アテロームはまるでがん細胞のよう?

PETという検査を聞いたことがある方も多いでしょう。がん細胞が正常細胞に比べて何倍ものブドウ糖を取り込むという性質を利用した検査です。ブドウ糖に近い成分(18F-FDG)を体内に注射し、PETで撮影するとがんがある部位にブドウ糖(FDG)が多く集まり、がんを発見することができるのです。がん細胞のエサは糖質(ブドウ糖)なのです。

この検査では炎症を起こしている場所にもFDGが集まって、PETに写ってきます。最近、アテローム性動脈硬化症にもこのPETが応用されてきています。炎症の活動性が高い部位をこのPETを使って画像診断するというものです。アテローム性動脈硬化症は、脂質の蓄積およびマクロファージ浸潤を特徴とする慢性の炎症です。不安定で炎症が強いアテローム性動脈硬化性のプラークとFDG取込み増加の関連性が認められているのです。(図は原文より)

写真で上から4番目(PET/CT)の左と真ん中の写真の矢印の部分が不安定なアテロームがFDGを取り込んでPETで写っている部分です。右側の写真は安定化しているために矢印の部分は写ってきません。

がん細胞は解糖系でエネルギーを得るためにブドウ糖の取込みを激増させています。だから、逆にがんのエサとなるブドウ糖を体内から減らせば、がんを抑制できるのでは?との考えからケトン食ががんの治療食として最近脚光を浴び始めており、いくつもの報告が出てきています。

同じようにアテロームでFDGが集まってくるということは、アテロームのエサがブドウ糖ではないかと考えられます。アテロームに非常に多く存在するのはマクロファージというものです。実はこのマクロファージも解糖系でエネルギーを得ているのです。マクロファージは炎症を起こす刺激をうけると、速やかに解糖系を活性化し、酸素の濃度の低い炎症組織においても活動できるようになるのです。だから炎症時のマクロファージのエサもブドウ糖です。ブドウ糖をエサにして大きくなるなんてアテロームはまるでがん細胞のようです。

糖尿病で心血管疾患が多いのも納得できます。

しかし、マクロファージは後に脂質を自ら合成し、それにより炎症が抑制されるそうです。炎症の後期においてはSREBP1というものが活性化され不飽和脂肪酸の合成が増加し始め、合成された不飽和脂肪酸により炎症は収束に向かうようです。炎症が抑制されれば、アテロームのプラークは安定化したり退縮したりすると考えられます。SREBP1の制御は複雑でまだ私は付いていけていませんが、その活性化をするものの一つがインスリンです。そうするとインスリン抵抗性が高くなると、SREBP1が活性化せずに、炎症がなかなか抑制されないのかもしれません。

そうであるならば、積極的にマクロファージの炎症を促進するようなエサである糖質を摂るよりも、糖質を制限して炎症を抑える方向に持っていく方がアテロームが進行しないと思いませんか?インスリンが非常に効いているうちは良いのですが、インスリン抵抗性が現れたら、アテロームの進行は抑えが効かなくなる可能性があります。

「New methods to image unstable atherosclerotic plaques」

「不安定なアテローム性動脈硬化プラークを撮像する新しい方法」(原文はここ

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする