尿酸値は高くても低くても死亡のリスクが高い

尿酸は、食べものとして体内に入るプリン体からできる尿酸よりも、細胞の代謝によってできる尿酸の方が圧倒的に多いのですが、ビールやアルコール、レバーなどが目の敵にされることが多いですね。私は高尿酸値だけでは痛風にはならないのでは?と考えています。運動をしたりして代謝の回転が良ければ尿酸値は上がります。しかしこの場合は痛風とは関係しないでしょう。しかし、肥満やインスリン抵抗性が認められる場合の尿酸値の上昇は恐らく痛風と関連します。ストレスもかなり尿酸を高くするようです。

5年間に痛風を発症する割合は、尿酸値が8~9の場合4.1%、9~19の場合は19.8%、10以上では30%という統計があるそうです。(この統計は未確認です)つまり、尿酸値が非常に高い10以上であっても、5年間で合計で30%程度しか痛風にならないということは、尿酸値が本当の原因なのか?という疑問も湧きますし、痛風の発作時には尿酸値が基準値を示すことも珍しくないということを考えると増々怪しくなります。痛風の患者さんのほとんどは男性であることも尿酸値だけが問題ではない可能性を示しています。

しかし、尿酸は痛風だけの問題ではなく心血管疾患などのリスクとも関連しているという報告がたくさんあります。

以前の記事「尿酸値と心血管疾患のリスク 本当だろうか?」では、フィンランド人の尿酸値と心血管疾患のリスクについて書きましたが、あまりにも低い値(5.05)以上で心血管疾患のリスクが高くなると示されていて、しっくり来ていませんでした。

最近アジアから出された2つの研究はどちらも尿酸値は高くても低くても死亡するリスクを高くしているという結果が示されています。

韓国の研究は375,163人を対象として、心血管疾患による死亡やがんによる死亡が分析されました。そうすると全原因死亡のリスクは最も低い尿酸値の群(男性で3.5mg/dl未満、女性で2.5mg/dl 未満)では、男性で1.58倍、女性で1.8倍でした。一方、最も尿酸値が高い群(男性で9.5mg/dl以上、女性で8.5mg/dl以上) では、男性で2.39倍、女性で3.77倍でした。

もちろん、最も高い群の方がリスクは高くなりますが、低すぎてもリスクになるということです。

もう一つの台湾の研究では、65歳以上の127,771人を対象としました。この研究では栄養状態を合わせて評価しています。(図は原文より)

上の図は左側の列が全原因死亡、右側の列が心血管疾患での死亡を示しています。そして上の二つは全ての人でのグラフで、真ん中二つは低栄養状態の人、下の二つは低栄養がない人のグラフです。横軸は尿酸値です。そうすると、先ほどの研究と同様に、尿酸値が高値の場合はリスクが高くなるのですが、低い場合にもリスクが高くなることがわかります。しかし、栄養状態を評価した時には低栄養のない群では尿酸値が低くてもリスクは高くなっていません。低栄養状態の群だけが低尿酸値のときのリスクが高くなっています。

この研究では、栄養状態が良い場合、尿酸値は8ぐらい以下であれば死亡率が低いということと、栄養状態が低下していれば安全域が少し狭くなり、さらに尿酸値が4以下と低すぎてもリスクが高くなることを示しています。

尿酸は抗酸化物質と考えられますが、抗酸化物質は場合により酸化促進剤として働きます。尿酸値が非常に高い場合にはもしかしたら酸化促進をしてしまっている可能性があります。逆に尿酸値が非常に低い場合には抗酸化物質としての尿酸が少なすぎるのでは?と考えられます。また、栄養状態が悪い場合の低尿酸値と、栄養に問題が無い低尿酸値は意味が異なる可能性もあります。栄養が悪いと細胞の代謝が悪くなり、尿酸値が下がると考えられます。また、逆に尿酸値が低すぎる場合には栄養状態を確認する必要もあるのかもしれません。

栄養状態が関連しているというのは当たり前のことですが、面白い知見です。高齢者だけではなく若い人でも栄養状態が悪い人が非常に多いのが気になります。タンパク質の摂取量が非常に少ない人がいるのはびっくりします。栄養状態については今度機会があれば記事にしたいと思います。

 

「U‐Shaped Association Between Serum Uric Acid Level and Risk of Mortality」

「血清尿酸値と死亡リスクの間のU字型の関連:コホート研究」(原文はここ

 

「U-Shaped Association Between Serum Uric Acid Levels With Cardiovascular and All-Cause Mortality in the Elderly: The Role of Malnourishment」

「高齢者における心血管疾患と全原因死亡率との血清尿酸値の間のU字型の関連:栄養失調の役割」(原文はここ

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