新型コロナウイルスの死亡率はそれほど高くなく(2%程度、40代以下は1%未満)、若い方や健康な方はそこまで恐れなくても良いのではないかと思いますが、昨日センセーショナルな動画が公開されました。
岩田健太郎先生がクルーズ船の中の状況をYoutubeで発信し、大きくメディアにも取り上げられました。しかし、今日になって動画は削除されました。まあ、いろんな人、いろんなところから、圧力があったのでしょうかね?岩田先生の動画に反論して、高山義浩先生がFacebookでコメントしています。この高山先生のコメントを使って今度は岩田先生を叩き始める人も出ています。
文章を読むと高山先生は非常に柔らかい表現をされている印象がありますが、一方の岩田先生は攻撃的な表現ですし、船内でも専門家として見るに堪えず、高圧的な感じだったかもしれません。対応としては高山先生の方が「大人の態度」ではありますが、悪い意味で「日本的」でもあります。「下船していく乗客の方々、現場で頑張っている方々を追い詰めかねない内容」という表現も日本が得意とする精神論としか思えません。
でもいろいろ疑問があります。高山先生のコメントでは「船内におられたのは2時間弱」と言っていますが、だから?2時間で何がわかるの?と言いたいのでしょうが、そんな短い時間でもわかるほど酷かったのかもしれません。
「課題は多々ありながら、これまで少しずつ改善させてきました。まだまだ改善の余地はあります。」
少しずつ改善では、感染が広まっている可能性があります。十分ではなくても頑張っているんだから許して、という話ではありません。2月14日付の厚労省の「クルーズ船内で医療救護活動に従事されている皆様へ」という文書を読むと、ずさんさが浮き彫りになっています。この文書は2月12日、クルーズ船内で検疫業務に従事していた検疫官が感染したことが判明しましたことによるものです。内容を引用します。
クルーズ船内の医療救護活動に従事していただいている皆様により安全に活動していただくため、以下のとおり、感染防護策を強化することとしました。
<感染防護方法>
【検体採取業務など(乗客・乗員のマスクを外して行う業務を行う方)】
・フェイスシールド(ロングタイプ)、フルフェイスマスク又はゴーグルの着用
・サージカルマスク又は N95 マスクの着用
※ただし、N95 マスクは使い方に習熟している者に限る
・アイソレーションガウンの着用
・サイズに合った手袋の装着
・手指消毒剤を携帯し、手指衛生を徹底
・なお、手袋は、1 人の患者から検体採取等を行う度に交換する。また、その他の防護具は、1部屋ごとに手技が終了したら交換する。
・長時間連続して業務を行う場合は、3時間に1回は 30 分以上の休憩を取る。
【上記以外の業務を行う方】
・飲食等を行う以外では、サージカルマスクを常に着用
・客室における業務では、手指消毒剤を携帯し、入退室時の手指衛生を徹底
・なお、長時間にわたり問診等を行う場合は、サージカルマスクに加え、フルフェイスマスクの着用を検討する。
つまり、上記に書かれていることがそれまでは行われていなかった可能性があります。この対策強化がいつから行われていたかはわかりませんが、検疫官の感染判明が12日なので、それまではこれらのことさえちゃんと行われていなかった可能性が高いのです。
特に気になったところは赤字で示していますが、まずはサージカルマスクとN95マスクについてです。以前の記事「マスクの効果が良くわかる本」でも書いたようにサージカルマスクは感染防御にはあまり意味がありません。武漢から日本人が帰国した時の様子を思い出せてほしいですが、みなさんサージカルマスクでした。一方クルーズ船から脱出してアメリカに帰国したアメリカ人は全員N95マスクを着用していました。日本はサージカルマスクの性能を過信しすぎていると思います。一般の人であればわかるのですが、検疫官や厚労省の人間までそのような状態です。 N95マスクについては「N95マスクは使い方に習熟している者に限る」とあります。危険な任務に就く人には習熟させれば良いだけの話です。習熟するのに何日も必要ですか?
さらに、もっとびっくりする内容が書かれています。「手袋は、1 人の患者から検体採取等を行う度に交換する。また、その他の防護具は、1部屋ごとに手技が終了したら交換する。」
つまり、それまでは誰がウイルスを持っているかわからない状況で、一人一人に対して、手袋の交換さえしていなかった、防護具も取り換えていなかったのです。それは感染が広まるはずです。厚労省は今の時点で追及されば、「ちゃんと交換していた」と言うでしょうが、していなかったからこそこのような文書が出るはずです。
クルーズ船に乗っているアメリカ人医師の告発もウォールストリートジャーナルに載っています。(その記事はここ)この中でこの医師は「自分は陰性だと聞いて驚いた。ウイルスが山火事のようにこの船を駆け巡ったと分かっていたからだ」「例えるなら、われわれを感染させるために培養用シャーレに入れたようなものだ」と、逆に陰性であることに驚いているほどです。さらに「船室には、多いときで一日に10回も、食事や必需品、励ましのチョコレートを持った乗組員がやってきた。乗客たちはマスクもせずにバルコニーで洗濯物を干していた。バルコニー越しに身を乗り出して隣室の乗客とおしゃべりする姿もあった。」と書かれています。そして、この医師の妻は陽性でした。
1日何回も来る乗組員が陰性であることは恐らく確定していないでしょう。また、報道でもあるように乗客は歩き回っています。本来は部屋から出てはいけない人も出ていた可能性もあるでしょう。
今日になって事務業務に携わっていた厚労省職員の感染が判明しました。事務業務が危険なレッドゾーンで行われているとは思えませんから、やはりゾーニングがちゃんとしていない証拠でしょう。
これから下船した人の話が出てくるでしょうから、どれほど悲惨な状況だったかが明らかになるでしょう。
ある記事によると、今回下船した人の中には、乗客がそれぞれの部屋に隔離された2月5日よりも前の検査で陰性の結果が出て、その後の検査は行われずに下船した人もいるようです。この記事の夫婦は2月4日に、新型コロナウイルスの検査を受けたそうです。そんなんだったら、最初から症状のない人を全員下船させても変わらないレベルではないでしょうか?隔離が有効だったとしても、隔離前の検査結果はそのまま再検査なしでいいのでしょうか?中途半端というか、何というか…
様々な立場の人がいるので何が正しいというのは一概には言えないと思いますが、しかし、今回のことに関して、私は国を信じる気にはなれません。
厚労大臣は想定以上の感染者が出たと言っていますが、ではどれくらいを想定していたのでしょうか?海外の乗客から今後訴訟が起きるかもしれませんね。
ただ、3,700人という人数を一度に隔離すること自体が非常に難しいことなので、このような対応だったと思いますが、乗組員を含めてとにかく早く検査をして陰性者と陽性者を分けて下船させ、陰性者をどうにか自宅などで隔離することが優先されたのかもしれませんね。非常に難しい問題ですが。
いずれにしても、早く収束して欲しいですね。