TEDで発表された、動物の道徳観に関する動画です。(動画の右下のボタンをクリックすると日本語訳で見ることもできます)
見事に2匹で助け合って、エサを獲得するサル。1匹が後ろでエサをもらうとさぼってしまい、もう1匹が「お前も手伝えよ!」と言ってるかのように肩をたたく場面。そして、最後は不公平に激怒するサル。1匹はご褒美にブドウ、もう1匹はキュウリ。この扱いを受けたサルは面白い反応をします。
サピエンス全史を読むと、人間とサルの能力は大きく違わないのに、なぜ人間がこのように地球を支配したかというのは、それを分けたのは想像力・フィクションを信じる力だということです。動物は現実しかわかりませんし、信じません。人間は架空の物語でさえ信じてしまうことができます。それが大きな力になったということです。
しかし、動物は人間以下の存在と思っているのは人間だけです。それも想像の世界です。それぞれの動物がそれぞれの特徴や能力の違いを持っており、人間はたまたま知的な能力が他の動物よりも優れているだけの話です。
ただその知的な能力も、人間が作り出した人工知能に劣る時代がやってきています。人間にとって代わることができる人工知能やそれを備えた機械やロボットがどんどん普及すると、言葉は悪いかもしれませんが、「不必要な人間」(サピエンス全史の著者の言葉です)がいっぱい増えてしまいます。そのような時代の中で人間が何をして、どのように生きていくか非常に難しい問題です。爆発的に増え続ける人間がどのような意味を持つのでしょうか?
動物の世界では否応なしに、自然が淘汰します。増え過ぎれば何らかの生存競争が起こり、自然と数が減ります。もしかしたら人間も動物ですから、近い将来生存競争をしなければならないのでしょうか?
せっかく知的な能力を持っているのに、これから先どうすれば良いか?という答えをいまだに出せずにいます。人工知能はどんどん成長し、人間の一部の能力をすでにはるかに上回っています。自分たちが作り出したものによって自分たちが苦しめられるような状況が訪れているのです。
ちょっと前に、大手の銀行が大量の人員削減を発表しています。世界中でキャッシュレスが進み、スウェーデンはすでに現金使用率が2%だそうです。銀行という存在さえなくなる時代が来るかもしれません。人間なんか必要のない仕事がどんどん増え、大量の「不必要な人間」が生産されます。この先、大量に余った人間が新たな仕事を創造できるのでしょうか?新たに仕事を作らなければ、どんどん人間の仕事は減ります。格差というレベルではなく、仕事がある人と無い人になるかもしれません。探す仕事さえ存在しない状態です。動画のサルのように、不公平だと言って機械に怒っても、機械は知らん顔です。
一度人工知能や機械にとって代わった仕事を、人工知能や機械と戦って奪い返すことができるのでしょうか?ロボット対人間の戦争はあながち「想像」の世界ではなくなってきているのではないでしょうか。
近未来は悲惨なSF映画のようになってしまうのか、バックトゥーザフューチャーのパート2のように楽しそうな時代になるのでしょうか?動物よりも人間が上の存在で、地球を支配していると思っていられるのも今だけでしょう。人間がそれを超えるものに支配され始めているのですから。しかし、やはり人間はそれにも勝る知能を持ち合わせ、それをも凌駕する存在になると期待したいと思います。