HDLの糖化は機能障害を起こす

HDL はの動脈硬化を抑制すると考えられていて、その作用のひとつに抗酸化作用があります。HDL に存在するパラオキソナーゼ1(PON1)というものがこの抗酸化作用を担っています。しかし、PON1の活性が低下してしまうとHDLは抗酸化作用を発揮できなくなり、機能障害を起こすと考えられます。

では、どのような場合にPON1の活性は低下するのでしょうか?その大きな原因の一つが糖化です。この研究では2型糖尿病と冠動脈疾患の人と対象群を比較しました。(表、図は原文より、一部改変)

パラメーター対照2型糖尿病冠動脈疾患
人数(男性)19(10)36(21)37(22)
年齢(年)57.757.757.7
BMI(kg/m 221.228.8 25.3
HbA 1c(%)7.6
総コレステロール(mg/dL)185197170
中性脂肪(mg/dL)93198 153 
HDLコレステロール(mg/dL)605041
ApoB(mg / dl)78.088.082.3
ApoA1(mg / dl)110.5128.785.1
PON1活性(nmol /分/ ml)269.4113.6150.9
PON1量(μg/ ml)113.190.183.5

上の表でわかるように、総コレステロール値はどの群でも差はありませんが、HDLコレステロール値は冠動脈疾患のみ低値になっています。そして大きな違いは中性脂肪です。対照と比較すると糖尿病群でも冠動脈疾患群でもかなり高い値になっています。

 

上のグラフは縦軸が糖化したPON1の割合です。横軸は左から対照群、冠動脈疾患群、2型糖尿病群です。冠動脈疾患では対照群の約1.5倍、糖尿病群では約2倍糖化していることがわかります。

 

上のグラフの縦軸はPON1の活性を表しています。横軸は左から通常のHDL、糖化したHDL、糖酸化したHDLです。糖化するとPON1の活性は約60%減、糖酸化すると活性は80%以上減となります。

HDLは対照群と糖尿病群では若干糖尿病群で少ないですが、差はないにも関わらず、PON1の活性に関しては半分以下になっています。

糖化を受けたHDLは機能的には非常に低下すると考えられます。いくらHDLの数が多くても、食後高血糖などで糖化、酸化を促進してしまえば、HDLがうまく働かないのです。糖質制限をして血糖値が落ち着いていれば、それほど糖化、酸化は起こらないのではと考えられます。HDLコレステロール値だけを見ても、その機能の良し悪しまではわかりません。普段の食生活が重要です。

 

「Glycation of paraoxonase-1 inhibits its activity and impairs the ability of high-density lipoprotein to metabolize membrane lipid hydroperoxides」

「PON-1の糖化は、その活性を阻害し、膜脂質ヒドロペルオキシドを代謝するHDLの能力を損なう」(原文はここ

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