北里大の山田悟先生のところからの論文です。山田先生は以前から緩やかな糖質制限を推奨しています。いわゆる「ロカボ」です。
今回、2型糖尿病の患者さんに、3年間にわたり緩やかな糖質制限を行った結果を発表されています。1食の糖質量を20~40g、1日量で70~130g、少なくとも1日に1回10gまでの炭水化物を含んだ間食や飲み物を認めています。カロリーは制限していません。
山田先生はちゃんと糖質制限をしても、途中で脱落してしまい、結局元の食事に戻ることを恐れて、持続可能な緩やかな糖質制限を推奨しているのだと思います。
その3年間の結果は、下のようです。(図は原文より)
介入前 | 12か月後 | 24か月後 | 36か月後 | |
HbA1c(%) | 8.0±1.5 | 7.3±1.2 | 7.4±1.2 | 7.5±1.3 |
LDL-C(mg/dL) | 116.1±33.0 | 107.2±28.2 | 108.1±26.7 | 106.7±26.9 |
HDL-C(mg/dL) | 59.0±15.9 | 61.7±16.7 | 61.2±16.9 | 59.8±18.3 |
中性脂肪(mg/dL) | 146.6±120.7 | 142.7±137.4 | 141.2±102.9 | 152.5±122.2 |
介入前のベースラインと比較して確かにHbA1cは低下していますが、12か月後よりもじわじわと年数が経つにつれて元に戻りつつあるような気がします。下がり方も微妙です。
LDLコレステロールは低下していますが、肝心のHDLコレステロールはほとんど変化なし。さらに中性脂肪は有意差はないにしても増加傾向です。中性脂肪/HDL比は2.5を超えてしまっています。つまり、心血管疾患のリスクに関連する中性脂肪やHDLに関しては変化していないか悪化しており、関連があまりないLDLコレステロールが低下するという、何とも中途半端で残念な結果です。
もちろん緩やかな糖質制限は緩やかなだけに長く続けることは可能かもしれませんが、そこで得られる利益もかなり緩いものです。カロリー制限や低脂肪の食事よりは良い結果かもしれませんが、ほとんどリスクの低下には結びつかないのではないでしょうか?
それとも山田先生は今年の3月に出された米国内科学会のACP改訂ガイダンスを良しと思っているのでしょうか?ACP改訂ガイダンスは次のようです。
1.薬物療法の便益と害、患者の好みや希望、患者の全般的な健康状態と期待余命、治療負荷および医療費についての話し合いを踏まえ、2型糖尿病患者の血糖管理目標を個別化する
2.ほとんどの非妊娠成人2型糖尿病患者におけるHbA1c目標値は7-8%とする
3.HbA1c6.5%未満を達成している患者に対しては、薬物療法の強度を下げることを考慮する
4.高齢(80歳以上)、介護施設居住、慢性疾患(認知症、癌、末期の腎臓病、重症COPD、うっ血性心不全など)などにより、期待余命が10年以内の患者は、高血糖に関連した合併症を最小限にする治療をしながらも、HbA1c目標値は設定しない
なんと、「HbA1c目標値は7-8%」ですよ!もうあきらめたとしか考えられません。日本でも最近では日本糖尿病学会と日本老年医学会などが、高齢者向けの目標値として7.0~8.5%未満と緩めの目標値を推奨するようになっています。本当にこれで良いのでしょうか?
スーパー糖質制限では非常に多くの人が、もっと劇的にHbA1cが低下し、薬もかなり減らせたり、飲まなくても良いレベルまで到達します。さらに中性脂肪値も劇的に低下し、HDLコレステロール値も上昇します。
中途半端な糖質制限では結果も中途半端です。
「Efficacy of a Moderately Low Carbohydrate Diet in a 36-Month Observational Study of Japanese Patients with Type 2 Diabetes」
「日本人の2型糖尿病患者36ヵ月観察における適度な低炭水化物食の有効性」(原文はここ)
事実上、「緩やかな糖質制限は糖尿病合併症予防に効果は期待できない」と自ら証明されたような皮肉な結果に見えます。少なくともスーパー以上の糖質制限をしている側から見れば。
特に中性脂肪が全く減らないどころか、有意差なしとはいえむしろ増加傾向にあることは気になります。
極めて個人的見解ですが、やはり中途半端な覚悟では糖質の呪縛から解放されることは難しいのではないかという予想は、私だけに当てはまることではないのかもしれません。
恐らく緩やかな基準が効果がないというよりは、緩やかであることに安心して糖質制限を正しく継続することがかえって難しい(糖質の絶対量や心理的縛りとして)ことも大きな要因ではないかと想像します。
あるいはこの程度の”制限”では糖代謝から脂質代謝へ切り替えが出来ていないか十分に機能しないことも可能性が高いのでは。
糖代謝機能への依存を大きく残したままではずっと”我慢”を続けることになりますし。ならば時間経過とともに緩くなる甘くなる、結局元に戻ることはたぶん当然だと思います。
緩やかとはいえ糖質制限に踏み切った人は、自らの健康や人生に多少なりとも前向きな意志を持った人だと思うんですけどね。
”緩やかな覚悟”では相手にならないのかもしれません。私たちはそれほどに強大な糖質の呪いをかけられてしまっているのかなと。
しかし、糖質制限といってもそのレベル対効果の検証として参考になる良いデータではないかと思います。むしろよく公開なさってくれましたね。
ご紹介ありがとうございます。
ねけさん、コメントありがとうございます。
実は緩い糖質制限が2型糖尿病にこれほど効果が薄いとは思っていませんでした。
だから素晴らしい発表です。
HbA1c7.5だと平均の血糖値が165程度ですから、食後血糖値は軽く200を超えていると思います。
この緩い糖質制限で、食後血糖値がどのようになっているか発表してほしいものです。
恐らく、「健康な人」が続けるにはこの方法でも問題が無いと思います。
ただ食後の血糖値は普通の方は知りませんので、この緩やかな糖質制限でも
食後血糖値の変動が少ないことを確認する必要はあるでしょう。
しかし、糖尿病の方はこれでは難しいということがわかりました。
たぶん、糖尿病の合併症や動脈硬化は全く減らないと思います。
そのことも今後発表されることを期待します。
清水先生おはようございます
石油業界から糖質制限を考え
てみました
私は石油会社に勤めてます
石油精製プラントのミニチュア
の運転管理をしてます、よく
原油が配管に詰まり閉塞します
対処は有機溶剤を流し洗浄して
閉塞解除してます
ケトン体→アセトン(有機溶剤)
水にも溶けやすく油脂を抽出す
るアセトンが血液水分に溶け
血管、臓器毛細血管、眼球、
脳毛細血管等、汗腺皮脂等
老廃脂質、糖化物質を洗浄し
ているのでは無いでしょうか?
脳細胞に届くケトン体は
アセト酢酸とβ-ヒドロキシ
酪酸で脳に糖化物質が有った
場合その二酸化炭素に反応
(脱炭酸)してアセトン酪酸
はアセトンに変化します脳の
掃除をしているのではないで
しょうか?
スーパー糖質制限、ケトン食
でケトン体を高濃度にすれば
アセトンも高濃度になり洗浄力
アップし更に糖化物質の二酸
化炭素にアセト酢酸が反応し
てアセトンになり洗浄力UP
(洗剤のコマーシャルみたい)
身体で仕事が終わったアセトン
は呼吸、汗腺、尿から排出され
ます
呼気アセトン測定の有用性
に関する検討
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ningendock/32/3/32_530/_pdf/-char/ja