痛風はただ痛いだけではない 心血管疾患のリスク

痛風がかつては贅沢病などと悠長な言い方をしていた時代があります。

今は痛風は心血管疾患の危険因子と言われています。どれほどのリスクがあるのでしょう。

下の図はAが心筋梗塞(女性)、Bは心筋梗塞(男性)、Cは脳卒中(女性)、Dが脳卒中(男性)のグラフです。そして、青いバーは糖尿病と痛風両方を持っている人、赤いバーは糖尿病だけ、黄緑のバーは痛風だけ、紫のバーは糖尿病も痛風も無い人です。(図は原文より)

 

すると、糖尿病のみの患者と比較して、痛風のみの患者では、心筋梗塞のリスクは19%低く、脳卒中のリスクは同等でした。

また、糖尿病のみの患者と比較して、痛風および糖尿病の両方の患者は、心筋梗塞のリスクが35%高く、脳卒中のリスクが42%高くなっていました。

糖尿病も痛風もない人と比較して、心筋梗塞のリスクは痛風で53%、糖尿病と痛風の両方の患者で155%も高くなっていました。

つまり、痛風は非常に心血管系の危険因子であり、糖尿病と負けず劣らず危険な病気です。糖尿病も痛風もある場合は糖尿病だけよりもさらに上乗せした危険があります。

私は痛風の原因はビールなんかではなく、「果糖」だと考えています。

 

「Is gout a risk equivalent to diabetes for stroke and myocardial infarction? A retrospective claims database study」

「痛風は脳卒中や心筋梗塞に対して糖尿病と同等のリスクですか?後ろ向き請求データベース調査」(原文はここ

4 thoughts on “痛風はただ痛いだけではない 心血管疾患のリスク

  1. シミズ先生
    はじめまして。いつも有用な記事をありがとうございます。いろいろと学ばせていただいております。
    私は尿酸値が高いので、今回の記事はとても興味深く拝読しました。
    痛風といえば、発作による痛みが注目されがちですが、心筋梗塞や脳卒中も怖いのですね。
    糖尿病ではありませんが、健康を意識してスーパー糖質制限をしています。
    そのせいか尿酸値が10mgになり、基準値をオーバーしていて高尿酸血症です。
    幸い痛風の発作は起きていませんが、いつ起きるかと怯えています(笑)
    このグラフでは「痛風」となっていますが、高尿酸血症と置き換えることもできるのでしょうか?
    それとも、あくまで痛風の発作が起きていることが前提なのでしょうか?

    1. シンさん、コメントありがとうございます。
      糖質制限をして尿酸値が高くなるのは通常はエネルギー不足と言われています。
      私も60時間断食前後では5.3から7.9に増加しました。
      その他様々な理由で尿酸値は上がると言われています。例えば激しい運動でも上がると言われていますが、
      実際には私の場合、100km走った次の日の血液検査では通常の値と変化ありません。

      さて、高尿酸血症と痛風についてですが、私はイコールではないと考えています。
      高コレステロール血症がアテローム性動脈硬化症とイコールではないのと同じです。
      痛風は尿酸値が上がることが原因と書いてあることも多いですが、
      尿酸値が上がることだけでは痛風にはなりません。尿酸塩が結晶化して関節に蓄積して
      それを白血球が攻撃して痛みを出すと言われています。
      しかし、それも何か説明としては無理な部分もあります。
      実際に痛風発作時に尿酸値が正常値であることも珍しくありません。
      また、痛風発作が最初に起こるのは足の親指が最も多いのですが、
      どうして中指や小指などではないのか?非常に疑問です。

      尿酸値が上がることと、痛風を起こすことの間にもっと何か大きなことが起きており、
      それがあるかないかで痛風になるかどうかが決まるのでは?と考えていますが、
      まだ、勉強不足です。ただ、果糖は関連していると思っています。

      この記事のグラフは「痛風」のもので、高尿酸血症に置き換えない方が良いと思いますし、
      特に糖質制限をしている人には当てはまりません。糖質制限を始めたばかりだと一時的に尿酸値が上がることがありますが、
      通常は数カ月で正常値になります。しっかりエネルギーを摂取して、経過を見ていただければ大丈夫だと思います。

  2. シミズ先生
    丁寧かつ詳細なご説明ありがとうございます。
    先生の説明がとても分かりやすく、仰る疑問点についても納得です。

    >尿酸値が上がることだけでは痛風にはなりません。尿酸塩が結晶化して関節に蓄積して
    それを白血球が攻撃して痛みを出すと言われています。

    尿酸値が上がっても、結晶化しなければ問題ないということですね。

    >尿酸値が上がることと、痛風を起こすことの間にもっと何か大きなことが起きており、
    それがあるかないかで痛風になるかどうかが決まるのでは?と考えていますが、
    まだ、勉強不足です。ただ、果糖は関連していると思っています。

    もし果糖が原因だとすれば、糖質制限者は大丈夫ですね。

    身近な痛風ですら、まだ解明できていないことがあるのですね。
    エネルギー不足や激しい運動、断食、糖質制限初期に尿酸値が上がることは、江部先生のブログで知り、知識として持ち合わせていました。
    特にエネルギー不足については、便秘の原因にもなるようで、不足しないよう気を付けています。(実は便秘気味でもあります)
    厚労省推奨のエネルギー摂取(3000kcal)を心掛けていますが、空腹感がないので食事は一日2食にしています。
    46歳男性、スーパー糖質制限歴1年半ですので、そろそろ尿酸値が下がってきてもいい頃だと願っているところです。

    1. シンさん。
      エネルギー不足ではないようですし、期間の問題でもないようです。

      はっきりしたことは言えませんが、糖質制限をした場合の尿酸値の基準値(正常値)は
      これまで糖質過剰摂取していた人の基準値とは違うのでは、と考えています。
      これはコレステロール値にも当てはまります。
      データがそろわないとわからないですが。

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