カロリー制限が寿命を延ばすのではなく、糖質過剰摂取が寿命を縮めているだけ!

先日、カロリー制限でサルの寿命が延びるという記事を取り上げました。しかし、何か変な感じです。研究に使うサルは自由に好きなだけ食事ができる集団とカロリー制限を比べているのでしょう。「自由に好きなだけ食べれる?」という疑問がわきます。つまり、野生であれば好きなだけ食べれるような環境は難しいのではないでしょうか?ということは、カロリー制限の方がむしろ現実の状況に近いわけで、「カロリー制限が寿命を延ばす」のではなく、「食事の摂取の過剰が寿命を縮める」と考える方が妥当だと思うのです。

人間も進化の間、今のようにたくさんの食事ができるようになったのはつい最近のことです。つまり、人類はこれまでの間ずっと飢えていました。現代の食事からすれば、カロリー制限の状態です。だから、カロリー制限が寿命を延ばすのではなく、食事から摂る何かが寿命を縮めているのです。

カロリー制限と寿命についての話をするとき、必ず出てくるのが「サーチュイン遺伝子」です。サーチュイン遺伝子はカロリー制限により活性化される「長寿命遺伝子」として最近話題になっています。このサーチュイン遺伝子が関係して、この研究のサルも寿命が延びたものと考えられますが、このサーチュイン遺伝子もカロリー制限で活性化するというのは変です。人間にとってカロリー制限の方が狩猟採集生活の時代に近いはずです。(それでもカロリー過剰かもしれませんが)つまり、以前はサーチュイン遺伝子は通常の状態で活性化されていたはずです。それが何らかの要因で活性が抑制されてしまっているのです。

サーチュイン遺伝子は現在7種類わかっていますが、一般的にはSIRTと呼ばれてSIRT1~7まであります。SIRT1は細胞内のNAD+というものの濃度によって活性化が制御されています。NAD+はエネルギー産生に重要な役割を果たすものです。NAD+によってSIRT1の働きが強まります。NAD+の量によってSIRT1が活性化するかどうかが変わる。つまり寿命が変わるのです。

エネルギーであるATPを作るには電子伝達系か解糖系によります。電子伝達系の方が大量にATPができます。解糖系はたった2個しかできません。糖質摂取によりグルコースを解糖系でピルビン酸にするときにATPが2個できます。しかし、解糖系では先ほどのNAD+を消費してしまいます。その後TCA回路を経て電子伝達系まで行けばNAD+が大量にできるので良いのですが、TCA回路が回らないと乳酸を作り出してNAD+を確保せざるをえません。そうしないと解糖系が働き続けられなくなります。ピルビン酸からTCA回路に行くにはビタミンB1が必要になります。ですからビタミンB1摂取不足や大量の糖質摂取でビタミンB1を大量に消費してしまうと、NAD+が枯渇してしまいます。

SIRT3はミトコンドリアにあります。SIRT3はカロリー制限により活性化し、電子伝達系の活性を高め、脂肪酸酸化(β酸化)を増強し、ATP産生を増加させるのです。ミトコンドリアが元気になればその人間も元気になり寿命が延びると考えられます。脂肪酸酸化が増加するとアセチルCoAも大量に産生され、そしてケトン体も増加します。ケトン体は様々な臓器でエネルギーとなり、電子伝達系でのエネルギー産生は高まるのです。糖質があるとケトン体の産生は抑制されます。

サーチュイン遺伝子だけでなく寿命、老化にはインスリンに関わるものもあります。例えばFOXOというタンパク質です。FOXOは様々なストレスに対する抵抗力を高める、カロリー制限における寿命の延長や老化による病気の抑制において重要な役割を果たしていることが知られています。このFOXOはインスリンが上昇すると活性が低下してしまいます。インスリンが分泌されるのは血糖値の上昇時です。

つまり、寿命はカロリー制限で延びるのではなく、糖質過剰摂取により縮んでいたのです。今回の研究はカロリーという時代遅れの指標で議論していますが、機序を考えれば糖質制限で寿命が延びるのは明らかでしょう。

カロリー制限でタンパク質が減って寿命が延びると思いますか?体を作る最も重要な栄養素を少なくして寿命が延びるとは考えにくいです。同様に人体に必須の脂質も減らせば良いというものではありません。人体に必須ではないものは糖質だけです。

カロリー制限では骨粗しょう症が増加したり、体重は減ったとしても筋肉も大幅に減少し、タンパク質の糖化(タンパク質に糖がくっ付いて、非常にタンパク質の機能を劣化させたり炎症を起こしやすくし、様々な病気や老化の原因となる状態)は増加するという研究もあります。絶対に一般的なカロリー制限は良くない食事法です。十分なタンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルを摂り、糖質をできる限り減らすようにしましょう。

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