体内の貯蔵鉄を推定するためにフェリチンの測定はあまり意味がない

鉄は生物にとって非常に重要なミネラルですが、どれぐらい体の中に鉄が貯蔵されているかは肝生検をしなければ正確にはわかりません。採血によるフェリチン値やトランスフェリン飽和度などで推定ができると思われています。しかし、フェリチン値は様々な要因で変化するために、貯蔵鉄の量を正確に反映しているとは言い難いです。(「フェリチンは鉄の貯蔵量を反映していない!」参照)

軽い風邪などをひいた後にフェリチン値は上昇しますが、風邪が治った後3週間たってもまだフェリチン値は上昇しています。ちょっとした炎症でもフェリチン値が変動するとなると、どんなタイミングで測定するかで、値はかなり異なってきます。そんな変動をするマーカーで貯蔵鉄の量を推定するのは危険かもしれません。激しい運動後の炎症でもフェリチン値は増加します。でも、鉄は減っている可能性の方が高いです。あくまでフェリチン値は参考値であり、ヘモグロビン値などと共に総合的に判断すべきでしょう。

以前の記事「フェリチンの疑問がかなり解けた! フェリチンは細胞が死んだときに上昇する! 鉄はやっぱり危険!」でも書いたように、フェリチンは細胞が壊れて血液中に出てくるものです。フェリチンがどの位の値を示すのが健康的なのかはよくわかりません。しかし、様々な研究では、高すぎるフェリチン値は様々な疾患のリスクとなります。それはフェリチンが細胞が壊れたときに出てくるものであることを知れば、当然のことだと思います。

食事で、赤肉は非常に鉄を多く含みます。例えば、和牛もも肉赤肉100gには2.7mgの鉄を含みます。ある研究で8週間炭水化物の代わりに赤肉を食べることによる変化を調べたものがあります。1日に200g前後赤肉が増加したことにより、血液の鉄のマーカーはどうなったでしょうか?

食事から摂取した鉄の量は確実に増えているにもかかわらず、赤肉を食べた群ではフェリチン値が17μg/L低下してしまいました。コントロール群と有意差はありませんでしたが、普通の考えでは驚くべき結果かもしれません。さらに血清鉄は19μg/dL(3.4μmol/L)低下し、トランスフェリン飽和度は5.2%も低下してしまっています。どちらも有意差ありです。しかし、赤肉によりヘモグロビン値は2g/dL増加し、赤血球数も5万/μL増加しているのです。

つまり、確実に体内の鉄は増えて、赤血球は増加しているのに、貯蔵鉄のマーカーであるフェリチン値とトランスフェリン飽和度は低下しているのです。これにより「肉を食べると体の鉄が失われる!」と短絡的な結論を出す人もいるかもしれません。

他の研究でも同様の結果が得られているものもあり、しかも肉の代わりに肉に含まれる鉄と同じ量をサプリメントで鉄を補給した場合には、フェリチンはサプリメント群の方が肉を食べる群より高かったのです。肉をたくさん食べる群は貯蔵鉄を反映するマーカーの低下を認めました。これにより、「肉を食べるよりもサプリメントの方が有効である!」と短絡的な結論を出す人もいるかもしれません。

もしかしたら、炭水化物(糖質)を肉に置き換えているので、糖質摂取量が減少したことによる影響があるのかもしれません。数字だけで考えると、糖質を肉に置き換える方がフェリチン値は増加するのですから、「糖質をしっかり摂りましょう!」といった間違った考えになります。しかし、フェリチンが細胞の死によって増加することを考えれば、糖質摂取量が減り、糖質による炎症も減り、フェリチン値が低下したとも考えられます。いずれにせよ、フェリチン値で貯蔵鉄を推測するのは非常に無理のあることだということは言えると思います。

高い貯蔵鉄=高いフェリチン値ではありません。フェリチン値の測定により貯蔵鉄の推測は無理だということです。

「Increased lean red meat intake does not elevate markers of oxidative stress and inflammation in humans」

「増加した赤身肉の摂取は、ヒトの酸化ストレスおよび炎症のマーカーを上昇させない」(原文はここ

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