「筋肉博士」山本義徳さんの著書を読んでみました。

以前の記事でダルビッシュ選手が信じている筋肉博士の山本義徳さんのことを少々批判めいたことを書きましたが、何も知らずにただ批判しているだけではだめだと思い、ダルビッシュ選手もお勧めしていた著書を読んでみました。現在筋肉博士の著書はamazonで購入できます。

全部で5冊出されています。業績集というのは山本さん本人のものではなく、一般の研究論文をまとめたものです。

しかし、正直言ってびっくりです。これだけの論文をまとめただけで凄いです。「博士」とダルビッシュ選手が言っているのも理解できます。私が知らなかったことも書いてあるので、ある意味勉強になります。

内容的には先ほども言ったように世の中に発表された研究論文の内容なので、間違いではありませんが、ときどき疑問を感じる部分はあります。しかし、どんなことでも肯定する人もいれば否定する人もいるので、それは考え方の違いです。

また、膨大な数の論文の内容をただ並べた印象はぬぐえません。本当に理解することは非常に難しく、それぞれの専門家でしかわからないほどの内容もあります。私も一生懸命勉強をしていますが、ところどころチンプンカンプンの部分があります。この5冊の内容を本当に理解していてこの本を書き上げたのなら、私も是非師事したいくらいです。

さらに、このような研究というのは非常に難しく、実際の現場で本当に役立つかどうかはわからないこともあります。動物実験は人間に当てはまらないこともありますし、条件設定で一方は何かを与えもう一方はそれを与えないという場合、そんな極端なことが日常にあるのか?ということもあります。また、「○○という成分を摂取すると△△に良い」という場合も、実際の食事では○○だけを摂っているわけではなく、他にもさまざまな成分が摂取されます。それぞれの相互作用などを考えると、その時には本当に同じ効果が得られるかは疑問なのです。例えば「亜鉛」という成分が体に良いと言っても、同じく体に必要と言われている「鉄」を同時に摂ると吸収が阻害されてしまいます。

人間の体は非常に複雑で、さらにものすごい適応能力があります。ある成分があればあったで、それを利用しますし、無ければ無いで別のもので代用することもあります。また、体の中で作ることができるある成分を口から摂取した場合、十分に足りているとからだが判断すると自分自身で作ることをしなくなってしまうこともあります。ステロイドなどはまさにそうです。

この著書を読んでいると、一体いくつのサプリを飲まないとダメなの?と思ってしまいます。これも考え方です。サプリを積極的に使うか、消極的かは考え方の違いです。先ほども書いたように人間の体は複雑かつ適応能力があります。サプリを大量に飲むとそれに適応しますが、複雑が故、本来の人体の絶妙なバランスを崩しかねません。

食事で足りない部分をサプリで必要なだけ補うのは、問題ありませんが、○○に良いからこのサプリ、△△に良いからあのサプリ、というのは近視眼的と思ってしまいます。

例えば、ビタミンCのサプリを大量に摂っている人がいます。確かにビタミンCは体に必要なものです。抗酸化作用もあり健康に良いイメージもあります。そして人によってはビタミンCが「水溶性」なので数時間で尿から排泄されてしまうので、数時間ごとに摂らなければならない、と言います。しかし、人体が本当に必要な成分を簡単に尿に排出するでしょうか?それ以上体には必要がないから排出しているのだと思います。もちろん、ストレス過多などで通常より多くの量を必要とする場合もあるかもしれませんが、毎日大量のサプリで補う必要もありません。(がんの患者さんが高濃度のビタミンCを点滴投与することは、また別の意味がありますので、勘違いしないでください。)食事でビタミンが摂れている状況であれば何ら問題はありません。確かに現在の食材は栄養価が昔より落ちている可能性はあるので、不足気味になってしまう可能性はあります。

ではアスリートはどうか?先ほどの適応能力と十分に考えられた食事をしていればサプリは必要ありません。アスリートなのに不摂生をしているのなら話は別ですが、その場合はその方の自覚の問題です。

