリートと、ボディービルダーと、レクリエーションレベルの対象群の人での比較です。(図は原文より)
上の図は筋肉の断面積です。真ん中のボディービルダーが他のグループよりも筋肉が非常に肥大していることがわかります。
筋肉の断面積ではボディービルダーはアスリートと比較して67%大きく、対象群より88%大きいことを認めましたが、アスリートと対象群では差がありませんでした。
上の図のAに示すようにピークパワーはアスリートではボディービルダーよりも58%高く、ボディービルダーでは筋肉がかなり肥大していたにも関わらず、対照群と差がありませんでした(やや高い傾向はあります)。Bに示すように、ボディービルダーの固有筋力はアスリートよりも98%低く、対照群よりも低い傾向という結果でした。
上の図のAに示すように、最大等尺性張力は対照群と比べて、アスリートでは50%、ボディービルダーでは32%大きくなりました。Bに示すように単位断面積あたりの最大の力は、ボディービルダーではアスリートと比較して63%低く、対照群よりも41%低くなりました。
上の図は横軸が筋肉の断面積を表し、縦軸が単位断面積あたりの最大の力を表します。そうすると断面積が大きくなるほど、つまり筋肉が肥大するほど最大の力は反比例して低下するのです。
つまり、筋肉の過剰な肥大は筋力に悪影響があると考えられます。パワー系のアスリートにおいてのみ、この筋肉増加は、主に筋線維の断面積の増加に起因する単一の筋肉線維のパワーの大幅な増加に関連しているのですが、しかし、ボディービルダーの筋肉のパワーは、著しく肥大した筋線維にもかかわらず、レクリエーションレベルの人の能力と変わらないものだったのです。まあ、考えてみればボディービルの目的は筋肉を大きくすることだけであり、その筋肉の質は問われませんので、当たり前なのかもしれません。
筋肉の収縮スピードに関してはどの群も違いはありませんでした。
アスリートがオフシーズンに筋肉を増強することがあります。よくあるのが野球選手です。
以前の記事「ダルビッシュ選手の食事が気になる。考え方の違いですが…」で書いたのですが、ダルビッシュ選手は筋肉を付けるためにボディービルダーの方式を学んだようです。最近メジャーで非常に活躍している大谷翔平選手もダルビッシュ選手に学んだのか、同じような食事で筋肉を増量したようです。(関連するコラムはここ)
減量期では糖質制限ですが、増量期では糖質過剰摂取です。つまり、非常に重要な筋肉を付けるときに糖質がいっぱいなので、AGEたっぷりで、筋肉の質が低下してしまう可能性が高くなります。そして、AGEたっぷりの筋肉はなかなか新しいものに入れ替わらないので、アスリートの場合、後々問題が出てくる可能性があります。
上の研究でのボディービルダーの筋肉の質の低さも、このような筋肉を付けるときに糖質を過剰摂取することが一因ではないかと考えます。ボディービル方式では筋肉増強=パワー増強とはいかないようです。
筋肉が増強すれば何となくパフォーマンスが上がるのでは、と思ってしまいますが、体の動きはある動きをする主導筋とその反対の動きをする拮抗筋のバランスが重要です。筋トレで上手くそのバランスを崩さずに筋肉が増えれば良いとは思いますが、なかなか難しいのではと思います。
また、筋肉を動かしているのは脳です。筋肉だけが大きくなっても、脳や神経とのつながりが増強しなければ、筋肉が増強した分のパフォーマンス増強は得られません。あるスポーツをしている人がそのスポーツの動きの中で得た筋肉の増強は、脳とのつながりが十分増強しているのでパフォーマンスは向上しますが、筋肉だけを別の動きで増強させて、それをそのスポーツの動きに同調させるというのは時間がかかってしまう可能性があります。逆にパフォーマンス低下の可能性すらあります。
アスリートはボディビル式で筋肉増強を図るべきではないと思います。使えない筋肉はただの重りです。
ダルビッシュ選手も大谷選手も糖質たっぷり、AGEたっぷりの筋肉などによって今後故障しなければいいですね。活躍を期待しています。
「Single muscle fibre contractile properties differ between body-builders, power athletes and control subjects」
「単一の筋線維収縮特性は、ボディービルダー、パワーアスリートおよび対照者によって異なる」(原文はここ)
むかーしから「強い」と「強そう」はなんとなく違うとは思ってたんですが。
筋繊維が太い(≒重い)=強いのであればボクサーの体重:パワー比は説明できないし、以前によく某民放がやっていた素人参加型スポーツアトラクション番組などではボディビルダーは軒並み低成績だったように記憶しています。
どんな競技でもかなり厳しい筋トレが課せられているように思いますが、どうなんでしょう?一番効率が良いのはその競技の動作そのものを強度や速度を上げて余力を生み出すことのような気がしますが、まあ個人の勝手でしょうか(笑)
マラソンでは設楽悠太選手は筋トレやらないと仰ってるようですね(ただしコーラ大好き甘いもの大好きとのことで^^;)。
ねけさん、コメントありがとうございます。
ボディービルはスポーツではありませんので、筋トレをして筋肉を肥大させることは問題ないのですが、
アスリートはやはり気を付けるべきだと思います。
私も同感で動作そのものが一番効率、効果がいい気がします。
使える筋肉って何でしょうか?
ボディビルで鍛えた筋肉は使えないってみなさん言いますが、サッカーで鍛えた筋肉が野球で使えないと言っているようなものではないでしょうか?
ボディビルの場合、ベンチプレスやスクワット等の種目で筋肉を肥大させますが、ベンチプレスやスクワット等に「特化した筋肉」が発達します。
そのため、ベンチプレスの挙上重量はすさまじいものになっています。
これを特異性の原理といいます。
特異性の原理を無視してボディビルの筋肉を使えないというのは乱暴なのでは??
さいとうさん、コメントありがとうございます。
内容をやや勘違いしているように思えます。ボディビルの筋肉はボディビルの種目に特化しているのはその通りだと思います。
ただ、単位断面積当たりのパワーは低いのかもしれません。
また他のアスリートが単に筋肉をつけるとパワーやパフォーマンスが上がるというのは違うと思います。