新型コロナウイルスと血栓症 その4 ますます肺塞栓に注意

先日の記事「新型コロナウイルスと血栓症 その3」では、今回の新型コロナウイルスは血栓がメインの病態ではないかと書きました。

ニューヨークの報告(この論文参照、プレプリント)を見ると、死亡した方と生存している方を比較すると、死亡した患者の平均はCRPは22mg/dL、LDHは513U/L、CKは659U/L、Dダイマーは2.7μg/mL(2を超える人は63%)。退院した患者の平均はCRPは7.56mg/dL、LDHは333U/L、CKは146U/L、D-ダイマーは0.83μg/mL(2を超える人は22%)でした。CRPなどの炎症のマーカーはどちらも当然上昇していましたが、その値はかなりの差がありました。CK(LDHも?)という筋肉が壊れたときに高くなるマーカーも死亡した人では大きく増加していました。心筋炎や筋肉の炎症で筋肉が崩壊したとも考えられますが、血栓により血流が途絶えて崩壊した可能性もあります。症状に多い筋肉痛ももしかしたら筋肉の微小な血管が詰まったり、強い倦怠感も心筋の微小血管が詰まったりして起きているのかもしれません。

凝固亢進のマーカーであるD-ダイマーは死亡した人では2超える人が63%であり、生存者の3倍近くになっていました。

他の研究では肺の造影CT検査を受けた106人(67/106(63%)の患者では肺塞栓症の疑いであり、39/106(37%)の患者ではその他のCT適応症)の新型コロナウイルス患者の32人、30%に急性肺塞栓症が認められました。新型コロナ感染における肺塞栓症の患者は、肺塞栓症のない患者よりもD-ダイマーが高く、6.11対1.92µg/mLでした。2.66µg/mLを超えるD-ダイマーの感度は32/32、100%でした。(この論文はここ

症例報告では多発した血栓による多臓器の塞栓症を報告しています。(図はこの論文より)

上の図は肺のCTです。矢印の部分に血栓を認めます。

上の図は胸部と腹部のCTですが、Aは大動脈の部分に血栓、Bは左の腎臓に大きな梗塞像を認めます。

上の図は脳の血管造影です。矢印の部分、脳底動脈に血栓を認め、Bは血栓除去をした後で、血流再開を認めています。この84歳の男性患者は、発熱、息切れ、咳、および腹痛が2週間続いた後急変し、救急搬送され上のような多発した血栓を認めました。残念ながら次の日に亡くなっています。

これだけの血栓があるので、当然D-ダイマーは高く、21.6μg/mLでした。

中国武漢の報告でも、D-ダイマーが0.5μg/mLの人と比較して、1を超えると18.42倍死亡リスクが高まりました。(図はこの論文より)

上の図は入院した患者の発症からのD-ダイマーの時間的変化です。青色の線が生存群で、赤色が死亡群です。

最初の肺塞栓の研究で、2.66µg/mLを超えるD-ダイマーにおいて100%肺塞栓を認めたということ、ニューヨークで死亡した人のD-ダイマーの平均は2.7であり、2を超える人は63%いたころ、武漢では1を超えると大きく死亡率が上がることから、新型コロナウイルスの重症化や急変は、恐らくは急速に血栓症、特に肺塞栓が起きているのだと思います。肺のCTでは肺炎像ばかりに目を向けられますが、恐らく危険性は血管の方が大きいのではないでしょうか?

路上で亡くなった人は恐らく、大きな血栓が肺の血管に詰まって、急速に心停止まで行ったのだと思います。

そうすると、PCR検査時や最初の検査時の血液検査により、D-ダイマーが0.5または1以上の人は、症状にかかわらず入院し、禁忌でなければ予防的に抗凝固薬を投与するのが良いのではないでしょうか?ワーファリンでは効果が出るのに日にちがかかるので、リクシアナなどを続ける方が良いのではないかと思います。そうすればかなり重症化が防げるかもしれません。

2 thoughts on “新型コロナウイルスと血栓症 その4 ますます肺塞栓に注意

  1. 突然の岡江久美子さんの訃報でした。
    癌治療後で免疫力が低下していた、との報道もあります。

    ネットニュースではありますが、「本人は山芋や黒大蒜を摂るなど、免疫力には気を付けていた」との娘さんのコメントが載ってました。

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      岡江久美子さん、本当に残念ですね。
      免疫力がどうだったかはわかりません。そう考えないと納得できないからではないかと思います。

      山芋が免疫力を上げるというエビデンスは聞いたことがない(にんにくは多少あります)ですが、はなまるマーケットなどの情報番組で得られる知識は
      せいぜい「3食しっかりと」「バランスよく」「野菜はヘルシー」というレベルでしょうね。

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