よくアスリートは筋肉を付けるのにプロテインが必要だと、積極的に飲んでいる人もいます。しかし、これも競技の種目によると思います。確かにダルビッシュ選手が言いうように筋肉があった方が同じ球を投げるのに力が少なく済むのはあると思います。だからピッチャーやホームランを狙うバッターであれば筋肉が必要なのかもしれません。しかし、イチローのようなヒットを狙い、足も速い選手を目指す場合、筋肉はあまり必要ではないでしょう。ヒットはパワーではなくバットコントロールというテクニックですし、筋肉で体重が重くなれば速く走れなくなることもあります。サッカーの選手は皆さん筋肉はありますが、ゴリゴリのマッチョはいません。種目による適した筋肉は適したところに付き、必要がない筋肉は成長しません。

日本では、体を作るために「白米」を大量に食べさせる指導を行っている頭の古い指導者がまだいます。下半身を鍛えるためにただただ走らせることをする指導者がまだいます。ダルビッシュ選手はそのような指導に疑問を投げかけているのでしょう。もっと栄養について勉強し、体づくりについて勉強しないとダメだということでしょう。「一流アスリートの食事、勝負メシ」でもいまだに炭水化物をいっぱい食べる食事を勧めています。炭水化物で60%食べていてはアスリートに必要なタンパク質や脂質の量は満たせません。

ダルビッシュ選手の先日のつぶやきが気になりいろいろと記事で書きましたが、文章が非常に短く、恐らく私の捉え方の違いもあったのかと思います。脂質を摂らない柳田選手の食事に対してのコメントから派生したので、話の前提条件が良くわからなくなってしまったのだと思います。TwitterなどSNSでの発言やその捉え方には注意が必要ですね。これからもダルビッシュ選手を応援していきたいと思います。

ただ、やはり気になるのは筋肉博士です。Wikipediaにも「山本義徳」という項目があるぐらい有名な方なのですね。その一部を抜粋します。

1991年、東京都パワーリフティング選手権大会にて優勝後、ボディビルダーに転身。

山本はボディビルダーに転身する前も、剛力の持ち主としてパワーリフティング界ではある程度の知名度があった。特にベンチプレスを得意とし、ドーピングチェックのない原宿にあるスポーツ用品店主催のベンチプレス大会で数多くの優勝を成し遂げている。その挙上記録は当時の全日本大会の公式記録を超えることさえあったという。なお、自己ベストは260kg(非公式)。

その後、本格的にボディビルダーに転身し活躍するが、1995年からアナボリックステロイドを使用し始め、現在は使用を公にしている。1999年11月18日放送のTBS「ZONE」では、アナボリックステロイドを服用しながらトレーニングを積んで究極の肉体を目指す山本の日常が特集された。

また、ノンフィクション『果てなき渇望』(増田晶文著)で、たとえ薬物使用禁止の大会だろうとコンテスト当日の検査でクリーンでさえあれば、「例えばバスケットボールで試合時間を引き延ばすために、わざとファウルするのと同じ」であるとして、ルール上まったくなんの問題もないという独自の見解を示している。しかしその一方で、「ベンチプレスの重量を体重の2~3倍にする程度のことならば、アナボリックステロイドは不要」とも語っている。

ボディビルダーとしては、日本人で数少ないヘビー級で戦える選手。試合にそれほど強いタイプではないが、それでも海外の大会で優勝を収めた。

赤字で書いた部分が非常に気になります。ドーピングに対する考え方があまりにもアスリート的ではないことです。だから、あれだけサプリを勧めているのかもしれません。もちろん、自分自身だけの興味で、薬を使ってでもどれだけ筋肉が増やせるのか試してみるのは、個人の自由です。しかし、一流のアスリートを指導するのには不適切な考えだと言わざるをえません。現在はこのような考えは捨てて、クリーンな姿勢を持っていることを願うばかりです。

2 thoughts on “「筋肉博士」山本義徳さんの著書を読んでみました。

  1. こんにちは。

    「人体が本当に必要な成分を簡単に尿に排出するでしょうか?」
    という一文に「ハッ」としました。

    たしかにすぐ排出されるビタミンが
    そもそも人間に必要なものなのか?
    っていうのはその通りですね。

    ビタミンサプリはすぐに排出されてしまうので
    寝る直前に飲むのがよい、
    とアドバイスされてることが多くて
    わたしも素直にそれに従っていたんですが
    あんま意味ないのかな~ともちょっと思いました。

    しかし筋肉博士のポリシーすごいですね。
    勝ちさえすればなんでもアリ、ってことなのかな。

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